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「兄様… 紅闇兄様?」
振り向いた翔太に抱えられていた千歳も一緒に声を掛けてきた青年に向き直ると掠れた声でそのように呟いた。
「ひどいものだな。せっかく迎えに来た兄がわからなくなったのかい?
千歳は少し会わぬ間に薄情になったようだ。
それとも私ではなく綾音が来るのを待っていたのかい?」
そう軽い口調で話しながら傍に寄って来る青年に距離を取るべきか悩んでいれば「止まっていないで街に向かって進んで」と声を掛けられる。
天音と顔を会わせお互いどちらからともなく頷くと、その声に従い街へ進みだす。
そんな僕たちのすぐ背後に着いた彼はそのまま話し続ける。
「止まらずに聞いて。ここにいるといつ何が襲ってくるかわからない。出てくる者によっては私一人だと君たちを守りながら動くのはつらい場合もある。
これだけ街に近ければ大丈夫だと思うが、小規模の狩りや小競り合いはしょっちゅう起きているから注意するに越したことはないからね。
ああ、街に着いたらそのままこれからの滞在先に案内するから、とりあえず街に着けばいいからそのまま歩いて貰えるかな?」
そんな言葉に思わず翔太も天音も早足になり、街までの数百メートルぐらいの距離を一気に進んでいく。
さすがに今、今でなくても襲われるのはいろんな意味で嫌だ。
お互いにそう思っているのがひしひしと伝わる中、あっという間に街に着き門を潜って息を吐き出すとおかしそうに青年が話し出した。
「悪いね。脅かすようになってしまって。
宿に着いたら今日はゆっくりするといい。
千歳、彼らに紹介してくれないのかい?全く仕方がない。
私の名は紅闇。狐の国で第三位の星の位に在る者だ。位としては千歳の次の位だが、一応信用度は千歳より上だから安心して貰って大丈夫だ。
君たちの紹介や詳しい話は宿に着いてからにして、まずは歩きながら街の雰囲気を味わって欲しい。
質問は宿に着いてから受け付けるから、宿に着くまではできるだけ口は閉ざして進んでくれると嬉しいかな?」
千歳はそんな兄と名乗る人物に少し膨れた顔を見せた後、翔太にしがみ顔を隠してしまう。千歳とも主神の2人とも雰囲気が異なる紅闇に戸惑いつつも2人は頷き、紅闇に従い彼の後に続いていく。
「ああ、あと注意だがここはいろんな者が居るから、君たちが初めて見るような外見の者も多いと思う。失礼になる場合もあるから、相手の見目に驚いて叫び声をあげたり走って逃げたりしないように。
もし不安なら視点を少しずらして直視しないように気を付けて」
注意とアドバイスの内容に、思考を放棄したい気持ちとフレンドリーに感じても無茶振りする紅闇もやっぱり神だ。と全体的に和と東南アジアと洋が混じったような雑多で活気の良い商店街をどこを見ればいいかのと視線を戸惑わせながら街を歩く。
そんな翔太と天音とぬいぐるみのように大人しいと思えば半分寝ている千歳に軽く両脇にある人から見れば不思議でしかない外観や定員が呼び込みをしている店を紅闇は説明をしながら進む
入口の門からそれなりに歩き、活気の良い商店街を抜けた少し先にある穏やかな宿屋と小料理屋が立ち並ぶ区画に進むと「ここだ。」と、一軒の時代劇に出てきそうな旅籠で止まる。
そのまま紅闇は暖簾をくぐり、「戻ったよ」と中に声を掛けている。
入口で立ち止まった2人に「中に入って」と、ひょこっと顔だけ出して告げるので焦って追いかけようとすれば、完璧に寝落ちしてしまった千歳がずり落ちそうになり抱き直しながら中に入る。
中に入れば、そこは外から見た広さと全く釣り合っていない見事な様々な植物と枯山水の庭園にところどころ階段や東屋があり、京都の観光で有名な庭園よりもすごいと唖然としていれば、戻ってきた紅闇に声をかけられる。
「千歳は仕方ないな。寝落ちしてしまったの。
あちらで暴れたと聞いてはいたけど、疲れてしまったのかな。
申し訳ないけど、そのまま抱いて連れてきてもらってもいいかな?代わると目が覚めるだろうから、後を考えても先に進んでしまおう」
翔太からするとこの紅闇という人物…人ではないがなんというかとても言葉が柔らかいので先の2人よりフレンドリーに感じるのに、仕事の上司に通じるオーラというか人に命じるのに慣れている物腰の柔らかさに気を抜くのがとても怖いと感じてしまう。
天音はそんなことはないのか「寝顔かわいい」と千歳のだらけきった寝顔を見て「かわいい。写真撮りたい」と悶えている。
確かにいまは早く進んで、一度休憩というか全体像を掴んで頭を整理する時間が欲しいともう一度千歳を抱え直し、紅闇に続いていく。
「ここは狐の者がこの街で使っている宿になる。
入口が異なるので他の者と遭遇することはないと思うけど、あとで身分を保障するものを渡すから身に着けておいてね。
狐は国としてはもう今回の祭事での狩りは中止したけれど、個で若い者は参加している。通達はしているけれど、人だというだけで贄の者と勘違いして外に連れ出そうとする者がいるかもしれないから気を付けて」
無言で頷く2人に「ここはもう大丈夫だから話していいよ」と目を細めて笑う。
神というのは見目の良さも条件に含まれているのか、後光が差しそうな笑顔だと何かが浄化された気がしながらも、何を話していいかと考えている間に入口に松に似た木が植えてある離れに案内された。
読んでくれてありがとうです。
…入稿チェック本当につらい…ミスだけじゃなくて表現とかその他諸々気になるけど、AIを使うとよりめんどくさくなるというジレンマ…
とりあえずあと20話チェックしたら、続きを書きに戻れるので頑張るのです…




