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殺気…というのだろうか、初めて感じるとてつもなく重いざらつく空気に翔太は息を思わず飲む。隣の少女も息を飲む音が聞こえる。
そんな空気にも負けずに千歳が喰らいついていく。
「鳥の主神。話がすり替わっておるのじゃ。妾の話ではなく妾たちの罪を問うのであれば、なぜ元凶の蛇の話をしないのじゃと聞いておる!
妾に問題があるのと蛇がやったことは別のはずぞ!なのに蛇は償いをせずにどこに行ったのじゃ!
先ほどから蛇の国の話も出てこないではないか!なんじゃ?蛇の国は罰を喰らって蛇もろとも滅びたのかえ?
そうでないのならなぜ蛇が働かず母上様が猿などの国で働かねばならぬのじゃ!なぜあんな何でもめんどくさがり信用も出来ぬ者のところへ行かせるのかえ?
それに根津国とはなんじゃ!そんな国なかったのにいきなりどうして知らぬ国が天界や空津国と肩を並べておる!!!」
千歳の全く指摘されたことを無視した言葉に、鳥の主神の空気がより剣呑になっていく。
とにかくこのままでは絶対に自分にとって良い展開にならないことをひしひしと感じ耐えられなくなり、翔太は千歳が次の発言をする前に口を思い切り塞ぎ声を上げる。
「すみません!話を遮って申し訳ないですが、前回の罪とは何でしょうか?また、祭事とはなんなのでしょう?
それらに自分が関係したことでこのように直接神々とお話しさせて頂くようなことになったのだと存じますが、既に想像が及ぶ範囲ではなくどのように考えていいかわからなくなっています。
理解が遅く申し訳ないですが、教えを乞う事は可能でしょうか!」
思い切り水を差したのは分かったが、翔太の行動に凍てつくような鳥の主神の空気が若干和らぎ息をするのが楽になった。
そんな空気に便乗するかのように狼の主神が助け舟を出すように言葉を紡ぐ。
「ああ、そうか。そこすらも何もないのか。天音とそなたは違ったのだな。
それではいきなりこのような話をしてもあれだな。罪も理も分からなければ償いもわからぬだろう…」
そう言うと白根は常盤の方を向き「さすがにこの状態で向こうに行かせるのは問題だろう」と妥協を促す。
それを受け、千歳に対してため息をついてから翔太の方に視線を上げ常盤はまた話し始める。
「そなたらの罪。それは前回の祭事での出来事で大体今から400年ほど前からの出来事だ。
祭事は神事を行うために中津国で一定期間ごとに数十年から数百年かけて行われるが、前回はそなたの国の者が玲瓏、その小娘が蛇と呼んでいる者だが、4つあった天界の1つの蛇の国の主神の子を人間が狩って喰ってしまったことから始まった。」
出だしから不穏でしかない内容を無表情で話しながら常盤はまたテーブルの上にある水晶を手に取り立ち上がり、背後にある装飾豊かな茶箪笥の方へ移動し、水晶に何やら作業をしながら話を続けた。
「前回まではある程度、前祭が始まるまでに降りていい区域が決まっており、蛇の一族はそなたらの国の言葉でいう仏蘭西という国を中心に祭事を行うことになっていた。
しかし、自分の子を人に喰われ腹を立てた玲瓏は祭事で披露するはずだった予定を変え、報復する為に舵切りをしおった。
そして、その報復にちょうどいいからと何の考えもなくそなたを番だ、気に入ったと天界から中津国に降りていたその小娘が当時病弱だったそなたを慰めるために書いた物語を利用したのだ。」
ため息をつき鳥の主神は続ける。
「それでただ報復だけで済めばよかったのだが、そこの小娘が無駄に足掻いたせいで祭事の場ではない場で贄を作ってしまうことになるわ、報復相手が玲瓏が報復する前に死んでしまってな。
玲瓏は振り上げた拳を下す場所もなく、報復を行うために起こした騒動も小娘の書いた物語を使って起こした騒動も、そのまま放置したことで中津国はどこもかしこも火の海になってしまった。」
千歳が翔太の手を振り払って言い返す
「それではあまりに蛇に都合がいい話ではないか!!!
あ奴はあ奴は、詩詠いの風上に置けぬ!
翔太朗の家の人間を殺して物綴りである妾の綴りを盗んでおったではないか!
その上、復讐にちょうど良いと翔太朗の能力に目を付け、翔太朗を…
翔太朗を!!!!!」
「うわっ!!」
千歳からどす黒い炎が湧き出て、思わず手を放してしまう。
千歳はそのまま鳥の主神に飛びこんで行こうとすると座っていたはずがあっという間に動いた狼の主神に取り押さえられる。
「千歳。落ち着け。これ以上罪を重ねるな。
丹霞がいくらお前を可愛がっていても、我らと対峙し問題を起こせば庇いきれぬといい加減解れ。
それにお前の連れは何の防御もない状態ではないのか?お前は彼を殺したいのか?」
その言葉に目を見開き唖然としながら翔太を振り向き「違う。違うのじゃ」と呟く千歳。
既に展開に追いつけていない翔太と、どう動いていいのか困っている天音と泣きながら違うと呟き続けている千歳に大きくため息を付き、常盤が白根に千歳を押えているように言いながら、水晶にまた何やら手をかける。
そして、千歳に告げる。
「そなたがその者に憑いて行ったことはそなたの選択だが、その者は何一つ選択権を得ていない。
前回と今回との事を想うてみても選ぶことができぬ立場であったとしても、知ることくらいは許されてもよいと我は考える。
先ほども白根が言ったが罪を償うのに何も知らずで償えるのかというのもある。
この者にも知り選ぶ権利を与えよう。
その上でこの者にも罪を償い生を選ぶのか、それともそなたとの縁切りを選び我に消されるのを選ぶかぐらいの権利は人とは言えここまで巻き込まれたのだ。与えてもよかろう。
…そして、その者が消滅を選んだ際の咎は我が引き受けよう。
そなたはちゃんとこの者が何を選ぶのか大人しく見守れ」




