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そう言われ、頷きながらまた水晶に手を置く。
今度は水晶の光がすぐに消えず少しづつ盆にも光が広がって行く。
紅闇が手を置いた時とは比べ物にならないぐらいゆっくりだが全体に光が広がって行くと、今度は半貴石が徐々に光を帯びていき輝きを放ち、元々芸術性の高かった盆はまるで美しいランタンにも見えてくる。
その光景はとても美しく、自分の身体から引っ張られる力でこの状態になるということにテンションが上がって行き、ついこのままずっと見ていたいと思っていると紅闇に肩を叩かれる。
視線をそちらに移せば「手を放すように」と言われ、残念に思いながら手を放す。
「翔太、気分や体調は大丈夫かい?
このように魅入られたようになる部分もあるので、一人の時は絶対に使わないように。
蛇の一族の作品はね。能力が高いのだけれど、このように美し過ぎて使う者の心を奪ってしまうことがあるんだ。
十二分に気を付けておくれ」
確かに思考するのすら難しいくらいに魅入っていた自分に薄ら寒いものを感じ、思わず光が収まっていた盆を見返す。
紅闇が止めなければ、自分は水晶から手を離せただろうか…と不安が込み上げてくる。
「そう怯えなくても大丈夫だと思うけれど、これからこういった道具に触れる機会は多いと思う。
天音は神子が居るから蛇の一族の作る物への耐性はあるだろうが、翔太は人で他の一族が作る物にも耐性は薄いだろう。
だから蛇の一族の作品で慣れてしまえば、他の物に惑わされることも少ないと思うけど、私か氷河たち、あとは天音が居ない時は今は触れるのを気を付けるように」
確かにこれからの事を考えれば耐性は多いに越したことはない。
1人で使った場合、あのまま止めることができず倒れていた自分まで想像ができてしまった翔太は紅闇の言葉を噛み締めてしっかりと頷く
そしていつの間にか隣に来ていた天音が「私もやってみたいです」と順番待ちしていたかのように紅闇に手を上げ訴えている。
そんな天音に苦笑して、紅闇は翔太に装飾具を外し天音に渡すように告げる。
腕に付けていたアームカバーを外して準備万端で待っていた天音は装飾具を受け取ると嬉々として付け、水晶に手を置いていいと言われるのを手を翳して待っている。
準備ができて紅闇からOKサインを貰うと、天音は水晶に手を置く。
翔太が手を置いた時より少し強い光が水晶に宿る。
「ああ、これだけ絞ってもそれだけ引き出されちゃうんだね。
手を放して。天音、気分や体調は大丈夫かい?」
笑顔で「全然問題ないです」とまだ手を翳したままで早く次がやりたいと全身で訴えている姿に紅闇は苦笑して「翔太、少し離れていなさい」と告げ、盆の設定を変えていく。
言われた通り、少し天音から離れ盆が見やすい位置に移動して、次に天音が水晶に力を通して行く姿を見学する。
翔太が力を通した時より早く、しかし紅闇よりは遅く、盆が輝き出していく。
半貴石が輝き出した辺りで、天音は紅闇に止められる前に手を離した。
「具合が悪くなったかい?」
心配そうに問う紅闇に対して、首を振り違うと伝えながら
「いえ、体調は大丈夫です。なんか大体わかったので。
これって、中央の水晶の周りの半貴石がより力を出すようにおまじないみたいなのが掛かっていて、端の方の大きいのが輝き出すと一気に放すようにこの中央の周りの半貴石のおまじないが変わる様になってませんか?
だからゆっくり力を込めた翔太さんは手を離せなくなって魅入られた状態になってたんじゃないでしょうか?」
天音の分析に翔太は驚き、紅闇を見てしまう。
「驚いたな。優秀だとは思っていたけど一度で見破られるとは思わなかった。
そうだね。これはそういう仕様になっている。力を使い出すとあらゆるものを使いたくなって倒れたり、悪い場合は命を落とすから道具や力の悪い面を見せるための構造になっているんだ」
盆の窪みにまたビー玉をはめ込み力を吸い出しながら、紅闇が続ける。
「翔太。悪いね。騙すような形で体験させて。どれぐらい魅入られるかも確認しておきたかったのもあって、翔太が意識して止めないようにしたんだ。」
首を振り問題ないと意思表示をしながらも天音との能力差にまたしても唖然とする。
最初に天音は主神たちに一緒の方がいいと言ってくれていたが、一人の方が効率いいんじゃないか?と焦りに似た不安を感じる。
「翔太。天音はずっと中津国でも力を使っていて、蛇の一族の力には既に馴染んでいるので自分と比較しないようにね
彼女はその辺の天界や空津国の者より、力に慣れ親しんでいるからね」
そうフォローしながら天音に装飾を外すように指示している。
天音も「すみません」と翔太に言いながら
「ああいうトリックっぽいの解くの彼が大好きで…
紅闇さんが力を流した辺りから観察していて一緒に考えていたのでズルしてます」
その言葉に思わず力が抜ける。
そうか、彼らにとってこれはトリックというか娯楽レベルなのかと、生命に関わると不安を感じた翔太との温度差を感じつつ…
この感覚差は今後このレベルの事が悪戯レベルで起きる可能性があると知れただけ良いと考えようと気持ちを切り替える。
ここでは深くこういうことを考え沼に嵌っている間に死ぬ気がする。それだけは絶対間違いじゃないと人が神の世界で生き残ることの難しさを感じる。
紅闇が盆と装飾具をソファーに持って行き、そのまま茶箪笥へ向かう。
「翔太はいつもの茶でいい?
天音は自分で選ぶかい?千歳は…集中しているようだから後ででいいね」
その言葉に翔太は頷き、天音は先ほどのやり取りなど既に頭にないかのように茶箪笥に向かってスキップするかのように進んでいく。
そして紅闇と茶を選んでいる。
翔太はそんな2人に「ちょっと顔を洗って来ます」と告げ、自室に上がる。




