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「話は纏ったな。」
どこかと連絡を取りながら傍観していた常盤が声をかけてくる。
「丹霞たちにも連絡が取れた。天界、空津国、根津国それぞれで管理に向かっている者たちにはそなたらが行くことが通達されるだろう。
あと、先ほども話したが前回の件で他の国と争うことは禁じられている。特に風以上の位の者が争いを起こした場合、厳罰が下ることになっている。
そなたらの案内役には狐の国の者がまず出向く。そこで注意事項をしっかりと聞くように。
千歳、絶対に余計な問題を起こし戦争を産むな。わかったな?」
そんな鳥の主神の言葉に泣きはらした顔で不貞腐れているのを隠しもせずに千歳は頷く。
狼の主神が千歳の頭を軽くポンポンと叩きながら「次に顔を会わせる時は成長していることを期待しているぞ」と励まし、千歳も目をこすりながら頷いている。
ため息を付きながら翔太たちに向き直り、鳥の主神が不思議な文様を床に書き連ねていく。
その文様が動き門の形を作り出すと、門の先に四阿の外とはまた異なる昨日渋谷で見た懐かしい気もする異国情緒あふれる景色が広がっている。
「さてこれより先が、かの者たちが封じ込められている場所になる。
案内人に話を聞き、1人でも多く中津国の住人を元居た世界に戻すのだ。
長く居れば居るほど、人は人とは異なる者に変化していく。
人で居られるうちに国に帰らねば、もう戻ることはできまい」
淡々と文様を継ぎ足しながら常盤は続ける。
「中津国の住人を攫おうとした者もここに一緒に閉じ込められている可能性が高い。が、狼の一族を中心に捜索をしているが今のところ見つかっていない。
どこに潜んでいるか、また目的もわかっておらんのでそやつらにも気を付け、罪を償い、今世を全うできるように手を尽くすように。」
そして視線を翔太に向け
「…翔太。先ほど言った件だが結界、空津国にいる間有効だ。
そなたが過去を知り違う縁を望むのであれば、その時は我が咎を引き受けそなたの縁を断ち切ろう。
そこなる小娘が暴れようが抑え込んで切ってやるので自身がどうしたいのか考えてみるがよい。」
なかったことになったと思っていた話をされ驚く翔太に常盤は続ける。
「一国の長たる者が一度口にしたことを安易に変えることはできぬとは思わぬか?
そなたは一度くらい自分で自分の未来を選んでもよかろうと我は思う。
…それだけのことがあったのでな。
神に気に入られるというのは人にとって救いか罰かわからぬ時もあるとそなたらを見ているとつくづく思い知らされる。」
少し目を伏せそんな話をする常盤の言葉にお礼を言おうとすれば千歳が噛みついていく
「余計なことじゃ!翔太朗は妾が幸せにするのじゃ!
これから力をたくさんつけて今度こそ…今度こそちゃんと守るのじゃ!
だから!だから…」
そう言いまた涙声になっていく千歳を抱きなおし、本当に幼児にするように背を叩きながら言葉には出さず頭を下げる。
常盤はそんな千歳には反応せず翔太に軽く頷き、天音を確認し彼女が頷くと門を大きく広げていく。
「何か気づいたことがあれば駐屯所にいる狼に髪紐を見せて報告してほしい。
犯人の捕獲に関しては狼の一族が主体になって動いている。
鳥の一族も警備に空から当たっているが、我らには気づけない点もあるだろう。
あとは案内に迎えに来る者は千歳にも慣れているし、そこまで甘やかす者でもない。
彼は詩詠いだがその他の能力にも長けているので、今後どのように動くのが良いかも相談してみるとよい。 」
白根の言葉に頷く2人。
「ではよいな?これより先に向かい、任を果たせよ。
そして自身に紐づいている罪を清算するのだ」
常盤の声に合わせより大きく広がった門が3人の目の前まで迫ってくる。
そのまま門は止まることなく、あっという間に翔太たち3人を四阿から人々を閉じ込めている結界の中へと取り込んでいった。
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「あ、もう無くなってる」
天音が後ろを振り向き声を上げる。
翔太もその声に釣られ振り返れば、後ろには草原とも荒野とも異なる景色が遠くに見える森までつながっている。
そして前を向けば、1本道の先に大きな門と街が見える。
「まず、街に向かって案内役の人を探しに行こう。
そうだ。改めまして。 坂井翔太です。えっと32歳で渋谷で会社員をやってます。よろしくお願いします。」
「あ、伊藤天音です。初めまして。
えっと、配信サイトで歌ってます。年は26歳です。
あ、でも年齢と苗字は非公開なんで内緒にしてもらえると嬉しいです。こちらこそよろしくお願いします。」
こんな場所だからか、それともおかしな事だらけだったからか、簡単な自己紹介にものすごく心が癒される。
翔太に抱き着きぐたっとしていた千歳もそんな2人を見て小さな声で名乗った。
「千歳なのじゃ。狐の国の物綴りなのじゃ。
本当はもっと強くてすごいのじゃ。
今日は久しぶりだったから失敗をたくさんしてしまったのじゃ…」
力なくそう言ってうなだれる千歳に天音が悶え、頭を撫でたいのか手を伸ばしては引っ込めるというおかしな行動をしている。
そんな天音を見ている翔太に気づき恥ずかしそうに告白する。
「かわいいもの大好きなんです…」
ああ、と翔太も千歳のルックスだけ見ればまんまるの目の幼女が狐の巫女のコスプレをしているのでマスコットなどが好きな女性ならばこれは刺さりまくるだろうと納得していると背後から声がかかる。
「千歳。ダメじゃないか。説明を聞いただろう?
街の外は狩場なのだから人がゆっくり歩いていたら喰われてしまう。
ちゃんと守らないとせっかく今世まで彼に憑いてきたのに台無しになってしまうよ?」
その言葉に慌てて振り向けば、赤茶の瞳をにんまりと擬音が付きそうな形に変えた美しい着流しを着た白の髪と耳にしっぽの狐の国の者と思われるものが立っていた。
いつも読んでくれてありがとうございます。
普通にただ読んでくれる人がいるっていうのがこんなにうれしいものだったんだなって噛み締めながら書いてます。
そしてミスがあり直しているので次回6/24 19:00から再開します。
1章があと3話ぐらい書けば終わるので50話近くまではその後続けて入稿すると思います。(ミスってなければ…)
これからも読んでくれたらうれしいです。では!




