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昼前の気温が上がっていく時間帯にも関わらず、部屋の中はひんやりとしていて部屋の奥には数メートルはある巨大な水晶の柱と美しい水晶や半貴石を中心とした彫刻や金属細工と花で彩られた祭壇があった。
祭壇の中央には鳥の主神が使っていたのとはまた異なる繊細な細工が施された水晶が置かれている。
「すごい綺麗」
天音が思わずと言った感じで感嘆とした言葉を溢す。
「本当に綺麗だよね。これ蛇の一族の細工?」そう聞く紅闇に狼の一族のものが「ああ」と頷く。
「蛇の一族はね。水晶や鉱石の加工にものすごく優れていてね。
詩や音に物語と加工品を共鳴させてとても幻想的な世界を創るのに長けているんだ。」
ついでにという感じで彼は続ける
「狐の一族は詩よりも物綴りの方が多いから古典的な表現を好むし、猿の一族は舞や演奏に凝っていて狐の私には派手に感じるものを演じることが多くてね。
同じように芸事を主軸に置く者たちでもかなり表現が異なるんだ。」
そう紅闇が翔太と天音に説明してくれる。
そんな説明を背に狼の一族の者が、水晶に何やら他の道具を翳している。
水晶の柱が共鳴するように複数の光を発したと思えば、美しい音色を放つ。
「ああ、準備が終わったようだね。先は天音の方がいいだろうね
天音、祭壇の中心にある水晶に手を置いてごらん」
そう言われ天音が祭壇の方に進むと、狼の一族の者が祭壇から降り天音に説明する。
「そのまままっすぐ進み、何も考えず水晶に手を置くように。
光や音が鳴っても驚かず、そのまま光や音が止むまで水晶から手を離さぬようにな」
その言葉に頷き、天音は祭壇に上がっていく。
そして中央にある水晶に手を載せると、先ほどよりも強い様々な光が水晶の柱を走り、装飾自体が楽器として作られているのか、不思議な音色を奏でている。
「すごいね。多才だ。」
紅闇がそう呟くと隣に来ていた狼の一族の者が頷き「さすが蛇の主神の神子だな」と答えている。
蛇の主神の子とはそんなに当たり前に潜在能力が高いと思われるような存在なんだなと思うのと、自分がただの人でしかないことで足手まといになるのではというプレッシャーが一気にかかり、胃が痛くなってきた。
仕事がそれなりにできるようになったと潰されそうなプレッシャーから解放されて数年が経ったのに、久しぶりに感じるこの胃の痛さと若干の不安も混ざった感情に押し潰されそうになる。
音と光が鳴り止み、紅闇が祭壇から降りるように天音に対して言うと、入れ替わりに祭壇に向かう狼の一族の者を眺めていれば千歳が翔太の服を引く。
「翔太朗は増幅の力があったのじゃ。だから蛇がちょうどいいと言って翔太朗を喰らっての。だから多分翔太にも同じように増幅の力があると思うのじゃ。
そうであれば妾が翔太に合う物語を綴るでそれで一気に罪を償おうぞ?」
千歳の言葉に驚き目を丸くしていれば、紅闇が傍に来て千歳の手を引き翔太に祭壇に向かうように声をかける。
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祭壇に向かい近くで水晶を見ると不思議な文様が中にも外にも記されている。
そして花だと思ったものも無機質な細工で出来ているようで、他の細工と同じように中が仄かに光を帯び揺らめいている。
中央まで進み、金属で装飾された美しい30cm程度の水晶に手を乗せる。
電流とも異なる何かが身体の中を走り抜けていく感じがする。
気づけば周りが様々な光を帯び、天音が触れた時とは異なる音が鳴り響いている。
呆気に取られふわふわとした気持ちで周りを見ていれば、少しずつ光は小さくなり消えていく。
頭がついて行かず、少しぼんやりしていると紅闇の声が聞こえる。
「翔太、大丈夫かい?聞こえたら祭壇から降りてこちらに」
振り向けば心配そうな顔をした天音と千歳が祭壇の下まで来ている紅闇の後ろに立っている。
動こうとして少しふらつく自分に驚きながら祭壇を降りれば「よかった」と紅闇が安堵の声を上げる。
「大丈夫か?かなり意識が遠のいて居たようだが、気分は悪くないか?」
そう狼の一族の者に声を掛けられるが、ぼんやりした気はするが気分は悪くないので大丈夫だと伝える。
そんな翔太を見やり、紅闇が狼の一族の者に声をかける。
「近くに休憩できる場所はあるかい?
一度彼を休ませたい。まだ意識がちゃんと戻っていない可能性がある。
この状態でこれ以上進めるのは危険だ」
その言葉に頷き「こっちだ」と声を掛けながら翔太を担ぎ上げて狼の一族の者が歩き出す。
いきなり持ち上げられて驚く翔太に「動かないように」と紅闇も声をかけ、天音と千歳を連れて歩いてくる。
思った以上に自分の状態に問題がありそうなのは分かったが、いったい何が起こっているのか?
そう思っていれば、すぐにまた別の部屋に入りそこには簡易ベッドがあり、翔太はそこに下され「一度横になるように」と声掛けされる。
入口付近に紅闇たちがおり、やはり千歳と天音が心配そうにこちらを見ているが紅闇に止められ部屋の奥には入って来ないでいる。
何やら話しているが声が遠い。千歳が涙目になっているのに紅闇が千歳よりも狼の一族と話すほうを優先しており、天音が千歳を抱き上げようとしている。
これはもしかしたらまずいのかもしれないとぼんやりと頭に浮かぶが身体が思うように動かなくなっていて起き上がるのも難しい。
どうしたものかと視線を動かせば天井に書かれている文様に目が留まった。




