130話「突貫総力作戦」
C3大型拠点。なんとか私たちが守り抜いた最前線、現状最高峰の拠点では反撃作戦の作戦会議が開かれていた。荒れ放題だった作戦室もクリスタルの除去から、書類の整理、地図などをなんとか元に戻して使えるレベルにまで引き上げることはできたが、それはある意味仮初とも言える。正直作戦会議をするだけならばアナログ的な方法でも良かった、だが高度な探知装置が直列で繋ぐ必要があるとわかった時には、ここの復旧はかなりのスピードで進められ現在に至ることとなった。
「現状、私たちの拠点の周囲には敵影はいません。大軍もいなければ魔暴の群れすら一匹たりともいません、拠点周囲にはクリスが製作したアンカー型の浄化装置が点在しているため、少数軍での侵攻は抑えられるでしょう。」
「─ですが、同時にこの静けさに異様な雰囲気が漂っているのも事実。でしょう?」
クリスが顔を覗かせるように合わせる。私は頷きながらこの場に集まった仲間たちに次の一手について話し始める。
「魔人王軍が先の戦闘で使った戦法は囮だった。あれほど強い敵将を囮に使うのは、余裕があるからなのか、それとも何か別の目的があるからなのか……」
「プラノード、別の目的とは?」
フォース先輩が眉をしかめながら聞いてくる。正直言っておいての私ですら自分が答えにしようとする理論には躊躇いが生まれた。
「そもそも魔人王の目的が完全勝利であるならば、こんなことをする必要がないからです。」
「完全勝利ねぇ、たしかに……完全勝利っていうかあれはなんというか。人道に反して必ず勝ちをとりにいくやり方だよな。」
ベドート先輩が手をヒラヒラさせながら同意してくれる。先輩の中にもこの戦争自体の違和感に気づいている人がいてくれたのは少し意外だった。
「はい。今までの戦いを振り返って欲しいのですが、魔人王軍側がこちらに明確な打撃を与えると同時に、その大体が自軍の損失も含まれているということです。魔人王軍との戦闘において私たちは勝利を収めてきましたが、戦力の分散配置には不可解な点がありました。その気になれば魔人王軍はこちらをいつでも壊滅できる戦力を持っていたはずです。」
「そうか、一点突破をしてこちらをつぶしにくるやり方をしていたのならたしかにやられている。」
フォース先輩が頷くと周りの仲間たちも頷いてくれる。全員考えていることはここまで同じのようだ。
「電撃作戦を考えてこちらをつぶしていたのなら、間違いなく相手の完全勝利だ。尚更戦力を分散させてこちらにわざわざ合わせるような形でやっているのは一撃必殺でこちらを決めていくよりも損傷が大きいのか。」
「はい。ワルツ先輩のおっしゃる通り、なので魔人王の完全勝利は私たちが認識していたものと違うとおもったんです、自分がなんの損傷も負っていなければ、完全勝利という。」
『──────!』
「ある意味、完全勝利。自らが順風な様子で勝つことですか…」
クリスが静まり返りそうになった室内に聞こえる声でつぶやく。心の中で同意しながら私はこの理論というか魔人王の思惑に何処か懐疑的になっている。そして周りの雰囲気を見れば一目瞭然だ、そもそも可能性が低すぎる。
今回の作戦会議ではこのことを今後の名目として作戦を立てようと考えていたのだが流石の私の驕りだったと思いたくなってきた。
「ですが、魔人王の考えは未知の部分があります。これも考えのうちとして………」
「あら、私はラナさんの考えとても現実的だと思いますわ。」
「クリス──。」
「だってその考えでここにきたのでしょう?」
「………」
クリスの鋭い質問にはドキリとする。何もかも見透かしたような顔は自信と私の信頼でいっぱいである。だからこそ私が逃げる場、というよりも私がしっかり言わなくてはならない事態が完成してしまった。
「……今、私たちは追い詰められた状況にある。私は魔人王が本当は何を考えているかはわからない、でも今までの経緯からさっき言った線を考えたいとおもっています。そして仮にそうだったとした時、私達は攻める以外の選択肢は残されていないと思います。」
「ナリタテンマ無き、私たちの力は矮小になりました。相手からすれば最大の要因を潰せたと言っても良いでしょう。ですがラナさんの言う通り、相手が今仮に手薄だとしたらここで一点突破、勝ちを狙いに行く以外の選択肢は実質的な敗北を意味します。時間が経つにつれ、考える時間が長いにつれ、敵はより強大になっていくはずです。そのジレンマを今こそ断たなければなりません。」
クリスが目で合図を言い渡すと言葉の主導権は私に移る。最後の号令だ。
「これより私たちは少数精鋭で魔人王が根城とする。エリアF3への総攻撃を開始します!」




