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その歌声、歌詞に合わせて紙芝居の絵が映像のように浮かび上がる風景に翔太は唖然とする。



「これが大体祭事で行われている芸事の簡易的なものだね。

物綴りが作った物語を彩燈徒が紙芝居に書き、奏燈徒が奏でた音に合わせて詩詠いが物綴りが綴った言の葉を詠い紡ぐ。

 

力が弱い者たちでもこのようにして連携して一つの物語で魅せることができるんだ。」



「これで力が弱いんですか?」



そう聞く翔太に紅闇ではなく千歳が答える。



「弱いのじゃ。これだけの人数が居て魅せられる範囲も物語も少ないから、とてもとても力が弱いのじゃ。妾が物語を綴って兄様が詠えばこの何百倍もすごいのじゃ。


兄様、やって見せようぞ!」



ご機嫌な様子で千歳が紅闇から飛び降りそう言えば、彼は笑って



「そうだね。千歳が綴って私が詠えばこの街すべてを魅せることは可能だろうね。」



そうであろう。と自信満々で頷く千歳に紅闇は続きを聞かせる。



「ただ、ここで千歳が書いた物語をいきなり詠えるほど私は迂闊ではないよ?

ここは争いが禁止だと鳥と狼の主神から聞いていなかったかい?


どれだけの者を巻き込むかわからない場所でいきなり強い力を使えば問題になることも多い。

遊び半分でそのような提案をしてはいけないよ」


と注意する。その注意に「あ」と注意されたことを完全に忘れた顔をしている千歳に紅闇がなぜ選ばれ、甘い者でもないと鳥の主神が言っていた理由がよく分かった気がした。


彼は相手を肯定しながら育てるのがとてもうまい者なんだと思う。

もし同じことを鳥の主神が言えば反発していたであろう千歳が素直に謝り、気を付けると口にしているので迂闊なところはあっても素直な気質だと思われる千歳との相性も良いのだろう。


そんなことを思いながら、繰り返し始まった先ほどのわらべ歌の紙芝居の上映を再度見る。



「これは人が祭事の話をしているんですか?」



そう天音が聞けば「そうそう」と紅闇が答え、千歳とそっくりの耳飾りを揺らしながら答える。



「この歌は何百年か前にどこの国だったかな。中津国のどこかの国で流行ったんだよね。


多分、そんなに力が強くない者が作った詩を人が覚えて歌っていたのを誰かがこちらに持ってきたのだろうね。

たまにこの詩を詠っているのを聞くのでね。


中津国で歌われていた物と歌詞が少し異なって具体的になっているから、祭事のイメージを人の立場から見るとこうみたいだよっていうイメージが付くかなと思ったんだ」



曲調や子どもが歌っているので全体的にかわいい印象なのに内容が怖いのは日本の昔の童謡とも共通するというか、海外の童話や神話などもそういう怖さがあるが…



「あの、もしかして中津国にある神話に童話や童謡の多くは祭事で作られたものなのでしょうか…?」



そんな翔太の質問に紅闇はにんまりと音が付きそうな笑顔を浮かべ



「翔太は感がいいね。そうだね。すべてではないけど祭事で作られたものやそれらに影響された人が作った物は結構あると思うよ。」



どこまで神々の影響が入っているのだろう。

当たり前だと思っていた常識とは異なる世界線にうすら寒いものを感じる。


久遠がそういう存在だったのだから…そこまで思い今まで質問をしていないことに気づいた。



「あ、久遠。あの渋谷で人を取り込んだ人が犯人なんですか?」


「多分。だがまだ確定ではないんだ。


あの規模の召喚を単独で行うにはかなり高位の神か妖の力が必要になる。

今のところ捉えられていないので何とも言えないが、操られて媒体にされていた可能性や…


誰かが祭事の為に乗っ取った可能性も否めないからね。」



「乗っ取った…?」



「ああ、ちょっと待って。この話は帰ってからにしよう。

誰が聞いているかわからないからね。


帰る前に少し店の中を見ていこう。それでいいかい?」



頷く翔太から視線を移し、紅闇は先に行っている千歳に声をかける。



「千歳、この辺でひと休憩しよう。彼らが食せる甘味処はないかい?」



先ほど自分の方がすごいと言って張り切り、紅闇から飛び降りた千歳は今は天音と手を繋ぎ、出店を見て回っていたがその言葉に振り向きくるんと商店街を見渡す。



「兄様、あそこがいいのじゃ」



少し先に「氷」の垂れ幕を垂らしたお店を指さす。



「そうかい。じゃあ、あそこに行こうか」



そう言って歩き出す紅闇に小走りで走り寄る千歳と焦り走ってくる天音と合流し、少し先の店に入っていく。



「4名なんだけど、席は空いてる?」



紅闇がそう聞けば、奥から「お好きな席にどうぞー」と返事が返ってきた。



「じゃあ、外が見える席に行こうか。


注文は…そうだね。2人はこの文字読めるかい?」



壁に貼られたメニューの文字を指さす紅闇にその言葉に頷く2人。

外が見える4人掛けの席に座り、テーブルにあったメニューに千歳がすぐに飛びついている。



「それは良かった。ここは冷やし菓子と軽食が中心の店みたいだね。

ああ、そうか。こちらの貨幣も渡さないといけないね。


今日は気にせず好きなものを…

あ、でも帰ったら夕食が出るから軽く程度にしておくといいと思うよ」


「妾はこのいちごぱふぇというものにするのじゃ。塔のようですごいのじゃ。

あ、でもこっちのちょこれーとぱふぇというのも気になるのじゃ…」



昔のファミレスのメニューのような紙に似た素材に写真と名前と値段が書いてある。

昔ながらの喫茶店のようなメニュー感でおかしなものがないことに安堵していると千歳が目を輝かせて宣言したかと思えば、メニューをにらみつけるようにしていちごパフェとチョコレートパフェで悩み始めている。


そんな千歳に「では半分こしますか?」と天音は声をかけている。

いい感じだ。そのまま懐柔して行って欲しい。などと思っていれば、店の店員が笑いながら近づいてきた。



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