132話「荒野をかける電撃」
バーンっと悪雲の中に打ち出された煌びやかな花火は私たちの出陣の合図であった。有無を言わさず私たちは一斉に走り出し花火の方向へと向かい始めた。同時に遅れてやってきた波動が、クリスが作戦成功を暗喩するかのように私たちの周りに蔓延っていたクリスタルは崩れ破れるように自然消滅していった。
(クリス、やったんだ!)
花火はどちらにしてもあげる予定だったから第一段階が成功したかどうかはこれでわかる。クリスは約束通り魔術秘宝によって一撃でベルギクルゼを葬り去った。そして葬り去ることで私たちの第二段階がより進めやすくなった。
大地段階でベルギクルゼを吹き飛ばしたのち、空白となった敵陣までの道を最短距離で私たちが進撃、第三段階ではそのまま魔人王の根城まで戦い挑むというものだった。文字通りの電撃作戦だ。正直勝てる見込みは少ない方だ、ここの戦力として整っている私たちでも物量が出てきた暁には負けてしまう、クリスがベルギクルゼを葬ったことによって多少大軍戦が起こる可能性は避けることはできたものの、カウンターアタックをされればこちらの本陣までの道は数時間と満たない。全ての戦力を一点突破に使った場合、防衛用の戦力が脆弱になるのは当然の秘訣だ。だからこそ、その前に魔人王を倒す必要がある。
「みなさーーーん!」
(クリス!)
クラスタ先輩の魔術秘宝によって身体能力からバックアップを受けているおかげで私たちがC3からD3まで到達するのはそこまで時間はかからなかった、大魔術を放ったクリスとの合流は意外に早かったものの彼女の両手を見れば手放しで喜べないのは明らかであった。
全員覚悟してきているからこそ、クリスのひどくなった両腕には誰も反応を示さなかった、いや示せなかったと言える。だから先輩達、仲間が次々の向こう側の大地へと飛び込んでいく中、私は人知れず彼女に告げ口した。
「できるだけ万全になったらまた会おう。」
「はい、それまでには回復させておきます!」
クリスの意気のいい返事を流して私も仲間達の後を追うように大地へと踏み出した。しかしそこには何もなくただただまっさらな砂丘だけが広がっていた、以前ここから必死に逃げていた私たちであるが悍ましいクリスタルの群像もなければ、忌々しいベルギクルゼの大花もなかった。文字通り砂の大地であり、クリスが起こした大魔術の軌跡である。
(……あれがあの腕に。)
クリスがどれだけの力を損耗していたかがよくわかる。こんな天変地異を腕2本で収められた彼女は間違いなく天才なのだろう。神がかった魔術の精密性から異常なまでのイメージ化、そうでなければこんな神の所業のようなことはできない。きっと驚いているのは私以外にも先輩達にもいる、けれども何も言わない、何も話さない、何も発さないのはこの先に待つなにかを人知れず誰もが感じているのだと私は理解した。
「ここからが、本当に戦い!」
私も胸の中に残る雑念な一切を振り切って、大地を駆け始める。果てしなく広い砂漠の向こう側にあるのはまだ私たちが相対したことのない恐怖のなのだろう。




