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見慣れた淡いグレーのタイル調のビルの壁だった窓の外が気づけば昨日のプロジェクションマッピングとも異なるが大正モダンとも言い難い様々なアジアや西洋的な要素も入っていると説明すればいいのか…


シルクロードに繋がるすべての都市を全部混ぜて良い所を日本庭園に合うように抽出して混ぜたらこんな感じだろうというような不思議な空間の中央に20人は入れるのではないかという四阿が見える。



何の戸惑いもなくトコトコと小鳥に続き進んでいく狐耳の幼女に「早く行くぞ?」と急かされ、どうにでもなれ。と目をつむり窓の先へ進めば、渋谷近郊の自宅周辺では大きい公園に行ってもありえないむせ返るような草木の匂いに、改めてここが違う場所であり、現実だと感じさせられる。


遠くに見えた四阿に意識が奪われていたが、窓から出ればそこは庭園で道々に美しい草花が植えられ、それらはまるで子ども時代に読んだ何かの冒険物語にあったような光景ですべてを忘れて見て回りたいと心躍らせかねれば、傍に来た狐耳の幼女に「靴はそれでいいのかえ?」と言われ我に返る。



足元を見ればスリッパを履いている。

頭が服にしか行っておらず、靴を完璧に忘れていた。



「あー、収納してもらった荷物の中に濃い暗い緑色のスニーカー…運動靴があるんだけど出してもらってもいいかな?」



なんだか間抜けだと思いながらも、靴は履き替えたいと頼む。

そして簡単に出してくれたことに安堵し、履き替えている間にスリッパを収納されていてなんだか締まらぬまま、幼女と一緒に四阿に向かっていく。



---



四阿に近づくとそこには遠めにもわかる先ほどの男性ともう一人、ヨーロッパの民族衣装…あれはどこだったか…に似た衣装に身を包んだ長身で暗めの光沢のある銀色の長い髪を緩く編んで結んでいる遠目に見ても若く優し気なイケメンという感じなのにケモミミにしっぽの男性が立っている…。


獣人民族衣装コスの男性か…。

あれハロウィンに居てもイケメンじゃないと辛いものがあるよなと、自分が居た世界がより遠くに行ったと感じ、もう何でも来いとやけくそな気分になりつつ道なりに歩いて行けば、二人の間に小柄…いや彼らと比べれば小柄に見えるだけで女性にしては長身の女性が立っている。


紺色の前髪に前髪以降が淡い青味がかった白銀色の胸下まである緩く巻かれた髪型は何というのだったか?


いろんな呼び名があって思い出せないがあの特徴的は髪型は昨日のスクランブル交差点でゲリラライブを行った久遠とよく比較されるアーティストの天音にそっくりで。


天音の髪型にそっくりだとこんな時にそんなことを思えるだけ、今の職場で働いて10年と色々揉まれ、予定外の事への免疫ができたものだと変なところでしみじみしてきた。


天音は影絵スタイルで本当はAIかもと言われる久遠とは異なり、顔出しで活躍しているので僕でも知っているサブカル好きの女子高生から20代30代の女性に圧倒的に支持されている。


そんな彼女に似せたヘアスタイルは若い天音のファンたちのトレードマークにもなっていて渋谷近郊にもよく出没している。が…


そう、しているし、渋谷によく広告が出ているから僕でも天音の顔を知っているがなんで同じ顔をしてるんだ?


近づくにつれてはっきり見えて来た彼女の顔に、天音も何かおかしな生き物なんだろうかと思わず、そう思わず隣で鼻歌を歌いながら楽しそうに歩いている幼女に目をやってしまう。



いやもうあれも目の錯覚だろう。ああ、花が綺麗だな。最後に花見に行ったのはいつだっけな…と考えていれば四阿に着いてしまい、目の錯覚だと思いたかった者は幻影でない限り錯覚としか思えない者であり、どう…どう考えていいか思いを馳せようとしていれば、きょろきょろと左右を見渡していた幼女が口を開いた。



「鳥の主神に狼の主神。母上様はどこかえ?」

 


ケモミミしっぽ改め狼の主神…狼に主神?と突っ込みどころが多すぎて後回しだと考えている間に狼の主神と思われる若い男性が相変わらずだと苦笑いをしながら幼女に答えた。



「千歳。まずは先に挨拶だろう。

 そなたは狐の次代と言われてはいても今は咎人でもある。

 

 そして我らは鳥と狼というお前の一族と同じ天界の国の国を統べる主神なのだからお前が母と慕う丹霞と同位な存在だ。

 

 お前が礼儀を怠れば、丹霞が恥をかくのだぞ?」

 


そう言われ、ぎこちなく両腕を交差させ不思議な口上を上げる幼女。

その口上と共に表れてた光が二人の主神に降り注ぎ、2人が頷き幼女、千歳がまた声を上げる。



「挨拶をしたのじゃ。母上様はどこかえ?」



思わず手で目を覆う狼の主神。

厭きれた目を向ける鳥の主神が口を開く。



「お前は礼儀をどこで習ったんだ?

 挨拶をしたら上位の者が声をかけるまで口を開かぬのが礼儀であろう。


 丹霞はいったい何をやっているのだ。

 こちらが狐の次代と思って礼を尽くしたのがどこまでも馬鹿馬鹿しくなる。」

 


そんな鳥の主神のお小言に千歳は口を尖らせ



「母上様の悪口を言わないで欲しいのじゃ。

 母上様はいつも挨拶よりもかわいい顔を見せてくれろと仰る。

 

 母上様は誰よりも優しいのじゃ」

 


と、主神で自分よりも上位だと説明されたにも関わらず悪態をついている姿に大丈夫なのかと自分の事でもないのに胃が痛くなってくる翔太に、なんとなくわかると言いたげな視線を向けてくる天音激似の少女。


もう、この際天音でいいんじゃないか?と昨日の夜からの不思議現象に思考がやけくそになったりと飛びっぱなしだと思いながらもできることもなく。


ぶちぶちと主神二人に不平不満を連ねている幼女にいろんな…危機感というか躾って何だろうと、もう本当に帰ってもいいんじゃないかと思い出したあたりで、狼の主神から声がかかった。



「千歳と来たということはあの時、玲瓏に喰われた者か。

ああ、どうなるかと思ったがよかったな。継ぎ目も綺麗になっている。


玲瓏はこういった仕事は本当に丁寧にするな。何はともあれ、魂があのまま消滅せんでよかったわ。」

  


言われた内容に翔太の飛びまくっていた思考が帰ってきた。




「は?」




思わずそう、もう相手が絶対的上位者だとはひしひしと伝わってくるが、喰われたとか継ぎ目とか消滅って何?と目が点を通り越し、思わず食い入るように狼の主神を見入ってしまう。


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