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驚きながらもメモを渡せば「伊達に長く生きてないからね」と苦笑いとも異なる笑みを浮かべてそう言って来る。


笑みを浮かべてメモに目を通していた紅闇の表情が一瞬曇り、千歳と未だ何やらアートになった菓子類の話をしている天音に視線を軽く寄せると、少し遠くを見て口を開く。



「そうだな。この内容だとあとで話そうか。


千歳。今日も天音を厨房に連れて行ってそのキャラ弁やらラテアートやら菓子について話しておいで。


天音。厨房の者は中津国に降りられない者がほとんどだから詳しく話してやってくれ。


駐屯場に行く時間になったら呼ぶからそれまで頼むよ」



その言葉に目を輝かせたのが千歳よりも天音という事実は話せば多分、昨日の夜より天音が怒る気がした。





---





天音と千歳が仲良さげに手を繋ぎ浮かれて厨房に行ったのを眺めていれば、紅闇が「翔太もコーヒーでいい?」と声を掛けてくる。


頷けば彼は「あっちのソファーで話そう」と声を掛け、茶箪笥に向かい珈琲ミルから一式をワゴンに乗せている。


翔太もその姿を確認し、ソファーに移動する。



「翔太は食の好みがあまりないのかい?

天音は甘味や茶を色々試しているようだけど」



ソファーに来た紅闇が最初に聞いてきた内容がそれだった為に思わず苦笑してしまう。



「いや、食に興味がない訳じゃなくて、全然そっちに回せるだけの余裕がないだけです。


それに文句の言いようがないうまいものばかりが出ていたら不満なんて出ないので、天音ちゃんのようにあんなに食べ比べができる余裕はないかな…と」



「ああ」と紅闇もコーヒーミルを動かしながら笑う。



「甘味が好きな人は驚くぐらい食べるからね。


 そう。余裕ができたらでいいけど、力を使うと私たちより人の方が消耗が激しい。


できるだけ食事量や間食で倒れないように、回復するためにも接種することが必要だということを覚えておいてくれ」



ドリップを始めたまま話を続ける紅闇に翔太は目を丸くする。



「あれ、言わなかったっけ?ここの食事は基本的に中津国の食材だが、力を使う事で消耗する回路の修復に良い薬草などを使っている。


あと、力を使うと思うよりも体力も使う。気を付けて食事に多めに回復に良いものを含ませているが、小腹が空いたらできるだけ何か口に入れるようにして」



初めて聞いた情報に驚きながらも、だから異常に茶の回数が多いのかと納得もする。


僕らが倒れないように気を使われていたということだ。



「それでだけど…」



紅闇の言葉に視線を上げる。



「千歳に関してはそれで問題がない。うまくできていたら褒めてやってくれ。


あと贄の結晶については、意識はあるまま結晶に閉じ込められ消滅するまでの間、その贄になった人が穢れをまき散らして己の身体にため込んだ業を…


そうだな、翔太が分かりやすい説明だとその業をエネルギーに変換して取り出し、その結晶と繋いだ陣や道具を動かすのに使うんだが…


一気に業をエネルギーに変えるのが難しいので長期に渡って業を取り出すんだが、業を取り出されるというのは身を切り刻まれるよりも痛いらしい。」



そこで一息つき、コーヒーのドリップが終わったか確認し、翔太の分と自分の分を淹れ渡してくれる。


礼を言い受け取って、いま言われたことから少し逃げたくなっている自分は天音と違いまだまだ感覚が割り切れないと言うか…感覚が人で居られるのがいいことなのか、早く神に近づくのがいいことなのか…


とりあえず自分は贄の結晶にならないように生きようと一人心に誓っていれば、紅闇がため息をつくので思わず首を傾げてしまう。



「天音と蛇の主神の神子の事なんだけれどね。彼等は、そうだよね。


子ども時代に天音は彼を食べて、そのまま彼の力に負けて死んでしまっていて、天音が死んでしまえば取り込まれた彼も動けはしまいから情報も取れない。


それであれば、蛇の主神が荒れたのも何も知らなくてもしょうがない…


 …よくいきなり咎人だと言われ罪を清算せよと呼ばれて動いていたものだと思ってね。」



そこまで話しコーヒーに口を付け視線を庭に逸らし、続きをどう話すか考えているように見える。



「翔太もそうだが、君たちへの説明の足りなさを実感していたんだ。

一度、天音にも蛇の一族と会う前に話をした方がいいかと思うんだが、翔太はどう思う?」


「…天音ちゃんも神子の彼も蛇の主神のお話は喜ぶと思います。


ただ…気になっているのが…


天音ちゃんは神子君と一緒に前回から過ごして来たことで、人よりも神々と感覚値が近しい気が今日話していて感じたんです。


なので、これから人を中津国に還すのに説得などがある場合、あまりに神の考えに寄ってしまうと人と揉めるのではという懸念はあります。」



そう。一番気になるのはそこで。

似た立場の翔太が感じるということは、立場が異なる贄にされた人々にとって同じ人でも天音は受け入れがたい考え方と捉えられる可能性が高い気がしている。


相手の人の気持ちも…。そう気持ちなど考えずに、人だとわかった時点でそのまま強制送還する方法が取れれば問題ないかもしれないが、説得などが出た場合に、同じ業界で活躍する人ですら、あれらは好きではないし、害があるなら贄になって当然という発言や振る舞いは人にとって信用や信頼ではなく、恐怖感を与える気がしてならない。


最初に話した時に、警戒して逃げる人がいる言っていたことを考えると、僕たちまで警戒されて逃げられてしまうと、人で無くなる人や贄の結晶行き、つまり狩られてしまう人が増えるということで…。



前回贄にされた人は蛇の主神の方向転換により芸事の為に、今回の神事で贄にされる人とは比べ物にならないくらい軽い罪しかないと聞いてしまった為、できるのであれば還して真っ当な人生を歩んで欲しいとつい思ってしまう。



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