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「は?」


思わず間抜けな声が出てしまう。

自分が見ていることが現実味がなくもう一度目を閉じて開く。


が、何も変わらずあんなに熱狂していた人々も目の前に広がっていたプロジェクションマッピングもすべて消えている。



「まずい。疲れが限界を突破したかも…」



最近寝不足だったし、昼ではないが白昼夢を見ていたのか…、それとも人々が消えたことまでプロジェクションマッピングかと現実逃避しそうになったが、考え直しても人があんなに消えるより寝不足と過労で幻覚を見ている方が現実的にありそうだと、翔太はとりあえず不可思議なことにいま気を取られるより、現実的なことを考えようと自分を落ち着ける。


そう。

まず急ぎで元々自分がやろうと思っていた仕事を終わらせ、明日は午前休を取って一度病院に…


いや、明日も午前は外せないミーティングがあるなど考えながら、毎年ハロウィンは道路に規制が入るからタクシーで帰るのは難しいので電車が走っているうちに終わらせようと仕事をこなしていく。




そんな翔太にはお構いなく、他のビルなどから翔太と同じように見物していた人々が撮った映像やライブカメラの映像がSNSに拡散され世界中で大騒ぎになっていた。



スクランブル交差点や渋谷駅付近は立ち入り禁止状態になり、たった数十分で夥しい数の警察官が詰めかけ、ハロウィンに集まった人々を原宿や恵比寿、代官山方面に誘導しているという様々なことが起きる渋谷でも過去に起きたことがないような緊急事態状態になり緊迫したムードに包まれていた。


最初はお祭り騒ぎだったハロウィンに集まった人々も徐々に混乱よりも恐れが広がりみんな大人しく移動し家に帰っていくという、あの騒動こそがすべてという勢いの渋谷のハロウィンの夜にありえないような静けさが人々により現実に起きたこととしての実感を強くさせ、恐怖が募っていく。


そして渋谷だけでなく、世界中で同じように行われていたゲリラライブの開催地ではそれぞれで厳重な警戒態勢が引かれいく。


その様子が国ごとに異なっていても、あまりの異常さに様々な専門家や政府関係者、ゴシップ好きな配信者や陰謀論者がライブ配信を行い、思い思いに好き勝手なことを話しより混沌とした状態を引き起こすが、警察や特殊部隊が検証しても人々がどこに消えたのかが全くつかめない状態が続き、パニックを抑えるために外出禁止令が出るやもといった予測まで飛び交うように朝方にはなっていた。





そんな世界の混乱などなかったかのように自分の仕事に没頭し、気が付けばAM3:30とPCの時間を確認し、思わず頭を抱える人がここにいた。



「あー…やばいな…これ。寝る時間あるかな…」



最悪シャワーを浴びてとんぼ返りだが、できたら少しでも寝たいし、朝からの予定を考えるとここでこのまま寝るのはまずい。


本当にわずかな睡眠時間と着替えを求めて焦って荷物をまとめ帰り支度をし、渋滞していないエレベータで一気に下まで降りるが、タクシーどころか人もほとんどおらず閑散としている。


…歩道橋を上がり近場の道を見ても交通整備の余韻かまだ規制が入っているのか、ここら辺まで去年は規制されていなかったのにと残念に思いながら、このままタクシーが捕まらなければ歩いて帰るしかないかとある意味腹を括って歩道橋を降りていく。


しかし悪いことが重なるときは重なるもので、疲れ目で視界が霞み階段の境目を見誤り、そのまま階段を踏み外し落下してしまう。



マジかよ。嘘だろ?勘弁してくれよ。

データを全部クラウドに置いたか?ヤバい置き忘れたのがあったかもしれない。

これでPCが壊れたらやり直しで寝る時間なんてなくなるじゃないか。と、足を踏み外した自分に対して激しく苛立ちながら受け身を取るにもPCを庇い落ちていく自分に”社畜とは…”と思えるだけ余裕あるんだな。と、どうでもいいことが思い浮かべていれば強い衝撃と痛みで気が遠のいた…。




---




11月初めの夜明けにはまだ早い時刻の気温はジャケットを着ずに飛び出した身体にはつらく、痛みと寒さとそして何やら体の上の温かい重みに意識が戻ってくる。



痛みを感じ階段から落ちたことを思い出し、一気に起きて神経や筋肉を傷めないように少しずつ目を開けると目の前になぜか白い三角の耳と老人の白髪とも違う白い髪が視界を奪う。



そう。目が覚めたはずなのに夢かと思うような白髪に狐の耳を付けた幼児?幼児だよな?が自分の上に転がっている。


人間イレギュラーなことが起きすぎると思考が麻痺するというか、状況が理解できないということは往々にしてあることで。


ただ何が起きているのか視線だけを動かし思わず観察してしまう。



和服に白い髪と耳にしっぽと今年のハロウィンは和風獣人が流行っていたのかとあらぬことを考えていれば幼児は体勢を変えて、斜め上にある液晶ビジョンを興味深げに見ている瞳も見えた。


が、目の色が金色なんだが、こんな子どもにカラコンを付けさせる親はいったい何を考えてるんだ?


いや、それよりどうしてこんな時間に幼児を置き去りにしてるんだ?ハロウィンではぐれたのか?と、階段から落ちた痛みと異常事態に混乱した頭が現実に戻ってきて、どうにか身体を起こそうとすると狐耳の幼女が「やっと目が覚めたのかえ?遅いのじゃ」と話しかけてきた。



幼女が普通に自分に話しかけていることにも耳が一緒に動いているどころかしっぽまで動いていて驚き、思わずしっぽを触ろうとしてしまい「話を聞くのじゃ!」と、手を叩けれ「痛い」と呆然とする翔太を置き去りにどんどん喋り続ける狐耳の幼女に一瞬負けそうになるも気を取り直し、大人としてできることをせねばと話を遮り、問うた僕は間違ってないと思う。



「おかあさんに迎えに来てもらえるように警察に連絡するから名前を教えてもらえるかな?」



「母上様は天界におるぞ?何を言っておるのじゃ?」と小首を傾げて不思議そうにする狐耳の幼女にどうしていいか考える間もなく



「それよりもようやっと話せたのじゃ。もっと他の話をするのじゃ」と翔太の肩に手を置き頭を抱え込んで登ろうとされ焦り、距離を置こうとするが落ちて打った場所が痛み、体勢を半分崩しかけてしまった。



幼女は眉間にしわを寄せ「痛むのかえ?」と翔太に手を当てて、もう痛みで抵抗するだけの気力もない翔太を気にすることもなく、何やら紙を取り出し書きつけると文字が浮き光りだしていく。


その光が消えていくのと一緒に痛みが消えていく光景と状態に翔太は「また幻覚を見ているのかも」と、こんな幼女が朝方に居るのも痛みがいきなり消えるのも、多分もう本当に疲れすぎて脳がバグってるかなんかおかしくなって歩きながら夢を見てるんだと自分に言い聞かせ現実逃避をしたまま幼女を振り切り、家に向けて歩き出した。


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