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「なぜ、その娘は蛇から加護を貰っておるのかえ?」
先ほどまで泣いていたからか、かすれた声で千歳が誰になく問う。
「なぜじゃ?蛇が…
蛇が人に慈悲など与えぬであろう?
何故この娘が蛇の加護を持っておるのじゃ…?」
拙い。と狼の主神の顔に思い切り書かれているかのように見える姿に神でもそのような表情をするのだなと礼を言おうと開きかけていた口は閉じ、見当外れなことが頭に浮かぶ。
鳥の主神がうんざりだと言いたげな表情を浮かべ千歳に告げる。
「彼女、天音は蛇の子とそれを喰らってしまった子の融合体だ。
前回喰らってから死ぬまでの期間で融合してしまい、今世では一つの身体に産まれてきた。
それはそなたには関係あるまい。」
「…蛇の子…?
蛇の…
蛇の!!!!!」
「千歳待て!!!!」
狼の主神の言葉を聞くことなく、千歳は黒い炎を天音に投げつける。
至近距離だったので狼の主神が、天音を庇おうと動くが間に合わず炎が顔に覆いかかる所で、天音の手に持っていた扇を翳し、小さく詠った。
扇から文字が踊り出てそのまま炎を弾き、下に落ちた炎を包み込み消していく。
唖然とする翔太と再度抱きかかえられ押さえこまれた千歳に呆れ顔の主神2人に困ったように笑う天音。
「ああ、そなたは蛇の子の力をそのまま使えるのだったな。よかった。
怪我でもさせてあちらに送れば蛇の一族からの報復があったやもしれん。
さすが玲瓏の子よな。半神、混じり者でありながら人の身体を使っても、それだけ詩詠いの力を操れれば、問題なく向こうでも活躍できるだろう。」
その白根の言葉に嬉しそうに笑う天音。
そんな天音を見て千歳が怒りのままに声を上げる。
「なぜじゃ!どうして蛇の子がここにおるのじゃ!
狼の主神!どうして止めるのじゃ!それは翔太朗の仇の子なのじゃ
報復して何が悪いのじゃ!!!」
「千歳、本当にそなたは周りの話を聞いておらぬな。
前回、そなたが彼に憑いていくと決断する前に前回のことですべての国が罪に見合っただけの咎を負ったであろう?
玲瓏の国は玲瓏の暴走で贄だけではなく、あまりに多くの中津国の住人が犠牲になったことで混乱するであろう冥界を治めるために天界から地下に降り、根津国に君臨することになったのから始まり、すべての国が犠牲を出しているが報復はしないという決定がすべての国の主神によって決められた。
そなたは丹霞の決めたことすら無視し、狐の国が払った代償さえ台無しにするのか?」
狼の主神の言葉にまた文句を言おうとしている千歳に思い切り拳骨を落とし、呻いている千歳の襟首をまた持ちあげて、まるで猫の子でも運ぶようにして鳥の主神が翔太の前に千歳を運んでくる。
「煩くてかなわぬので抱いて頭を撫でておれ」
そう翔太に言い、千歳を押し付け話を進める。
「とにかく今後、玲瓏の子ということで天音への攻撃は禁止する。
そなたが定めを破れば狐と蛇の全面戦争になるだろう。
さすれば丹霞はそなたの教育の失敗について責任を取らされ、2度目となれば主神から降ろされよう。
それでよければいがみ続けろ」
常盤の歯に衣を着せぬ言い方にしっぽを逆立てる千歳だが、翔太に抱きすくめられ頭を撫でられているうちに落ち着いてきたのか顔を肩に埋めて大人しくなっていく。
そんな千歳を見やり、天音が遠慮がちに口を開く。
「あの、私も前回の事。
その…彼を食べてしまったこと自体を前回知らなかったんです。
言い訳にもなりませんが、彼も自分が弱かったから狩られて喰われてしまったと言ってくれて…。
それで、できるのであれば今世を全うして、一緒に蛇の主神様の元に向かって魂を分けてもらい一緒にその後を過ごしたいと2人で話しているんです。
あなたにとって、私たちも蛇の主神様も敵になってしまうと思いますが、いま私たちは同じ課題に向き合って問題を解決しないと消滅してしまうわけで…
どうか一度、未来のために一緒に協力することはできないでしょうか…?」
そんな天音の言葉に翔太の肩に顔を埋め、しっぽを不機嫌そうにパタパタと叩きつけている。
そんな千歳に天音は言葉を続ける。
「こういう言い方をすれば不快に思うかもしれませんが、私も食べられてしまった彼も利用され犠牲にされてしまったあなた方も同じく被害者だと思っています。
私は…
私はただ罪を償い、穏便に30年まで生き延び、かの方の元へ胸を張って彼と共に逝けるようにその後の人生も精一杯生きたいと…
そう思っていて…
この償いを終わらせ無事に消滅せずに今度こそ彼をかの方の元へ…できるのなら一緒に向かいたいのです…
ですので…」
そんな天音の言い分に相変わらずしっぽで不機嫌を現す千歳に翔太も声をかける
「なあ、今は生き延びるのが一番大事じゃないのか?チャンスを貰ったってことで合ってるよな?
君と全く状況が分かっていなくて何もできない僕だけより、どう考えても力が使える彼女もいた方が生存率は上がるんじゃないのか?」
翔太に打ち付けていたしっぽがぴたっと止まる。
そんな千歳を縋るように見つめる天音に向き直り、千歳がしぶしぶといった感じで口を尖らせながら言葉を連ねる。
「仕方がないのじゃ。今回は蛇の子と一緒でも我慢するのじゃ。
…だが、翔太朗に何かしてたら殺すえ?」




