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「思ったより問題なく進みそうでよかったね」
そういい口笛でも吹きそうなぐらいご機嫌な様子で紅闇が氷河に声を掛けている。
そんな紅闇に若干呆れながらも「このまま穏便に進むといいな」と氷河も返している。
千歳は紅闇の背から顔を出し、天音と何やらアイコンタクトで話しているが全くわからないので、翔太は来た道とは異なる道を進み、門までに至る景色を眺めている。
遠くで狼の一族の者が訓練をしているのか砂吹雪と風と…雪だろうか?
とんでもないスピードで走り回るケモミミの集団を襲う異常気象という世にもありえない光景が目に入り、視線を前に戻すと千歳と目が合う。
嬉しそうに笑っているので、軽く手を振っておく。
そんな感じで数分歩くと門に着いた。
「ではまた明日。」
そう言って氷河は中に戻っていく。
「疲れたね。帰ろうか」
そう紅闇が改めて言い、宿に向かって歩き出す。
昨日行った商店街に差し掛かる頃になると昨日と同じように様々な者たちが繰り出し、昼前とは違い賑わっている。
大道芸や紙芝居など様々な芸事が披露され華やいでいる中央に差し掛かる頃、千歳が何やら紅闇に話しているのが見える。
紅闇が後ろを振り向き、僕らに道の端に行くよう頭でジェスチャーし彼が先にそちらへ向かっていく。
楽しそうに大道芸を見ていた天音と何があったのだろうと顔を見合わせ、彼を追いかけて行く。
そして追いつけば、彼は千歳を下ろし膝を地に付け彼女と目を合わせて真面目な顔をして話していた。
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「千歳。謝りたいという気持ちはわかった。
だが、謝れば許されるという問題ではないということはわかっているかい?」
そう話す紅闇に何やら問題があったのかと天音と千歳を見つめる。
「わかっておるのじゃ。
でも、妾が間違えたのじゃ。上に立つ者はちゃんと周りを見て間違ったときは正さねばならぬのであろう?
であれば、妾は昨日の間違いをちゃんと詫びなくてはならぬのじゃ…
許してもらえないのも、怒られるのも嫌じゃが…謝りたいのじゃ…」
そう話し俯いてしまった千歳に紅闇がため息をつく。
「顔を上げてよくお聞き。
昨日の男性は蛇と多分妖の混じり者だろう。
千歳は嫌いかもしれぬが、蛇の主神はできるだけ忌子や混じり者を拾って彼らに感謝されている。
だが上位の家の者ほど主神に忌子や混じり者が近づくのを嫌がると聞いた。
彼もあの風貌ではそのように扱われ蛇の主神から隠された者であろう。」
紅闇が目を伏せ、やるせなさそうに続ける。
「狼も今の主神に前回の祭事の前に変わるまで忌子や混じり者はかなりひどい扱いをされていたのは聞いたことがあるだろ?
そして天界から幽津国に落ちた者や空津国に移住した者も多いと聞く。」
そして千歳の目をはっきりと捉え言葉を続けた。
「我が国も他国のことを言えないが上位の者が本来助けねばならなかった者たちだということは忘れてはいけないし、位が下の者だと見下してもならない。
特に千歳。君は色味で確実に狐の最高位の者とわかる。
本来なら安全の為に色変えをしておきたいのだが、そんなことをすれば一族の一部の者が黙っておらずめんどくさいことになる。
昨日の夜も言ったが特に周りに気を付けねばならないよ。
千歳は狐の高位の者として振舞わなくてはならない。
自国と違って色や幼さでの恩恵はなく、枷となることの方が多いだろう。
その上で謝罪をして受け入れてもらえなくても怒ってはならず、相手を責めてもならない。
それができるかい?」
そう問われた千歳は一度唇を噛み締め、下を向く。
そして少しして強い光を宿し、紅闇を見つめ「やるのじゃ」と答える。
「頑張ってできるようになりたいのじゃ。謝りたいのじゃ。
もし、もしもじゃ…
妾が失敗して…しまったら…」
失敗した自分が目に浮かぶのか尻尾を握りしめて涙目になって行く千歳に紅闇はまたため息をつく。
そのため息に千歳は身体を震わせる。
「仕方がないな…ちゃんと頑張るんだよ?駄目だったら私も一緒に謝ってあげよう」
紅闇は翔太と天音に向き直り
「君たち人には本来関係なくて攫われて喰われないように気を付けるようにだけ注意出来たらいいんだけど、私たちと居ることで敵対視されないとは限らない。
今回は大丈夫だと思うけれど、朝二人に渡した飾りがあっただろう?
いざとなったら駐屯場に戻ってそれを見せ氷河を呼び、事情を話して欲しい。
悪いね」
そう言い千歳の手を引き、昨日の店に足を進めていく。
天音を伺えば頷き、彼らを追いかけ足を進める。
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店に着くと奥から「いらっしゃいませー!何名様ですかー?」と少女の声が響いてくる。
「4人なんだけどいいかな?」と紅闇が答えれば、奥から顔を出した少女が「あ!今日も来てくれたんですね!うれしいです!」と本当に嬉しそうに笑っている。
「お好きな席にどうぞー」と言われ、昨日と同じ席に着くと千歳は店に入ってから緊張しているのかきょろきょろ周りを見回している。
「ご注文お決まりですかー?」
注文を聞きに来た少女に注文ではなく、勢い余って「昨日の男はどこなのじゃ!」と声を上げ、紅闇が顔を手で覆っている。
「蘇芳ですかー?ちょっと待ってくださいねー
蘇芳ご指名ですよーーー」
こちらの緊張を気にもせず、少女は奥に向かって大きく声を掛けた。




