108話「孵化」
魔人王からの直々の勅令であった。
魔暴は一匹一匹では役に立たないほど弱い、個体差が存在しそれを魔人族が操るという方式は実に旧世代過ぎた、何より我々魔人族は戦争のルールを何もわかっていなかったのだ。
そして人類と戦い続けて数ヶ月、戦争というルールを解明した。
それは
「勝つためには、なんでもするということッ!」
両手を前に掲げ特殊な形に指を曲げ入れ交差させる。そして体全身からはなっていた能力の糸をただただ目下の生命へと力を注ぎ込む。
我が名はクランクドライン、能力は統制統昇。
自身とつながるあるとあらゆる命の源泉を通じてそれら全てに無類の強さを与える力、しかし一体一体あたりに力を削いでいくごとにその割合は少なくなる。100体に1%ずつ分け与えればその効力には限界がある。
「だが、愉快なことにこれはそうではないぞ!人類共っ!」
本来大勢に分け与えるという常識を転換させ、ただただ一点に集中させる。魔人王の力は魔暴を生み出すこと、そして俺の能力は自身の膨大な力を分け与えること、ならばこそそれをただ一つのオンリーワン、ナンバーワン、ザ・ワンに与えるとどうなるか、まだ見ぬ存在、まだ見ぬ生命、まだ見ぬ強者。
「それが今誕生する、祝うがいい人類。お前たちの宿敵を俺たちが作ってやるのだッ」
この戦場に蔓延る多くの魔暴、使えない魔人族をこの生物の贄とした。蠢き、脈動し、天へと手を伸ばすその存在こそが、今新たに生まれる生命である。
百を超え、千を超え、万を超え、そして全てを凌駕せし存在に名をつけよう。
「顕れよ、貴様の名は──ベルギクルゼ!!」
俺がなを口にすると同時に、拝命を受けた我が力の集約体は目を覚ました。肉皮で覆われた膜を破り愛らしさすら覚える球体の肉体は美しい肉食音を立てながら花が開くように生誕した。
「─────」
圧巻だった。この勅令を支持したのが誰か、それはなんとなくわかるがまさかこれほどの存在が生まれるとは、人類との戦いが続いて数ヶ月経った中で初めて人類が我ら魔人族を倒そうと躍起になっているその姿よりも何倍も面白さと美しさと愉しさを感じた。
四つの皮羽根、内側には無数の針棘が牙を剥き口と目が乱雑にも配置され、中身には肉はなく、骨だけで構成された花がビラと、それを包み映し出すような神経網のような線状の生物が嘆きを抱えながら生まれた。
「そうだ、嘆くが良い。貴様は俺たちによって作られた。貴様は俺たちによって望まぬが生まれた、その宿命、その運命、その現実こそが貴様が忌むべき存在であり、破壊すべき全てであり、下等な頭で考えられる全ての景色である。愉快だ、愉快愉快!!」
動き出した命の鼓動は止まることを知らず、目上の俺のことすら見向きもしていない、ただそこにあるだけの命に対して全ての命に対して、大勢の命に対してひたすらに嘆きの怨みをぶつけるだけの兵器と化していたのだ。
「さぁ、逝け!お前が壊す存在を、その全てを!!」




