114話「暗躍」
前線に咲く甘美な花が遠くからでも見える距離、俺は魔人王から招集を受けてわざわざこんな大きな城のところまで戻ってきた、はっきり言って不愉快だが強気者に従うのもまた強者の定めだとイラついている自分を一方で宥めて王の間へと入場する。
「……なに?」
「待っていたぞ、クランクドライン。」
「どういうことだこれは?おい、ラングレースリインド。」
俺のイラついた声に冷徹な視線を向け続ける魔人王の側近の態度はなおも癪に触る。徐にため息をついたのちに俺に言い放った言葉は。
「クランクドライン、王の御前だというのに態度は変わらずですか。」
「態度?従っているという体裁を保っている時点で合格点だろう。礼儀、作法、そんな者にこだわるのはお前みたいな頭で考えるようなやつだけだ。」
「なにを!」
「ラングレースリインド。我は今回のクランクドラインには礼を言わなければならない、良くぞ戦場を良き余興に包ませた、あの花は気に入っているぞ。」
「それは結構なことだ。」
花とは無縁の悪鬼のような見た目をしていてもその中身は王たる者に違いはなく、華々しいのが好きであることはよくわかる。退屈を極めた人間が求めるものはいつだって二転三転した世界だ。
「っ」
「それで、今度は俺の質問に答えてもらおう。なぜこんなにも数が少ない、魔人王の部下は俺とそこにいる痩せっぽちではないだろう。」
「貴方が無意識のうちにあの花の生贄にした魔人族が数人いましてね、全員緑色の装飾を身に纏って先刻生まれてきましたよ。」
「ほぉ。」
自分が咲かせた花がそんな特別な力があるとしれば誰だって親心で喜ぶものである。といっても長く生きすぎているからか親の愛情や親の顔などはもはや覚えていないのだがな。
「人間達は此度の戦いで大勢を死なせたようだ。実にあっけなかったな。」
「王よ、悲しんでおいででいらしますね。」
「ふん、どうせ奴らのことだ。また面白いものを引っ提げてくるに違いない。」
戦いが終わると見込んでいるラングレースリインドと魔人王をよそに俺はそう言い切った。理由はいくつもあるがここまで執念深く戦ってきた連中がたかがこれ如きの逆境で心が折れるのならば、それは戦士の恥だと思っているからだ。
「クランクドライン、お前はまだ奴らが戦うと?」
「戦うに決まっているだろう。さもなくば俺たちが未だかつて手加減している相手に追い詰められたものか?」
「………そうか、では奴らの行動に一手間でも加えるとするか。ラングレースリインド。」
「は。」
「アレを出せ。」
「アレをですね。」
「あれ?」
魔人王とラングレースリインドの間でアイコンタクトが交わされると俺は不機嫌になる。こいつらは俺を使っておきながらまた何かを隠し持って前線に送るつもりだというのだ。それがいかに面白いとしても、変な余興を入れるのだとしたらそれはそれで面白くない、知っていなければつまらないというのもあるのだ。
「おい、なんだそれは?」
「クランクドライン、案ずるな。お前も見ているが良い。ラングレースリインドの次なる一手を。」
「ち。」




