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そう言い中庭に彼は向かって行く。
続こうとすれば「その服で動きづらくなければそのまま靴を履いて玄関で待っていて」と声を掛けられ、彼はそのまま中庭に消えて行った。
翔太は一度顔を洗って気持ちを切り替えたいと、部屋に戻る。
服は動きづらさを感じないのでこのままで問題ないが、内心の方が問題だらけだった。
正直に言うならいま現在、翔太朗という人物に対して特に思い入れもなく、自分の前の人格、前世と言われてもピンと来ていない。
その上であのような話をされると、蛇の主神に同情して居ない自分が居ないとも言えない。
これから先、夢で確認をした上で考えればいい事で多分蛇の主神と対峙することもないことを思えば考えなくてもいいのかも知れないが、贄に使われたという人々とも面識もないので彼がただ悪いと思うのも難しく…。
これから贄にされた人々と対峙するのにこの考えでうまくいくのかなどといった不安が過ぎる。
「問題が根深すぎる上に壮大すぎるだろ…」
この一言に尽きる。
もう今は何も考えずとにかく駐屯場で力の確認をして使える力をどうにかして全力を尽くせるようにするしかないなと顔を洗い、気持ちを切り替え玄関に向かい靴を履いていると、はしゃいだ千歳の声が聞こえてくる。
彼女は彼女で色々…と思ったところで亡骸を抱いていたという話を思い出し、ああもうちょっと今それ思い出したくないなと、頭に手をやり混乱するのを必死で抑える。
そんな翔太に天音が「大丈夫ですか?」と声をかける。
あんまり大丈夫ではないが千歳がこちらを見ているので、大丈夫と笑って答え靴を最後まで履き、千歳が紅闇に手をつながれくるくる踊る様に動いている傍まで歩く。
「準備はいい?」そう聞く紅闇に頷く、そうすると「じゃあ行こうか」と今日は抱っこではなく千歳と手をつないだまま先を進む彼らの後ろから天音とついて行く。
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狼の駐屯場への道は昨日寄った甘味処の前を通る道だったが時間帯が違うからか店もまだ開いていない所もあり、人通りは少ない。
「昨日と雰囲気が全然違いますね」
そう天音が口にすると、「この時間はまだ幽津国の者や混じり者には動きにくい者も多い時間だからね」と紅闇が種族によって強い、弱い時間帯の説明をしてくれる。
「昼前の時間帯は妖の血が入っている者の多くには苦手な時間帯でね。
あまりこの時間は出歩く者がいないんだ。
それに天界の者は役目を持ってここに来ている者が多いから、大体この時間はそれぞれ決められた場所に居るんだよ」
案外人の世界と似ている部分もあるんだなと思っていると、昨日寄った店の少女が手を振っている
「お客さーーーん!また来てくださいねーーー!」
と大きな声を上げているのに紅闇が軽く手を振っている。
「あの子は昨日の事を全然気にしていないんですね」
そういう天音に紅闇が「ありがたいことだね」と答えれば、千歳が無言で少女の姿を見つめている。
そうして甘味処から少し行ったところに狼の駐屯場はあった。
石造りに見える入口で紅闇が見張りの者に要件を話していると遠くからものすごく視線を感じる。
「これってどういう視線なんだろうね」
思わず口をついたが、天音は気にしていないのか「見られるのって緊張しますよねー」とのんびりしており、千歳はきょろきょろと周りを見渡している。
「来たか。主神方からも連絡は来ている。こちらへ」
厳つい顔立ちをした狼の一族だと思われる男性が顔を出し、そう紅闇に告げる。
狼の主神より年齢も上でかなり体格も風格もあるのでこちらが主神だと言われても納得してしまいそうな貫禄がある。
「忙しいところ悪いね。
鳥と狼の主神に願った通り、彼らの能力の検査と使い方と帰還方法について説明と実践をしたいんだ。
あとは私の能力とあまりに違うようだったら、適応した者に手伝って貰えるように依頼を出していたのだけど大丈夫だろうか?」
そう問う紅闇に大柄な狼の者は「ああ、大丈夫だ」と短く答え、顔をこちらを向ける。
「いま鳥の主神から任せれた者もこちらに向かっていると連絡が主神経由で来ている。多分あれが来るだろう。
鳥の者が到着をしてからお互いの紹介をしよう。…どちらが先などがあると五月蝿い者もいるのでな。
まずは先に2人の能力を見る水晶の所に行くがいいか?」
紅闇に視線を向ければ頷くので、翔太と天音も頷く
そして案内されるままに駐屯場の中に入っていく。
駐屯場の中はかなり広く、雰囲気は色とりどりの旗などがはためき、祭やイベントの会場に近い雰囲気がある。
いくつか平屋建ての建物があり、その先には部屋の窓から見えた塔と似た建物があり、思わずあっと声を上げる。
紅闇が視線をくれるので、部屋の窓から見えた塔の話をすれば「ああ」と頷かれ、街の中に5か所ある時計と緊急連絡用の塔だと教えてくれる。
あの鐘が鳴るときは緊急事態であり、鐘が鳴っている方向で問題が起きているから全力でその鐘が鳴っている塔とは違う方向に走るようにと言われ、守りがある街の中でも危険がやはりあるのだなと思う。
そんな話をしながら進めば繊細な細工がされた大きい石造りの平屋に辿り着く。
「ここで確認をするので中に」
そう言われ部屋に入れば、そこには巨大な水晶の柱と装飾で彩られた祭壇があった。




