122話「相互戦乱」
体の損傷とは裏腹に自分の魔術神経、および魔法の使用には何も支障がなかった。おかげで対クリスタル術式を使用しながら岩岩を飛び越えてすぐに先ほどの前線へと戻ることができた。戦場を一時的に焼き焦がした迫撃砲の後には十分な神力が大地へと宿っており、先輩たちはそのバックアップを受けながら続けて戦闘を行っていた。遠目で見た時も、フォース先輩がかろうじて受け止めてワルツ先輩が文字通り腕を飛ばしながら戦っている様は残酷そのものだった。
「うらららららりやぁああああああ!!!」
何かが突っ切る風の音が先に来て、その後に一匹の竜が巨獣へ尻尾叩きを行った。バチーンっと無知のような遠心を持ち放たれた一撃は大地を吹き飛ばし同時に巨獣の体を大きくよろけさせた。
「お前の相手は我じゃあああ!」
「面白い!!プラザイン、叩き潰しなさいっ!」
「─────!!」
巨獣が咆哮するとその背に乗っていた魔人は軽々しい身のこなしいでおり、間も無くして怪獣大決戦が始まった。四足から二足へと立ち上がった巨獣は素早く動き、倍返しのようにエルザードおばあちゃんの肩へと打撃を与えた。
「なんとなぁ!!」
それに負けじと応戦するエルザードおばあちゃん、私たちへの二次被害を考えてか、巨獣の両肩を掴んでそのまま押し切るように別の方へと突き進んでいった。私はその分断意図を理解して魔人が降り立ち地点へと向かう。
そこにはすでにフォース先輩、ワルツ先輩が睨みをかかせながら一触即発の雰囲気を漂わせていた。
「………」
私を含め誰も先に戦いを仕掛けたりはしなかった。戦場においてこの雰囲気は異常の行動である、隙があれば叩き、そうでなくとも叩き潰す。それがワルツ先輩の戦闘スタイルである、だが彼女でさえその兆しを見せないということは相手がそれだけの強者であることを何より示していた。
「初めまして、人間。人間。人間。私の名前はレギスレン、魔王様の忠実なる道化師、嵐の道化師です。」
『………』
「どうしました?挨拶は人間にとっても普通の文化だと聞いて及んでいたのですが?」
「悪いな、敵と挨拶ができるほどワシらも甘くはない。」
「それは、それはそうでしたか。ですが、話し始めてくださりありがとうございます……あなたの顔はしっかりと覚えさせていただきますね。」
「ふん。」
フォース先輩は一切の油断もなしに厳しい表情を続けているこのレギスレンと名乗った魔人族は今まで私たちが遭遇してきた魔人族とは毛色が違った、なんというかすごくおかしな感じなのだ。こちらの対応をあざわるように、そして自分自身が一つの物体のようなことを前提に置いたような話し方、とても生物としての意思が感じられない。
「それで、私をお相手するのはあなた達だけでしょうか───!」
レギスレンがそう口にすると背後から緑色の曲線が走り始める。同時に壁のように聳え立っていた岩壁の一つが一瞬にして崩壊してその中から無数の武器をその背に携えた狂戦士が姿を現し、まるで花弁を振り回すかのような鋭い刃でレギスレンの目の前を振り回していった。
「私もいる、忘れないでね。」
「は、は、は。行幸、これほどの戦士、これほどの威圧感を、それでこそ叩き潰しがいがある。我らの誉となって死ぬのが相応しい!!」
パリス・アイネリア先とアルシュド・オルバルス先輩である。戦場を共にするのはかなり久しぶりではあるもののその顔ぶれはまるで変わっておらずここにおいては頼もしい味方であった。
「ちょっと、先行きすぎだっての。」
「敵を甘くみすぎないでね、アイネリア!」
続けてその場にかり出たのはセルスス・ヤルド先輩とファルニアだった。アイネリア先輩に注意を促しつつ身構えるファルニアと、盾を構えたまま他の先輩方と同じように軽い口調とは裏腹に警戒を最大まで高めたヤルド先輩だった。
「これはこれは、面白い。合わせて何人か?7人か?それで、それでそれでそれで、私と相対するというのでしょうか?」
『────。』
沈黙の了承だった。それを受け入れた目の前のレギスレンは口元に笑みを浮かべ今にも笑い出しそうな奇怪な笑みを私たちへと見せた。
「なら、私もそのようにっ!!」
レギンスンの肩が突如として四つに割れた、それと同時に腕が横からそれぞれ3本ずつ生え、両肩合わせて8つの腕が彼女から現れた。そしてその腕にはそれぞれ相応しい武器のように岩と雷の糸で編み込まれ構築された!不可解な武器たちが現れたのだ。彼女が手にし始めた武器は私たちに合わせて全部で7つだった、刀、剣、大盾、ガントレット、弓矢、大剣、杖、空いている一つのではゆっくりと弓矢へと手を伸ばし、その標的をすでにアイネリア先輩へと向けている。
「嵐の道化師、あなた達から学ばせていただきます!!」
その言葉が引き金となって戦闘が開始された。真っ先に飛び出たのはワルツ先輩とオルバルス先輩である、お二人は拳と無数の剣を振り回し、前と後ろを陣取ってタイミングよく同時攻撃を果たした。しかしレギンスンはそれを見越してか、跳躍し空から無数の矢を降り注がせる。そしてその隙を逃さずに緑色の一閃をいくつも放ちながら攻撃するアイネリア先輩、けれどもその10を超える矢も剣武器の回転によって全て撃ち落とされ、着地を狙おうと私とセルスス先輩が前に出ようとも関係なく、下からの攻撃に対応する。腕はまるでカチカチと歯車のように縦横無尽と周り私たちの攻撃に対応した防御と攻勢に出るのだ。
一秒単位で違う攻撃が飛んでくるとしても、レギンスンは決して怯みはしなかった。
(隙がなさすぎる。)
「───そこっ!」
「っ───ハァァアアア!!」
ワルツ先輩が直撃を受けて腕が吹き飛ばされるも構わず即座に再生して鋭い一撃を繰り出す。少し後ろに下りはしたものの雷を纏った武器の圧倒的強度の前に、ワルツ先輩の拳がまるで蒸気を纏うかのような音がする。
「プラノード抜刀術───ヘンゲ!」
「ストレイングショット!!」
背後からくる光を纏った矢達を受け取りそれらを刀へと丸ごと引き付けて一突きを行う。刀身が緑色に光り輝きながらレギンスンの心臓へ向けて、10の光が飛んでいく。
「ハァ!!」
「っ」
しかしそれらも武器の回転力によって全て防ぎ切られ、その隙を狙ったオルバルス先輩の猛攻撃すら簡単にいなす、次の攻撃へのタイミングほとんどなく、それでいて違う武器種での攻撃であるのにも関わらず決定打がでない戦闘は私たちの精神力をかえって削っていく。
「まだまだ遊ばせてくれますよね!?」
そう言いレギンスンは手から武器達を話し雷の糸を使ってそれらを全て操り始める。飛び交う武器達はそれぞれが自律的に攻撃を行い一見手薄なレギンスンに攻撃を仕掛けられるチャンスのようにも思えるが。
「っ!!」
武器が一つに集中しないということはそれだけ周りに気を配らなければいけず、オールレンジに対応しなければならなかった。先輩達も回避に専念している状態だ。
「このままでは!!」
「まだ終わりにしてはいけません、まだまだフィナーレには!」




