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「なんだ。どうした?」
蘇芳と呼ばれた昨日の男性は何やら作業していたのか腕まくりをした職人風の服を着て、そう口にしながら奥から出て来てテーブルに向かって進んでくる。
千歳は緊張でいっぱいなのか椅子の上に立ちあがり、目を見開きしっぽと耳を立て硬直させたまま彼が傍に来るのを待っている。
祈る様に見ている天音と、いざという時にすぐに動ける様にか何やら先ほど作業台に乗っていた道具と似たようなものを紅闇は手に乗せている。
彼がテーブルの傍に来て千歳に気づくと
「ああ、昨日のおひいさんかい。何だい、何か用かい?」
その言葉に千歳はしっぽをぶわっと膨らませたかと思うと
「昨日は本当にすまなかったのじゃ!
妾は勉強不足過ぎるのじゃ。嫌な思いをさせて本当にすまなかったのじゃ」
と一気に言い、男性に頭を振りかぶる勢いで下げた。
余りのことに目を丸くした蘇芳と少女だったが、どちらからともなく笑い始める。
「あーいいって昨日言っただろう。
わざわざ謝りに来てくれたのか?混じり者に謝るなんて大丈夫なのかい?」
「妾が悪いことをしたのに相手が混じり者だからと謝って悪い理由にはならないのじゃ!」
そう言って頭をまた振りかぶる様に上げた千歳の頭をクシャっと乱暴に撫で「反省出来て偉い偉い」と笑いながら撫でる蘇芳に「頭がくしゃくしゃになってしまうのじゃ」と言い返しながらもなんだかんだそう言われ頭を撫でられ嬉しそうな顔をしている千歳がいる。
「狐さんは律儀なんですね」
そう少女が声を掛けると紅闇も息を吐き出し「付き合ってくれてありがとう」と言い、昨日と同じものを注文している、紅闇に促され翔太はコーヒーを千歳は安心したのか昨日と同じようにまたメニューに張り付き、天音とどれがいいか注文を選んでいる。
「ああ、杏。
おひいさんも嬢ちゃんも昨日パフェを食べてただろう。
今日は仕入れで珍しいのが入ったんじゃなかったのか?」
そう言い千歳に軽く手を振り、蘇芳は奥に戻っていく。
「そうでした!
今日は空津国の栗が入ってきているんです。
モンブランていうんですけど、栗を甘く煮たものをクリームにしておいしいんですよ」
その言葉に目が輝き、2人はそれで!と即答している。
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この後、思い切りモンブランを食べ、謝って気が抜けて眠ってしまった千歳を紅闇が抱き翔太たちに先に出るようにいい、「ありがとう。また来るね」と挨拶し宿に帰る。
既に夕方だが中津国と異なりここは日が長く、まだまだ夕焼けには遠い時間のようだ。
「ああ、天音。さっき翔太には話したんだけどね」
千歳を抱き直しながら、紅闇が天音に声を掛ける。
「夜なんだが、千歳の教育が危ういので今は取り急ぎそちらを優先したい。ここはいろんな国のものが居るから、今回は彼が気が良い者だったから事なきに済んだが他の者の場合どうなるかわからない。」
そこまで言ってため息をつく。
「何かあってからでは遅いからね。
夜は天音と翔太で情報共有と意識のすり合わせをしてもらい、朝餉の後に駐屯場に行く前の翔太と私が確認と認識のすり合わせをして行こうと思うんだ。
千歳が居ると蛇の主神の話がしにくいからできれば翔太と話している時間は天音は千歳の相手をして貰えないだろうか。
散々下の姉の白妙に怒られてもなかなか治らなかったのが、たった2日天音と居ただけで…こんな風に自分の非を認めて謝れたり、妥協して順序を追って考えられるようになるなんて本当に驚きでね。」
少し遠い目をしながら話していた紅闇は千歳を改めて見て、それから天音に視線を向け続けた。
「多分、蛇の主神の子と天音の関係と自分と翔太を照らし合わせて考えられるようになったんだろうね。
できるならこの期間中に少しでも千歳の成長を促したいんだ。
手間だと思うがお願いできないだろうか?」
紅闇の言葉に天音は「全然手間じゃないですよ」と答え
「翔太さんもいいですか?私が千歳ちゃんを愛でている間に難しい話を聞いてまとめてもらうことになっちゃうんですけど…」
天音の言葉に愛でているという言葉でいいのかとは思うが、自分には幼児の相手より小難しい話を纏めている方が合っているだろう。
「いや、適材適所で頑張ろう。僕は全然まだ力が使えない訳だし
情報を整理するぐらい頑張るよ。もしつらくなったら相談てことでどうかな?」
そういえば満面の笑みで頷いてくれる。天音が子守が好きなタイプで揉めずに済んでよかったともこの流れでは思ってしまう。
なんだかんだと言いながら歩いて居ればあっという間に宿に着く。
「じゃあ、今日は戻ったらそのまま2人は2階で寛いで
明日は同じくらいの時間に下で待ってるよ」
宿に戻り、そう紅闇に言われ彼もそのまま自分たちの部屋へと向かっていく。
天音と部屋に戻りながらこの後どうするか聞こうと思えば、会ってから初めて見るような深刻な表情で天音が翔太に訴えた。
「翔太さん。夜ごはんと打ち合わせの前にお風呂とか済ませちゃいませんか?
朝からさすがに食べ過ぎたみたいで、おなかがいっぱいでボーっとしてるので目を覚ましたいかなって…夜ごはんもおいしく頂きたいし…」
内容に思わず翔太は吹き出し、笑い出してしまう。
朝から確かにすごい数のケーキや菓子を食べ、少し前までモンブランのパフェをがっつり食べていたらそれは眠気も襲ってくるだろう。
余りに笑う翔太に天音が怒りながら「笑い過ぎです」と言う姿により笑いが込み上げてくる。
「わかった。じゃあ、1時間後ぐらいでいい?部屋に戻ったら時計を見て1時間後にここで」
そう言えば頷いて、顔を赤くして天音が「私だってさすがに食べ過ぎたって思ってるんです」と小声で言って部屋に入って行った。
その言葉にまた笑いが込み上げて来るが、ここで笑ったら後が大変だろうと笑うのを我慢して翔太も部屋に戻り、ざっと風呂に入ってしまう。




