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扉を開けると、そこには誰も居らず扉と扉の間に昨日と同じようにワゴンが置かれている。


そしてワゴンの上にはメモが置いてあった。



目を通すと天音からのメモで

夕食を先に食べたこと、体調が悪かったら夜でも起こして欲しいこと、明日は駐屯場に千歳が考えた内容をSNS映え系のキャラ弁を超える内容で持たせようと狐の厨房が燃え上がり、精神的だけでなく厨房が火を噴いて燃えたことが書かれていた。



「厨房が火を噴くってどういうことだ?」



その件がすごく気になったが、明日になればわかるだろうとワゴンの上に気を使って置いてくれたのであろうメモなどの文具で返事を書いておく。


そして、夕飯の膳を取り部屋に戻る。



自室でなんとなく外が見たいと近くにあったテーブルを窓際に置き、茶を淹れて膳と本と一緒に運ぶ。


窓の外は相変わらずアミューズメントパークの景色のようで、イルミネーションのように様々な光が舞い上がったり、時折街で見た紙芝居が投影したような物語が空に浮かんでいる。



「これが日常になっていると向こうに帰った後、しんどいだろうな。」



毎日が非日常で遊園地に住んでいる気分になっている人には帰るのが嫌だと思う者も多そうだと…



…自分もそうなる可能性があるのかと考えてもみる。




…わからないな。帰ってポジションが無くなっていたらこっちに戻りたいと思うのかも知れないが…。


その時は紅闇に相談させて貰おうと割り切って本を読みながら夕飯に手を付ける。





---





部屋をノックする音がする。


目を開ければ、カーテンを閉め忘れた窓から朝日が差し込んでいる。



「寝坊したのか…?」



朝食の時間なのに起きておらず呼びに来たのかと焦って身を起こし、扉に向かう

勢いよく扉を開けると天音が驚いた顔をしている。



「おはよう…?」


「あ、おはようございます。体調大丈夫ですか?起きて来なかったので心配でノックしちゃったんですけど、寝てましたよね?」



翔太の頭を見てそういう天音に寝ぐせかと頭に手をやる。



「ごめん。寝てた。昨日もメモありがとう。

ちょっと待って、頭直してくる。えっともう千歳が呼んでる?」


「いえ、まだですけど、多分もうすぐ呼ばれると思います。」


「じゃあ、急いで直して着替えてくる」



部屋に戻り急ぎ洗面所に行き、顔を洗い髪も濡らして梳かしていく。

服を着替えようとクローゼットを開けると、いつもはすべて同じように並んでいるのに、今日は一着扉を開ければ目の前に現れる。



「蛇の一族と午後顔を会わせるのでこれを着てくるように」と肩に紅闇からのメッセージが付いている。



「ああ、午後来るんだったか。」



紅闇が着ているような少し畏まったクリーム色を主体にした彼とは柄の異なる着物の生地でいつも着ている服より豪華に装飾された服にタイやカフスといった小物も袋に入っている。



「なんだか仰々しいんだな…」



なんというか、蛇の一族というのは狼や鳥の一族とは異なるのかも知れないとこの衣装を見て改めて思う。


天音を待たせているので、早々に着替えると細かい装飾品を身に着け、部屋を出る。



そうすると先ほどは焦っていて気づかなかったが、天音の衣装も煌びやかではないが雅やかというか、同じくクリーム色に柄が異なる生地を使い、打掛に袴と平安時代っぽいが異なる衣装に小物に使われている刺し色も異なっている。



「すごい。豪華だね。似合ってるよ」


「変じゃないですか?成人式とかプロモーションビデオを撮った時の衣装よりもすごいんですよね…。」



「汚さないかドキドキします」といい緊張している天音に普通に話せてよかったと心の中で息を吐く。



「確かに緊張するよね。どんな人が来るのかね…。」


「怖い人じゃないといいですけどね…。腕輪の受け取りが直だったら緊張して口から心臓出そうなんですよ」



「翔太ー 天音ー 朝餉の時間じゃー!降りてくるのじゃー」



千歳の呼びかけに顔を見合わせ、どちらからともなく階段に進む。



「起こしてくれてありがとう」と改めて言えば、いえいえと足元を気にしながら天音は真剣な顔をして階段を降りて行く。





---





「おはよう。二人とも似合うね。よかったよかった。少し堅苦しいかもしれないけれど、その衣装に意味があるから蛇の一族と会うまでは我慢して着ていてね。


彼らが帰ったら中だけになっていいから」



若干苦笑いをして告げる紅闇に2人で頷く

既に席に座っている千歳に天音は手を振り、3人で席にと移動する。



「おはようなのじゃ。今日も朝餉は凄いし、お弁当もすごいのじゃよ」


「ああ、そうだ。

今日は早めに移動をするから食後少し休んだらそのまま駐屯場へ行く


部屋に忘れ物や身だしなみの確認がしたかったら、食後すぐに部屋に戻って構わないからね」



そう言われ、自分たちの前に置かれた膳の蓋を開けて翔太は絶句する。



昨日の昼も凄かったが、これは…



細工だらけの野菜や焼き物にあんかけの椀の中は文様のように見えるこれはなんだろうか…?


汁物も中に入っている具材も麩だろうか?デフォルメされた魚や亀などが入っている。



「進化してますね」


「そうだね。うちの厨房と天音は本当に相性がいいらしい。昨日食材の注文がとんでもないことになっていたよ」



笑いを堪えられない紅闇が昨日の翔太が部屋に行ってからの説明をしてくれる。


千歳と天音は大騒ぎで膳の中身が何味か当てながら次々口に入れている。



「そう言えば厨房が火を噴いたって」



思わずと言った感じで紅闇が吹き出しかけ、咳ばらいをし



「そうなんだよ。昨日ね。千歳が描いた千歳の夢のお弁当をどうしたら作れるのかを、厨房の者と語り合ってそのうち盛り上がりすぎて興奮した者から火が出てしまってね


燃え広がらなくてよかったよ」


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