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待って欲しいとも声をかける間もなく目が覚めれば、そこは昨日来た宿の部屋で窓から朝日が差し込んでいる。
何とも言えない気分のまま身体を起こし、見た夢について考える。
不思議な夢は御伽噺のようにまとめられ、子どもらが話す度に景色が浮かんでいた。
内容としてはあれは蛇の主神と天音の中にいるその子どもと天音の前回の関係者だろう。
時代背景的には400年前と鳥の主神が話していたから、日出づる国は日本でその時代だと江戸時代か…。
あと蛇の主神が居たのが仏蘭西って言ってたか…。
フランスって400年前何があったんだったか…
その辺は昨日天音も話していなかったから、天音の中にいる神子が知らないから情報がないのか…。
昨日まで、目が覚めればその日の仕事のTODOを思い出し、会社に向かう間に頭を整理していたが…ここまで考える内容が変わる日が来るとは思わなかったと思わず乾いた笑いが出る。
何の連絡をすることもなく、こちらに来てしまって…何日も無断欠勤が続けばプロジェクトから外されるだろうというか、帰れた時に席が残っているのか…。
それ以前に、部屋に誰かが行くことになったら部屋には何もなく、マンションの入口の防犯カメラには帰ってきた時の映像しか残っていない状態で…
失踪や誘拐事件扱いになるんじゃないのか…と嫌な考えが頭を過った。
が、しかしもうどうすることもできないもので、いざいま連絡ができたとしてなんと説明するのか…。現実的なことが頭に浮かぶが帰れたら考えようと意識を変える。
軽く身支度を済ませ、部屋を出て下を覗くとまだ紅闇たちも出てきていないようなので茶箪笥からコーヒーを取り出す。
炒った豆をその場で挽けるようになっていて、本当に至れり尽くせりの環境だと手持ちのポットから湯を注ぐ。
ぼんやりと先ほどの考えと夢で見た内容を思い出しながら、抽出されるコーヒーを眺める。
そうしていれば、カチャというドアが開く音がして天音が部屋から出てくる。
「おはようございます。早いですね。まだ6時前ですよ」
天音はよく眠れたのか元気そうに声をかけてくる。
「おはよう。天音ちゃん時間わかるの?」
「え、はい。あ、翔太さん窓の外を見ていないですか?」
そう彼女は言って、自分の部屋を振り返る。
頷く翔太に天音は説明を続ける。
「部屋に入って突き当りに窓がありませんか?
その窓の先に塔があるんですけど、上の方に人が登れるような空間があって、その上の部分に時計があるんです。
夜だとライトアップしてて綺麗でしたよ」
部屋の確認はしたが、外まで見ていなかったことに気づき、ちょっと見てくると声をかけて部屋に戻る。
部屋に戻り、言われた窓の外を見れば塔と櫓が混ざったような建物が確かに立っていて、不思議な形の鐘のような物が付いており、その上に時計がある。
昨日歩いていた時には見えなかったから、この部屋から見えている景色と入口は本当は遠いのかもしれないなと、紅闇に確認しておこうと頭の片隅にメモを取る。
部屋を出て戻れば、天音がケーキを既に食べていた。
「朝からケーキを食べられる若さっていいな」
思わず本音が口から出た。そんな翔太に笑いながら天音が
「若さですかね?でもここのケーキってすごくおいしいんですよ。
絶対色々食べておかないとあとで後悔しそうだから全種類制覇したくて」
そんな言い分に翔太も笑いながらドリップしていたコーヒーを取りに行く。
「あ、そうだ。天音ちゃん。神子君にいろいろ聞いて調べたって言ってたけど400年前のフランスについて調べたりした?」
「え、なんですか?それ。
彼の話にフランスの話とかなかったですよ。えっと、400年前だと18世紀ですよね?
18世紀って…マリーアントワネットくらいしか思いつかないです…
世界史苦手だったんですよね。」
「そっか。昨日鳥の主神が話してた話と夢に昨日出てきたことを整理してて、神子君が食べられたことで蛇の主神がすごく怒っちゃって祭事の内容を変えた話が出てきてね。
鳥の主神の話だと、蛇の主神はフランスに居たと言ってたから、何があったっけ?と思ったけど食べられた後の話だから知らないよね。
18世紀だとマリーアントワネットか…そうなると、フランス革命とかナポレオンにあとはその前に戦争があったっけ?
その辺は17世紀だったかが僕も記憶があやふやだな。」
「それじゃあ、夢の事も紅闇さんに聞いていいって言ってたので聞いてみませんか?
私も…それに彼も知りたいみたいなので…
他にどんな話が出たか聞いてもいいですか?」
「えっと、あとはどうして神子くんが狩られちゃったかの理由とかかな…その…」
「ああ、前の私が病気で何をしても治らなくて、それでもう神頼みというかおとぎ話頼りというか…
治すために蛇の神の血を引く者を倒して、その血肉を食せばみたいな話があって、それでお父さんがもうそれしかないっておじいちゃんに泣きついて…
おじいちゃんを慕っていた人たちが山狩りをして…みたいなのがあったみたいです。
彼はその前に里で飢饉が起きてて、それの対応でかなり力を使って身体や神力を癒すために寝ていた所を一気に襲われたみたいで、抗う間もなくその…という感じで…」
「そうだったんだね…なんか朝からごめんね。」
「いえいえ!いまはお互いにいろいろ話して未来を一緒に過ごしたいって言えてるので、蛇の主神様には本当に申し訳ないのですけど、彼と出会えていま一緒に居れて幸せだと思っているので、その、あの…そんな感じなんです」
そう言い照れている天音に「のろけご馳走様」と言えば、真っ赤な顔をしてケーキを帆奪っている。
前回を考えれば不仲や不穏な関係になってもおかしくないのに、そう言い合えているならよかったのかと考え、話の続きをしようとすれば下から千歳の呼び声が聞こえる。
「翔太ー!天音ー!起きるのじゃ!朝なのじゃ!朝餉の時間ぞ!!!」




