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第8章 2020年代――テンプレは「発明」から「合体」へ

前回は、


異世界転生。


チート。


冒険者ギルド。


追放。


ざまぁ。


現代知識。


といった「なろう系」のお約束が読者にも共有され、


ついには、


テンプレそのものを使って遊ぶ


段階まで来たのではないか、


という話をしました。


では、


その先はどうなったのでしょうか。


最近のWeb小説を読んでいると、


私は時々、


「一作品に何ジャンル入ってるんだ?」


と思うことがあります。


現代ダンジョン。


最強主人公。


VTuber。


グルメ。


推し活。


全部入り。


追放令嬢。


異世界転生。


クラフト。


キャンピングカー。


スローライフ。


グルメ。


ざまぁ。


これも全部入り。


でも、


不思議なことに、


普通に読める。


今回は、


そんな2020年代のWeb小説について、


「新しいテンプレを発明する時代」から「出来上がったテンプレを組み合わせる時代」へ


という視点で考えてみたいと思います。

2020年代の作品を見ていると、とにかく混ざる


まず、


最近読んでいて印象に残っている作品をいくつか並べてみます。


『推しにささげるダンジョングルメ ~最強探索者VTuberになる~』


 現代ダンジョン/最強探索者/VTuber/配信/グルメ/推し活


『追放令嬢、クラフトしながらキャンピングカーで異世界を旅します』


 異世界転生/追放令嬢/クラフト/キャンピングカー/旅/グルメ/スローライフ/ざまぁ


『中二病の魔法少女ゾンビ』


 現代ファンタジー/魔法少女/ゾンビ/身体変化/中二病/コメディ


『異世界に放置ゲー理論を持ち込んだら世界最強になれる説』


 異世界転生/ゲーム理論/自動育成/効率化/最強


……。


改めて書いてみると、


本当に多い。


でも、


これらの要素は、


どれも完全に未知のものではありません。


ダンジョン。


知っている。


VTuber。


知っている。


グルメ。


知っている。


追放。


知っている。


令嬢。


知っている。


クラフト。


知っている。


スローライフ。


知っている。


つまり、


知っているもの同士を、新しい組み合わせで見せる。


という作品がかなり増えているように感じます。


昔は「転生したらスライム」が新しかった


少し前へ戻ってみます。


『転生したらスライムだった件』


というタイトルを初めて見た時、


重要だったのは、


「スライムに転生する」


という部分でした。


人間ではない。


勇者でもない。


スライム。


そこに新鮮さがある。


『蜘蛛ですが、なにか?』なら、


蜘蛛。


『転生したら剣でした』なら、


剣。


つまり、


「何に転生するのか?」


という一つの新しいアイデアだけでも、


作品の大きな特徴になりました。


「どんなチート?」でも差別化できた


同じように、


チート能力そのものが、


作品の売りになる時代もありました。


スマートフォン。


ネットスーパー。


鑑定。


収納。


特殊な魔法。


成長倍率。


状態異常。


生産能力。


召喚。


一つ面白い能力を思いつけば、


そこから一本の作品を作れる。


つまり、


新しいテンプレや新しいチートを一つ作ること自体に価値があった。


のだと思います。


でも、もう大抵のものは一度見た


ところが、


異世界転生ものが大量に作られた結果、


読者側も、


かなりのものを見ています。


人間。


スライム。


蜘蛛。


ドラゴン。


剣。


魔物。


幼女。


悪役令嬢。


貴族。


農民。


勇者。


魔王。


ゲーム世界。


現代ダンジョン。


帰還者。


配信者。


VTuber。


……。


「こんなの初めて見た!」


だけで勝負するのが、


どんどん難しくなっていく。


では、


どうする?


新しい料理を作るのではなく、既存の食材を組み合わせる


少し料理に例えてみます。


昔は、


新しい食材そのものが出てくる。


「こんな味があるのか!」


と驚く。


でも、


食材がある程度出揃ったら、


次に重要になるのは、


どう組み合わせるか。


です。


肉。


チーズ。


パン。


全部昔からある。


でも、


組み合わせによって料理は変わる。


Web小説も、


それに近い状態になっているのではないでしょうか。


異世界転生。


追放。


スローライフ。


クラフト。


配信。


ダンジョン。


グルメ。


掲示板。


これらは、


一つ一つならもう珍しくない。


でも、


組み合わせ方によって、まだ新しく見せられる。


『推しにささげるダンジョングルメ』――全部混ぜても成立する


第6章でも取り上げましたが、


この流れを考えるうえで、


『推しにささげるダンジョングルメ ~最強探索者VTuberになる~』


は非常に分かりやすい作品だと思います。


主人公は、


最強クラスのダンジョン探索者。


ここだけなら、


現代ダンジョン最強もの。


でも、


主人公の目的は、


世界征服でも、


ダンジョン完全攻略でもない。


推しのVTuberに美味しいダンジョン料理を食べてもらいたい。


だから、


自分も配信者になる。


これだけで、


現代ダンジョン。


最強。


VTuber。


推し活。


グルメ。


配信。


が全部つながります。


現在の公式あらすじでも、最強探索者が「推しのVTuberにダンジョン産の美食を食べてもらう」ためにライバーとしてデビューする、という複合構造がそのまま作品の中心になっています。


こうして書くと、


ものすごい組み合わせです。


でも、


一つ一つのテンプレを読者が知っているから、


長い説明をしなくても入っていける。


「ダンジョン」だけではもうジャンルを説明できない


昔なら、


「ダンジョンもの」


で、


だいたい話が通じたかもしれません。


今は、


ダンジョン+配信。


ダンジョン+グルメ。


ダンジョン+掲示板。


ダンジョン+VTuber。


ダンジョン+学園。


ダンジョン+会社員。


ダンジョン+恋愛。


ダンジョン+推し活。


と、


どんどん枝分かれします。


つまり、


一つの大きなジャンルから、小さなジャンルへ細分化するだけではなく、その小ジャンル同士が再び横につながり始めた。


ようにも見えます。


『追放令嬢、クラフトしながらキャンピングカーで異世界を旅します』


これも、


タイトルだけでかなりすごい。


追放令嬢。


まず、


追放。


令嬢。


すでに二つあります。


さらに、


クラフト。


そして、


キャンピングカー。


そして、


異世界旅行。


実際の公式作品紹介でも、子爵令嬢に転生した主人公が、キャンピングカーで異世界を旅しながら、錬金魔法によるクラフト、グルメ、スローライフ、ざまぁなどを楽しむ構成になっています。


もう、


「異世界転生ものです」


だけでは説明できません。


でもタイトルを見れば、何が読めるのか分かる


これが、


2020年代のWeb小説で面白いところだと思います。


タイトルが長い。


よく言われます。


でも、


なぜ長くなるのか。


一つには、


組み合わせている要素が多すぎる。


という理由もあるのではないでしょうか。


追放令嬢。


クラフト。


キャンピングカー。


異世界旅行。


この単語だけで、


読者は、


「追放されるんだな」


「でもすぐ自由になるんだな」


「ものづくりするんだな」


「キャンピングカーで快適なんだな」


「旅するんだな」


と、


かなり想像できます。


つまりタイトルが、


作品に含まれるテンプレの一覧表


みたいになっている。


タイトルが「商品説明」になる


これは、


Web小説の読み方とも関係していそうです。


大量の作品が並んでいる。


読者は、


タイトルを見る。


あらすじを見る。


タグを見る。


そして、


読むかどうかを決める。


だったら、


タイトルで、


「この作品にはあなたの好きな要素が入っていますよ」


と伝えた方が早い。


追放。


ざまぁ。


最強。


スローライフ。


配信。


VTuber。


悪役令嬢。


クラフト。


こうした言葉は、


単なる説明ではなく、


読者にとって、


味を示すラベル


になっているのかもしれません。


テンプレは「ジャンル」から「タグ」になった?


以前なら、


ファンタジー。


SF。


恋愛。


ミステリー。


という大きな分類がありました。


でもWeb小説では、


もっと細かく、


追放。


ざまぁ。


俺TUEEE。


スローライフ。


掲示板。


配信。


人外転生。


男女比。


TS。


クラフト。


という単位で、


作品を探すことができます。


これは、


テンプレが、


単なる物語構造ではなく、


検索可能な「タグ」になった


とも考えられます。


読者は、


「異世界ファンタジーが読みたい」


だけではなく、


「異世界でクラフトしてスローライフする、女主人公の長編が読みたい」


みたいに、


かなり細かく欲しいものを探せる。


そして作者側も、


その需要に合わせて、


複数の要素を組み合わせられる。


「ジャンルの境界」がかなり曖昧になる


こうなると、


作品を、


一つのジャンルへ分類すること自体が難しくなります。


『推しにささげるダンジョングルメ』は、


現代ファンタジー?


配信もの?


VTuberもの?


グルメ?


俺TUEEE?


全部です。


『追放令嬢、クラフトしながらキャンピングカーで異世界を旅します』は、


異世界転生?


令嬢もの?


追放もの?


クラフト?


旅行?


スローライフ?


これも全部。


つまり、


ジャンルが縦に分かれる時代から、横に接続される時代へ


移っているように見えます。


『中二病の魔法少女ゾンビ』――もはや一言で説明できない


私が読んだ中では、


『中二病の魔法少女ゾンビ』


もかなり面白い例です。


現代ファンタジー。


魔法少女。


ゾンビ。


身体変化。


中二病的な魔法。


コメディ。


さらに物語が進むと、


いろいろな要素が重なっていきます。


公式の作品紹介でも、普通のOLだった主人公が実験施設で目覚め、身体を再構成されて小さくなり、中二病属性の魔法を使う「魔法少女ゾンビ」になるという、一言では分類しづらい設定になっています。


これも、


昔なら、


「魔法少女もの」


「ゾンビもの」


のどちらかだったかもしれない。


今は、


魔法少女でゾンビでもいい。


さらに、


中身は大人でもいい。


コメディでもいい。


掲示板があってもいい。


もはや、


ジャンル同士を混ぜることに、


ほとんど抵抗がありません。


「それ混ぜるの?」が新しさになる


2020年代では、


完全に新しいジャンルを作るより、


むしろ、


「その二つ、組み合わせるの?」


という部分が、


新しさになることがあります。


魔法少女+ゾンビ。


異世界+キャンピングカー。


ダンジョン+VTuber+グルメ。


異世界+放置ゲーム。


一個ずつ見ると、


どれも知っている。


でも、


組み合わせた瞬間、


ちょっと見てみたくなる。


これは、


テンプレが大量に蓄積されたからこそ可能になった遊び方だと思います。


ゲーム知識も、RPGだけではなくなる


初期のなろう系で強かったゲーム文法は、


主にRPG的でした。


レベル。


HP。


MP。


ステータス。


スキル。


職業。


ダンジョン。


しかし、


ゲーム文化そのものも多様です。


だったら、


RPG以外のゲームの考え方を、


異世界へ持ってきてもいい。


その一例が、


『異世界に放置ゲー理論を持ち込んだら世界最強になれる説』


です。


この作品では、


異世界転生した主人公が、


「放置ゲームのように効率よく成長できないか」


と考えます。


公式紹介でも、異世界で「放置ゲー」の理論を現実に応用し、効率のいい成長を目指すこと自体が作品の中心設定になっています。


これ、


かなり今っぽいと思います。


「ゲーム世界へ行く」から「ゲームの考え方を現実へ持ち込む」へ


第2章では、


ゲームのルールが、


異世界のルールになっていった話をしました。


レベル。


ステータス。


スキル。


それが、


当たり前になった。


そして今度は、


ゲームそのものではなく、


ゲームを攻略する人間の発想


まで異世界へ持ち込まれる。


効率。


最適化。


放置。


周回。


ビルド。


検証。


つまり、


ゲームのシステムではなく、


ゲーマーの思考法がチートになる。


これも、


ゲーム文化となろう系が長く結びついた結果として、


かなり面白い変化だと思います。


「新しい能力」より「新しい使い方」


昔なら、


新しい魔法。


新しいスキル。


新しいチート。


そのものが作品の特徴になりました。


でも、


ある程度能力が出揃うと、


今度は、


既存の能力をどう使うか


が重要になる。


弱い能力を組み合わせる。


ゲーム理論で効率化する。


生活魔法だけで無双する。


生産スキルを戦闘に使う。


収納能力を物流革命に使う。


つまり、


新しい道具を発明するだけでなく、


既にある道具の使い方を変える。


ここにも、


ジャンルの成熟を感じます。


「テンプレの合体」は、ご都合主義とも相性がいい


テンプレを複数組み合わせれば、


当然、


主人公に与えられるものも増えます。


異世界転生。


前世知識。


クラフト。


収納。


鑑定。


料理。


ネット通販。


従魔。


スローライフ。


全部入れる。


ここまで来ると、


「盛りすぎでは?」


と思うこともあります。


でも、


読者側も、


最初から、


「そういう作品です」


と分かって読んでいる。


だから、


ある意味では問題ありません。


『追放令嬢、クラフトしながらキャンピングカーで異世界を旅します』の公式紹介にも、


「生産職チート」


「ほのぼのストレスフリー」


「苦戦展開なし」


「グルメ」


「ざまぁ」


など、


作品が何を提供するのかがかなり明確に書かれています。


これは、


物語の方向性を隠すより、


「この味ですよ」と先に宣言する


読み方に変わってきたとも言えるかもしれません。


「驚き」より「欲しいものが出てくる安心感」


これは、


第4章の「もう遅い」でも少し触れました。


ざまぁが読みたい。


タイトルに「ざまぁ」。


よし。


スローライフが読みたい。


タイトルに「スローライフ」。


よし。


配信ものが読みたい。


「VTuber」「配信」。


よし。


つまり、


読者は必ずしも、


何が起きるか全く分からない作品だけを求めているわけではありません。


むしろ、


自分の好きな型が、どう料理されるのか


を楽しんでいる。


これは、


時代劇。


刑事ドラマ。


スポーツ漫画。


ラブコメ。


などにもある楽しみ方だと思います。


「またこれか」と「これこれ」の間


テンプレ作品を読んでいると、


面白い感覚があります。


同じ展開が続きすぎると、


「またこれか」


となる。


でも、


自分の好きなテンプレがちょうどよく出てくると、


「これこれ!」


となる。


この差って、


結構大きい。


テンプレが嫌いなのではなく、


自分が欲しいテンプレかどうか


なのかもしれません。


私自身、


主人公最強。


ご都合展開。


コメディ。


ストレス少なめ。


みたいな作品は、


似たような構造でも普通に何本も読めます。


逆に、


どれだけ斬新でも、


自分に合わないストレス展開が長いと、


途中で疲れてしまう。


つまり、


ジャンルが成熟すると、


読者側の好みも、


どんどん細かくなっていくのだと思います。


「テンプレ合体」は、読者の細分化にも対応できる


例えば、


単なる異世界転生では広すぎる。


では、


異世界転生+女主人公。


さらに、


クラフト。


さらに、


スローライフ。


さらに、


グルメ。


なら、


その組み合わせが好きな読者へ、


かなりピンポイントに届きます。


現代ダンジョン。



最強主人公。



VTuber。



掲示板。



グルメ。


これも、


その組み合わせが好きな人には、


ものすごく刺さる。


つまり、


テンプレの合体は、


読者の好みが細分化した結果


とも考えられるかもしれません。


なろうだけでは語れなくなってきた


そして、


もう一つ、


ここ数年のWeb小説を考えるうえで大きいと感じるのが、


「小説家になろう」だけ見ていても、全体が分からなくなってきた


ことです。


この連載では便宜上、


「なろう系」


という言葉を使っています。


でも、


現在では、


カクヨム。


アルファポリス。


ノクターンノベルズ。


その他の投稿サイト。


それぞれに作品があり、


流行があり、


作品が行き来することもあります。


私自身、


最近読んでいる作品を見返してみても、


カクヨム作品がかなり増えています。


だから、


2020年代については、


もはや、


「小説家になろうの歴史」ではなく「なろう系から広がったWeb小説文化の歴史」


と考えた方が、


実態に近いように思います。


「なろう系」はサイト名から、様式名へ


これは、


第0章で書いた話にも戻ります。


本来、


「小説家になろう」は、


投稿サイトの名前です。


でも、


今、


「なろう系」


と言った時、


必ずしも、


小説家になろうに掲載されている作品だけを指してはいません。


異世界転生。


チート。


追放。


悪役令嬢。


現代ダンジョン。


配信。


そうした、


長年のWeb小説文化から生まれた文法を持つ作品全体を、


なんとなく、


「なろう系」


と呼ぶことがあります。


つまり、


サイトから生まれた言葉が、いつの間にか一つの様式を表す言葉になった。


これも、


十数年という時間の中で起きた、


かなり大きな変化だと思います。


2010年代は「テンプレが生まれた時代」


ここまでの流れを、


かなり大雑把に整理してみます。


2010年代前半。


転移。


転生。


ゲーム世界。


ステータス。


スキル。


チート。


人外転生。


など、


後に定番になる要素が一気に出てくる。


その後、


料理。


農業。


生産。


スローライフ。


追放。


ざまぁ。


悪役令嬢。


など、


様々なテンプレが増えていく。


つまり、


新しい遊び方が次々に見つかっていた時代


だった。


2020年代は「テンプレを組み合わせる時代」?


そして2020年代。


すでに大量のテンプレがあります。


だったら、


追放+クラフト。


ダンジョン+配信。


VTuber+異世界。


グルメ+最強。


男女比+芸能。


TS+配信。


令嬢+キャンピングカー。


魔法少女+ゾンビ。


異世界+放置ゲー。


組み合わせは、


ほぼ無限です。


だから私は、


今のところ、


こんな風に考えています。


2010年代は、新しいテンプレが次々に生まれた時代。


2020年代は、成熟したテンプレを自由に組み合わせる時代。


もちろん、


完全な新ジャンルがもう生まれない、


という意味ではありません。


これからも、


思いもしなかった流行は出てくるでしょう。


ただ、


現在のWeb小説を見ていると、


「新しい設定」より「新しい組み合わせ」


が作品の個性になるケースが、


かなり増えているように感じます。


でも、これは「ネタ切れ」なのか?


ここで、


少し意地悪な見方もできます。


新しいものがないから、


昔のテンプレを混ぜているだけでは?


つまり、


ネタ切れなのでは?


と。


そういう面が、


全くないとは言いません。


でも、


私はそれだけではないと思います。


ジャンルが成熟すると、「組み合わせ」が高度になる


例えば音楽でも、


完全に新しい音そのものを作り出すことは難しい。


でも、


既存のジャンルを混ぜる。


ロック。


ジャズ。


電子音楽。


ヒップホップ。


様々なものを組み合わせることで、


新しい音楽が生まれます。


料理も同じ。


漫画も同じ。


ゲームも同じ。


Web小説も、


同じ段階へ入ったと考えることもできます。


つまり、


テンプレ合体は、


衰退ではなく、


成熟したジャンルの次の遊び方


なのかもしれません。


「知っているもの」だから、思い切って混ぜられる


しかも、


読者がテンプレを知っているから、


組み合わせても説明が短くて済みます。


VTuberとは何か。


毎回説明しなくていい。


異世界転生とは何か。


説明しなくていい。


追放ものとは何か。


読者は知っている。


悪役令嬢とは何か。


だいたい分かる。


だから、


それらを三つ四つ混ぜても、


意外とすんなり読める。


これも、


共有文法が成熟した結果


なのだと思います。


そして今後は、さらに何が混ざる?


ここから先は、


完全に予想です。


生成AI。


VR。


AR。


メタバース。


自動運転。


ロボット。


現実の技術や文化が変われば、


当然、


Web小説の題材も変わります。


実際、


前回取り上げたように、


生成AIを物語へ取り込む作品もすでに出てきています。


なら、


異世界転生+生成AI。


現代ダンジョン+AI実況。


配信+AI。


転生+ロボット。


異世界+SNS。


まだまだ、


いくらでも混ぜられる。


だから「なろう系」は、たぶんなくならない


「異世界転生はもう飽きられた」


という話は、


何度も聞いた気がします。


でも、


気づけば今も、


異世界ものは大量にあります。


なぜなのか。


もしかすると、


異世界転生そのものが、


すでに、


一つのジャンルというより「土台」


になったからなのかもしれません。


その上に、


料理。


農業。


追放。


配信。


クラフト。


グルメ。


恋愛。


芸能。


AI。


何でも載せられる。


異世界という舞台は、


恐ろしく自由です。


だから、


新しい文化が生まれるたびに、


「じゃあ異世界と組み合わせたら?」


ができる。


この柔軟さこそ、


なろう系が長く続いてきた理由の一つなのかもしれません。


気づけば、異世界転生は「設定」ではなく「言語」になった


ここまで書いてきて、


私は、


一つのところへ戻ってきました。


初期。


「主人公が異世界へ行きます」


それ自体が、


作品の大きな設定でした。


現在。


「異世界転生です」


読者。


「はいはい。それで今回は何するの?」


となる。


つまり、


異世界転生そのものは、


作品の目的ではなく、


物語を始めるための共通言語


に近くなった。


そして、


その上に、


何を載せるのか。


どう組み合わせるのか。


どう外すのか。


そちらの方が重要になってきた。


こう考えると、


第1章から追いかけてきた流れが、


かなり一本につながった気がします。


ここまで来たら、あと少し


異世界へ行くことが新鮮だった時代。


転生とチートが増えた時代。


異世界で料理や農業を始めた時代。


追放とざまぁ。


現代ダンジョン。


配信。


ハーレム。


現代知識。


テンプレを知り尽くした読者との読み合い。


そして、


テンプレ同士を組み合わせる現在。


十数年を振り返ると、


随分遠くまで来たものです。


ただ、


最後にもう一つ、


この連載の中で何度も出てきた問題があります。


便利すぎる能力です。


鑑定。


アイテムボックス。


自動翻訳。


回復。


地図。


転移。


ネット通販。


これらは、


なろう系を非常に読みやすくしてくれました。


でも、


便利すぎる能力は、


物語上の問題そのものを消してしまうこともあります。


次回は最後の横道として、


「便利スキルは物語をどこまで楽にしたか――チートは物語を壊すのか?」


について考えてみたいと思います。

今回は、


2020年代のWeb小説について、


「テンプレの合体」


という視点から考えてみました。


最近の作品を読んでいると、


本当に、


「そこ混ぜるんだ」


と思うことがあります。


でも、


それが普通に面白い。


むしろ、


知っているテンプレ同士だからこそ、


組み合わせた時の違いが分かりやすい。


個人的には、


『推しにささげるダンジョングルメ』の、


現代ダンジョン+最強+VTuber+グルメ+推し活


なんて、


今のWeb小説を象徴するような組み合わせだと思っています。


そして、


『追放令嬢、クラフトしながらキャンピングカーで異世界を旅します』


みたいなタイトルを見ると、


もうタイトルだけで、


「これは自分の好きなやつかどうか」


かなり判断できる。


これはこれで、


長年Web小説を読んできたからこその楽しみ方なのかもしれません。


皆さんにも、


「その組み合わせは思いつかなかった」


という作品はあるでしょうか。


また、


最近好きな、


「○○+○○」


の組み合わせがあれば、


ぜひ教えてください。


次回は、


最後の横道。


便利スキルが物語そのものへ与えた影響


について考えてみたいと思います。


そして、


その後はいよいよ、


この長い振り返りをまとめる最終章へ進みます。

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