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そう言って千歳が目を大きく開けて驚いて天音を見上げている。
天音はそんな千歳に対して、にんまりと擬音が付きそうな笑みを浮かべて「詠えるんです」と答えている。
千歳相手だと天音のキャラクターがものすごく違う気がする。
「こちらではあまり一般的ではないですか?
力の込め方を変えて、ステルス化して…景色と同化して見えづらくなるように…
ああ、あと先ほどは何も考えず詠ってしまいましたが、いつもはもっと力がとても小さくなるように声に力を乗せて文字自体も小さくなるように詠ってるんです。
中津国で普通に詠うと…そのとても怖い思いもするので…」
天音は説明しながらも、最後の言葉で顔を曇らせる。
「…さっき何も考えずに詠ってしまいましたが、あんな風に普通に詠ったらストーカーとか…その熱狂的な信者みたいな人が追いかけて来ちゃうんですよね…
子どもの頃、家で何気なく詠ったら外に聞こえていたみたいで夜に人が忍び込んで来ようとしていて…詩で惑わされてしまって誘拐をしようとする人とかも出ちゃって…」
「それは怖いな」と頷きながら答えている千歳より翔太の方が天音の話に戦慄している。
子どもが軽く詠ったら深夜に人が忍び込もうとして、しかも誘拐目的とか怖すぎるだろうと思わず固まってしまった。
「そうなんです。怖かったんです。
私は翔太さんと違って、彼と同化してしまっているので力を使うこと自体には問題がないのですけど、周りへの影響が怖かったですね。
でも普通に詠っても、ここではみなさん何の変化がなくて本当によかったです。
詠う時の歌詞は影響が余り出ないと思うものでもやっぱり怖いものですね」
「…同化…。
天音は蛇の子の力を使っても具合が悪くならないのかえ…?」
「ええ。その代わり最初はコントロールがおかしくて問題が色々あって表に出る人格を彼に変わってもらってたこともあったんです。」
天音が視線を落とす。
「その…お友達を無意識に詠って魅了してしまったりして問題が起きて怖くなってしまって…。
人と会う時は彼が、家で一人で練習できるときは私がという形で何年か時間をかけて力をコントロールできるまではそんな風にして生活してました。
千歳ちゃんと翔太さんは同化していないので、翔太さんの身体を考えて負荷が軽いものからすごい先生がついてできるから、翔太さんが傷つく可能性が少なくて安心ですね」
そう千歳の手を取って天音が話す。
千歳は天音の言葉を「傷つく可能性が少ない、少ないのじゃな」と口の中で繰り返し少しぼんやりしていたかと思うと、翔太の方に向き直り
「翔太!頑張るのじゃ!
そなたが力を使いこなせるようになったら妾がとっときの守りを綴るのじゃ!
それに、それにあと全部壊せるようなのも綴るのじゃ!」
「千歳ちゃん、強すぎるとここ爆発とかしちゃうんじゃないですか?
明日からの紫暈さんの授業を聞いて翔太さんに良いものがどんなものか学びましょう。
威力が強いものだと人の身だと壊れてしまうものもあるかもしれないです」
そんな天音の言葉にはっとした千歳は「そうじゃな。学ぶのは大事じゃな」と呟いて頷いている。彼女の中で何か納得が行ったのだろう。目が合った天音が含み笑いをしながら頷いている。
ああ、これか。と今日千歳が元気がなかった原因のようにも感じていると3人が部屋に戻ってきた。
「なんだい。千歳がやけにやる気になっているね」
そう言われ満面の笑みで紅闇に「紫暈に習って翔太に良いものをたくさん綴るのじゃ。強すぎるだけではだめじゃとわかったからの。」といい、紅闇が目を丸くし翔太の方に視線を寄越すので天音に視線を向ける。
それで分かったのか、紅闇がよくできましたと言わんばかりに千歳の頭を撫で
「すごいね。千歳は。
一気にそんなところまで気づいたんだね。
そうだね、明日から紫暈から学んで翔太にあった物を考えて強いだけじゃない凄いものを作れるように頑張ろう」
そして紫暈に顔を向けると「紫暈先生お願いします」と頭を下げる。
さすれば千歳も真似をして「紫暈先生お願いするのじゃ」と頭を下げている。
そんな狐の2人に紫暈は笑いながら「こちらこそよろしく」と答えている。
氷河はそんなやり取りを横目で見やりながらも、黙々と翔太たちに近づき先ほど送っていたのとは異なる式と何やら不思議なマーブル模様をした3cmぐらいのボールが入った箱をテーブルの上に置き、「話を進めるぞ」とまだ笑いながらやり取りしている3人を急かしテーブルに来るように促す。
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「さて、氷河が主神たちに式を送って判断を仰いだんだけどね。」
そう紅闇が話を切り出す。
先ほど氷河が送った式は鳥、狼、当事者の天音、いや中の神子が属する蛇の主神たち宛ての物で、蛇の主神から鳥と狼の主神に、天音の腕輪は蛇の主神が自分の物を渡したいと連絡があり、蛇の者に運ばせるので受け取って欲しいと言って来たのでそれが最善だろうと鳥と狼の主神も判断し、数日以内に蛇の高位の者が運んでくると連絡がきたと教えられた。
「え…。そんなすごい物をお借りしてよろしいのでしょうか…?」
困惑する天音にそれが確実に一番いいので受け入れるのがいいと紅闇が話すと、他の2人も頷いている。
「あーただね?
天音には申し訳ないんだけど、蛇の一族の者は主神至上主義でね。
その主神の指示だから最善を払って腕輪を持って来てくれるだろうけど、蛇の主神の奥方は人で色々あったから人に対しての当たりが良くないんだ。
その天音に対してはより…ちょっと…」
「あ、わかりました。
彼を食べちゃったから嫌われてる感じですよね?」
そう天音が言うと少し気まずそうに紅闇が頷く。
「うん。そうなんだ。なので神子に問題が出るような行動は取らないと思うが行動が読めないので、蛇の者が来るまではできるだけ私たち3人の誰かから離れないようにね。」
紫暈も頷き、氷河が「勝手に入って来るほど不作法な者たちではないので前触れはあると思うが気を付けるに越したことはないからな」と補足を伝えてくれる。
「よし。じゃあ今日はもう帰ろうか。
伝達事項も終わったし、残りはそちらの主神方と話が詰まったらこちらにも連絡をくれるかい?」
紅闇がテーブルに近づき、茶わんなどをさっと片付けると、千歳を抱き上げながらそう紫暈と氷河に確認する。
2人は頷き、紫暈は「また明日」と軽く手を振り、氷河は「門まで案内する」と先導してくれる。




