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「あと割れた翔太朗の魂を修復してくれたのは蛇の主神だから」という補足により混乱するが、そういえば狼の主神が円座でそのようなことを言っていた気がする。
淡々と当たり前のこととして紅闇が話しているが、思っていたよりも大きい規模に頭がくらくらしてくる。
「翔太もコーヒー飲まない?」と軽く言い茶箪笥の方へ進んでいく。
確かに何か飲み物は欲しい。がしかし…祭事とはその規模なのかと考えていた何倍も大きいスケールに改めて恐怖心が湧いてくる。
そんな翔太の気持ちを知ってか知らずか、放し飼いでいいと言われ昨日飛んで行ったままだった梟が中庭から翔太の方へ飛んできて肩に止まる。
「ああ、彼も居たんだったね。
彼は鳥の主神の分身というか、依り代に鳥の主神が力を込めた存在だね。
千歳は鳥の一族の小さき者くらいで伝言役だと思ってるみたいだけど、異なってかなり強い力を持っているからいざという時は頼っていいと思うよ
ごめんね。狐からも出したいんだけど、いまは母上がこの結界維持に取られているから私が千歳に何かあった時の為に力の温存と残りの上位2名は他の国と問題を起こさないように血の気の多い者や幽津国の者と揉めたときの制御のために力を溜めておかないとならず大きく力を使えないんだ。
千歳も一度落ちかけているから、物語を綴る分には問題がなくてもその他で力を使わすのは危なくてね」
本当に申し訳なさそうにコーヒーを持ち、テーブルに戻ってくる。
「あともう少しもすれば狼の駐屯場に行っても邪魔にならぬから、コーヒーを飲んだら向かおうと思う。
そうだな。その衣装が狐の上層部の許しがなければ着れぬ布で出来ているので、後ろ盾が狐だとわかるし、鳥と狼の主神がくれた守りで問題はないと思うがこれを身に着けているといい」
席に戻り、翔太へコーヒーと一緒に紅闇がつけている耳飾りに近い留め具が付いた首飾りを渡してくれる。
「それを持っていれば、私の関係者だとわかる。
先ほども言ったが私がもし対応できない場合、それを見せて白妙の居場所を狐の者に聞けば案内してくれるだろう。
ああ、その際に耳にこの金具と似た耳飾りで白と金、または赤に茶金の者は避けるといい。それらは母上や上の姉の綾音や千歳を崇める者の象徴なので、白妙の元へ向かうのを邪魔するかもしれないので気を付けてほしい」
そう言われ、改めて飾りを確認する。
白銀の金属に七宝焼きのような光沢で深い赤と橙よりも茶に見える色と赤茶で模様があり、彼の瞳を現しているようにも見える。
「ありがとうございます」と礼を言えば「いい、いい」と軽く手を振られ紅闇はコーヒーに口を付けている。自分も喉がカラカラなことに気づきコーヒーに手を伸ばす。
中庭から千歳と天音の笑い声が聞こえてくる。
先ほどからそうだったのか、紅闇の話が衝撃的過ぎて周りの音が遠のいていた気がする。
そして声に引かれて紅闇が中庭に視線を向ける。
「千歳はね、本当に素直でいい子なんだよ。
前回のことがなければ順当にもっと成長をしているはずだったんだけどね。
かといって、私の立場で物を考えるとただ蛇の主神が悪いとも思えなくて。」
彼女たちの笑い声を遠くに聞きながら、紅闇は視線を遠くへ向ける
「君にとっては不幸な出来事だったと思う。
けれどね。昔から蛇の主神の神子の話は有名だったんだ。
彼の奥方が天界に来れなく、そのまま中津国で子を産むしかなかったことや、それで主神が笑えなくなったことも神子が天界に来るのを待っているのも国を越えて上位者は皆知っていて、そのことを憐れむ者は多くてね。
…天界では祭事とは異なる各国の上位者の宴で歌う姿に同じ詩詠いとして憧れを持っていた私からすると、その笑みを奪った者を恨む蛇の一族の気持ちもわからなくもないんだ。」
そう言葉を切って、視線をテーブルの上のコーヒーカップに落とす。
「…番を喪っても一族から次の主神を出せる訳でもなく、番を追うことも許されない、子も番が天に上がる前に産まれてしまったから手元に置くことも出来なくて…
笑うことすらできなくなっていた彼に対して、蛇の一族の者がどこまでも心を砕いていて…
幼い頃に私は蛇の主神に遊んで頂いたことがあってね。
あの頃はまだ番がいらした頃でとても幸せそうに笑われていたんだ。」
昔を思い出し少し笑ったがそのまま表情を曇らせ続けた。
「…蛇の主神はとても美しくよく笑う方だったから花の美しさなどで讃えられることが多かったんだが、番を失われて次に会った時には表情を失われて美しすぎる彫刻のようだと言われるようになってね。
それが前回の祭事の前の宴で…
そろそろ子が上がれるのではと言われていたのもあってうっすら笑われていたんだ。
それで皆、神子が上がれば、また昔のように彼が朗らかに笑い詠ってくれるだろうと期待を込めて話題に上がっていたんだよ。
それが…人に狩られて奪われることになって…」
紅闇はきつく目を閉じ、そして心の吐露のように呟いた。
「…そう。だから彼が怒りに我を忘れたとして何が悪いのかと思ってしまう部分もある。」
そう話した紅闇の表情は憂いに満ちていて、心からそう思っているのがよくわかる。
そのまま翔太もなんと返していいのかわからず、コーヒーに視線を落とす。
確かに夢に出て来た蛇の主神はとても美しく静かだったが静かすぎて怖いくらいだったと夢で見たときは思わなかったのにいま思い出すと、表情の抜けた美しい姿が恐ろしいと感じる。
「ああ、ごめん。湿っぽくなってしまったね。
とりあえず、これで一応疑問は解けたかな?
まだ謎だらけだと思うけど、そろそろ千歳たちに声をかけて駐屯場へ向かおうか
必要ならまた時間を取るから気軽に言って欲しい。そのぐらいしかできないからね」




