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知る権利と選ぶ権利を貰えるとこれは喜んでいいのだろうか…?



常盤の言葉に目を見開き浅い呼吸を繰り返す千歳。

どす黒い炎が身体のあちこちから吹き出しかけては白根が払っている。



「千歳。そのまま行くと闇落ちするぞ?今そなたが闇落ちすれば彼は選ぶ権利もなにもなく、そのまま消滅するがいいのか?


お前の都合で前回も今回も短い生涯を送らせれば満足か?満足だというのであれば、常盤にお前との縁を切ってもらい消滅ではなく別の道につないでもらった方がまだ救いがあるというものではないのか?」



「あああああああああ…」



千歳から出ていた黒い炎が彼女の身体に戻っていく。


そして小さく消え入りそうな声で呻き声をあげながら大粒の涙を溢し続ける千歳は神というよりどうやっても幼女にしか見えず、狼の主神のような長身の男性に押さえつけられ涙ながらに呻き声を上げている姿を見ていられなくなり、声を上げようとすれば先に天音が口を開いた。



「主神方。それは今決めねばいけないことでしょうか?

 

これから人を中津国に戻さねばならぬのであり、神々が手を出せぬところに手を出せるのが私だけというのはとても心許無いです。


なので卑怯かもしれませんが、できれば彼にはまだこちらに残ってほしく…


それに私がかの方のお子から話を聞き、理解するのにもそれなりの年月がかかりました。

彼は私のように長い年月をかけて理解するという時間を捻出するのは難しいでしょうが何も知らない状態から今聞いた話と、前回の話ですぐに決めろというのは酷だと存じます。


どうか彼に、そして私に猶予を頂けないでしょうか?」



口数少なく見守っていた天音の言葉に思いっきり乗ってしまえと続いて発言する。



「彼女の言うように猶予を頂けないでしょうか?


私事で申し訳ありませんが、昨日の事件が起こる前から仕事が込み入っていて睡眠不足なのもあり、正直今も現実味がなく話をとにかく聞いて頭に入れているだけで理解どころか認識が合っているかも自信がありません。


できるのであれば一度落ち着いて情報を整理し考える時間を頂けると大変有難いです。


その間、彼女と協力しできる限り人も元居た場所に戻せるよう尽力しますのでお願いできないでしょうか…?」



狼の主神が鳥の主神に向き直る。



「常盤。いいのではないか?確かに彼女1人より彼が居た方がよいと思う。

 


…それに、今ここで彼と縁切りを行えば千歳は確実に落ちるだろう。


丹霞があちらにいる間に千歳が落ちれば、狐との全面戦争になりかねん。できるのであれば無駄死にする者を増やしたくはない。



このような言い方はあれだが、千歳もまだ成長する可能性がある。


急を要し対応せねばならない事柄と言えど、彼には少しは猶予があってもいいはずだと私も思う。早く処理したい気持ちは同じだが、もう少し時間をかけてもいいのではないか?」



狼の主神の言葉に千歳を見た後天音と翔太に視線を移し、何かを考えるように鋭い目をより細める鳥の主神に翔太は生きた心地もなく、背中に冷や汗が流れていく。


どうか、気を変えて時間を…

とにかく今は猶予が欲しい。神よ。と目を瞑り祈るが目の前にいるのが神だと目を開く。



こういう待つしかない時間は時の流れをとても遅く感じさせる。



四阿の外の庭園に流れる水の音と風に揺れる木の葉が擦れる音だけが聞こえる。

外は美しい花木に囲まれ楽園に迷い込んだかのような場所なのに死刑宣告を待つような気分で、神の圧を感じながらどれくらいの時間が過ぎたのだろう。



「…そうだな。ここですべてを決めぬ方がよいな。


判った。

 

そなたらにはこのまま空津国の結界内へ向かってもらう。そこに案内を待たせよう。

 

あとこやつを連れていけ。行く先は我と白根の配下が統制している拠点になる。そやつがおれば、我の配下の者に我が遣わした者とすぐにわかるであろう。

 

そこではすべての種族が争いを禁じられておるが、人を狙って外に連れ出し喰おうとする者もおる。」



鳥の主神がそう話す間に翔太の肩に小さな梟が飛んでくる。

そしてその梟が翔太に止まると不思議な光が身体を包み、光は染み込むかのように消えていった。



「我からの餞別だ。


天音は蛇より加護を貰っているようだが、そなたは何もないようだしな。先を急ぎすぎた我よりの心ばかりの気持ちだ。


また、前回の事はこれから徐々に夢で見るだろう。

気になることがあれば、天音か迎えに来る者に質問すればよい。」



大きく目を見開く翔太に、千歳片手に近づいてくる白根が口を開く。



「ああ、確かにここまで何もないと危ないな。

そうだな。では私からはこれをやろう。」



そう言い、髪を結わいていた紐を解いてくれる。



「これは我が一族の者が組んだ髪紐だ。

我が一族の者にも私が髪紐を与えたと伝達しておこう。


それである程度の力ある者は難しいが、悪さをしようと近づいてくる小物程度は傍によることができなくなるだろう。


これで身を守りながらより力を付けるよう努力するように」


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