137話「銃撃剣撃」
ダン───キィン!
引き金と同時に放たれた魔弾は紙一重のパリィによって容易に弾かれ、片手剣片手盾を持った人類がまた一歩確かに踏み込んでくる。
「はぁ!!」
攻撃タイミングは魔人族である私には見切れるほど遅い、だがしかしその潜在性だけは油断できない要素が確かにあった。剣を上手く避けつつもう片方の手に握られている魔弾をすぐさま魔銃へとセットする。相手の動きからして向こうの世界にも銃と呼ばれる代物があることはこの時点ではわかっていた、あまりにも対銃撃慣れしていたからだ。
(それとパリィのタイミング、これがなんとも。)
通常放った次の瞬間には命中しているのが銃弾のはず。しかし目の前の人類は神技的なタイミングの良さを持ち私の銃弾を切り伏せながら接近する。物理攻撃も同じだこちらの出した手に最適解の行動をして受け返す。もはや真正面からの攻撃は完全に見切られている。魔人族の反応速度、力、それらを完全にわかっている動きだ。
(後ろのバックアップを狙っても返してくる。)
照準を後ろのバックアップをしている少女に向けたとしても無意味である、前にいる人類がその弾も見切りながら弾き返してくる。この攻防には実のところ決定打がまるで生まれていなかった。ただただ時間だけが浪費しながら終わりが見えない戦いだった。
(まぁ、私の目的は別にありますから……)
ここで倒しておけば良いですが、相手も私も一歩も引く様子がないということは、ここで仕掛けるのが得策。
私は思考を切り替えて遠隔で操作している自分の肉体から写して魔人城の影に隠れている自分へと切り替える。魔人王の動き、もしくは考え方は読めなくはない。私たちを前線に出しその間に極光を放ち、私たち諸共人類を皆殺しにする計画。考えでは一歩上を言っている私はそのあなたの考えというのをすぐに理解した。だから決めたのだ、切り捨てるのは今だということを。
階段をゆっくりと駆け上がり王の間へと向かう。前回の扉から差し込むは圧倒的なエネルギーの塊を天へと掲げる魔人王の姿だ。私はその御前に堂々と身を出しそして片手に込められている最強の魔弾をゆっくり装填した。
「ラングレースリインド、始末したのか?」
「いいえ、ですが貴方を始末しに来ました。」
もはや愚者と会話する気なんてものはなかった。いくら魔人王といえど未開放のエネルギーを片手でも手放すお方ではない。手放してしまえば空中へ滞在しているエネルギーの塊は一気にここに落ちてくる。両手を塞がれればいくら王であっても一撃で葬れる。
そう私という魔人族を信じたことがこの王の最後ともいえよう。
「フ。」
「ッ」
魔人王が口元を歪ませた次の瞬間だった。私が引き金を鳴らす一瞬前、魔人王の瞳から糸ほどの細さのエネルギー体が飛び出して私の心の臓を貫いた。
「ガ、」
その場で膝をつく私を魔人王は笑いながら見ている。確実に不意打ちをしようと画策していた私はあろうことかそれすらも知られて逆に返り討ちにされてしまったのだ。胸には後悔と怒りが渦巻いている。
「貴様は利口な奴だ。この機を狙い、この俺を殺しにくると踏んでいたぞ。あえて隙を作ってやった会があったな、これでお前をどうとでもできる。」
魔人王はなんと片手を動かしてそこから邪悪なエネルギーと共に私の頭に鋭い刃を突き刺した。
「があああ!!」
殺すつもりはない、だがそれに準ずる痛みが確実に私の思考を奪っていく。目の前が真っ白になる、その最後に見た私の感情というものは怒り、怒り以外にはなかった自分より賢いものがこの世に存在していたことに対する怒りだった。
「っ、これは!!」
自分の動きが急激鈍くなってついには固まってしまった。考えられない事態に、もしや本体がなんらかの干渉を受けたかと考えている暇に。
「……!そこだ!!!」
「ギャガアアアア………ッ!!」
人類が鋭い刃を振るって私の心臓をバツ字に切りつけた。複製体である自分は一撃もダメージをもらわなければ消滅しないものの、心臓に2度もダメージをもらってしまえば悪あがきの時間すらもらえずに直ちに消え失せてしまう。
本体も何かあり、自分もここで負けてしまうのに私は怒りと悔しさを感じて何事もなかったかのように消えていった。




