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部屋に戻りクローゼットを開ければ、何着も着替えが入っている。

いつの間に、どうやってなどといったことは考えるだけ無駄な気がするので、そのままいま出かけるのに動きやすそうな服を選ぶ。


暑くなると言っていたので半袖の麻のような薄い生地のシャツに黒に近い細身の袴のような形の服に…


引き出しを開けて確認すると下着やタンクトップとTシャツのようなものも入っていて触れると生地が冷たい。


下着も変えていった方が良いのかもしれないとそれらを手に取り、寒かった時や日差しが強すぎた時の為に一応薄い生地の羽織を手に取る。


「あ、さっき貰った組紐どこにつけよう…」


少し悩み、襟から通し胸元で軽く結ぶ。


靴はそのままでいいかと思ったが、クローゼットの下に数足編み上げのブーツが置いてあり、手に取ると驚くほど軽い上に通気がよくなっているのでそちらも手に持つ。



「すごいな。夏場に一式欲しいなこれは」



そう思わず口にしてしまうほど着替えた衣装はさらりと着心地がいい。

これで汗にも強く、この涼しさが続くのなら本当に真夏用に欲しいとそんなことを考えながら部屋の外に出ると、今度は天音より先に出て来れたようだ。



「女の子の着替えは長いかな…」



そう一人呟き、先ほど彼女が見ていた茶箪笥を確認してみる。

そうすると茶箪笥の中には有名パティスリーも驚きの品ぞろえのケーキや菓子類が所狭しと並んでいる。


これは確かに目を輝かせるのも無理はないと思っていれば、ドアが開く音がする。


振り向くと天音が白字に紺の襟にシルバーの刺繡あり、スカートのように見える部分にはカキツバタか菖蒲が描かれた両膝あたりからサイドに切り込みの入った浴衣のようでありながら、袖がなくアームカバーになっている衣装に足元は動きやすいようにスパッツを履き、自分と同じような編み上げブーツを持って立っていた。



「よく似合っているね」そう声をかければ恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにほほ笑む



「すごくたくさんあって迷ってしまって。遅くなってごめんなさい。」



いえいえと答え、そのまま階段を下に降りようとすれば千歳も起きて来たのか紅闇と一緒におり、彼の膝に座って茶菓子を食べている。



「千歳ちゃん起きたんですね」



そう天音が呟くと聞こえたのか紅闇が階段を見上げ声をかける。



「ああ、よかった。2人とも良く似合っているね。

サイズに問題はなさそうかい?」



そう話す紅闇に礼をいい、サイズはちょうどいいと伝える。



「千歳も今さっき起きてきた所だよ。

これから外を見に行くと言ったら一緒に行くというのでね


ちょうどいいから千歳に翔太たち人が食べられるものがある店を探して欲しいと今話していたんだ。


ね。千歳できるかい?」



「兄様。大丈夫なのじゃ。

翔太朗たちが好んで食べていたものは覚えておるから、ちゃんと行けるお店を見つけるのじゃ」



そう言ってどや顔をする千歳の頭を撫で「千歳はすごいね」とやる気を出させている紅闇にそう動かすのかと感心していれば、隣でどや顔の千歳を見て天音が口に手を当て顔を横を向き「かわいいかわいい」と小さい声で悶えている。


何だろう。早い段階で千歳が天音を受け入れてくれると自分的にすごく楽になる気がするので全力で取り持ちたいと思っていれば、紅闇に「先に靴を履いていて」と声をかけられる。


その声に頷き、天音と2人玄関に進み靴を履きだす。


2人が靴を履き終わると紅闇は千歳を抱きあげ、そのまま菓子を手に持たせ「行こうか」と声をかけてくる。


「「はい」」と答えると、千歳が嬉しそうにしっぽを振りながら「お出かけは久しぶりじゃな」と償いなど既に記憶にないように浮かれていて子どもだなと笑ってしまう。


そんな千歳のテンションに釣られてか翔太も心持ち明るい気持ちになり、観光気分で今は回ろうと気持ちを切り替え少し楽しんでも罰は当たるまいと、どこの国の景色とも異なる不思議な街の景色を楽しむことにする。


宿を出て「先ほどとはまた異なる中央に向かう商店街へ行くよ」と紅闇は言うと、途中から先ほど来た道とは異なる道へと進んでいく。


歩きながら、彼は説明をくれ先ほどの商店街は外で動く者向けの店が多く、人間には適していない店の方が多いだろうから、人が多い区画の商店街に向かうらしい。


通りが商店街に近づくにつれて道行くものが増えていく。


商店街にはどう浮かせているのかランタンのような提灯が縁日のように垂れ下がり、店の前に屋台を出し、様々な料理や雑貨を売ってまるで市のようになっていた。


商店街は賑わい客寄せで大道芸をやっていたり、絵が動く仕掛けがあったりと目を楽しませるものが数多くある。


そんな道を人だけではなく、妖に混じり者に人と多くの種族の者が楽しそうに種族に関係なく一緒に歩く姿や、商店街で呼び込みをしている姿に驚き、また千歳が「あれは翔太朗が好きなのじゃ」などと人が食べられるものを教えてくれている。


そんな千歳に天音が「すごい。頼りになりますね」と言えば褒められて嬉しいのか、しっぽを嬉しそうに揺らし、「そなたは何が好きなのじゃ?千歳が探してやるぞ?」などと言って天音を喜ばせたりしている。


何はともあれ単純で良かったと思っていれば、商店街の真ん中だという広場で何やら大きな紙芝居をやっている。



「ああ、ちょうどいい。これを見ていこう。君たちは知っておいた方が良い曲だ」



そう紅闇が言うとちょうど数人の楽師…先ほどの話だと彼らは奏燈徒なのかが、笛に太鼓に三味線のような楽器を弾いている。


そこへくるくる回りながら、お面を付けた髪がツートンカラーのボブカットの羽が付いた子どもと、耳が生えた子どもが詩を歌い始めた。



「「とんとことん、祭の夜。

今宵は、今宵は祭の夜。


ゆらりゆらり、灯が揺れる。


ここは夢か現か、

そこは極楽浄土か、

黄泉の入口か


祀吏燈徒らが現れりゃ

ちりりしゃらりん、音鳴らす。


舞燈徒らが舞い踊り

奏燈徒らの音色が人誘う。


寄りや寄りや、

こちらへ寄りや。


物綴りは言の葉で、

夢を紡いで見せるころ。


彩燈徒が筆を取り、

絵に魂入れるころ。


詩詠いは言の葉に、

詩を詠いて魅せるころ。


ここは夢か現か、

そこは極楽浄土か、

黄泉の入口か。


祀吏燈徒のその影は、

血に飢えたる緋屠の影。


あな恐ろしや、

恐ろしや。


今宵は、今宵は祭の夜。

神の宴か、

もののけどもの宴かや。


外へ出るなや、

戸を閉めよ。


窓を叩くは誰の指、

戸を鳴らすのは誰の声。


見れば惑う、

聞けば攫われ、

ついて行けば喰われてしまうぞ。


とんとことん、祭の夜。

今宵は、今宵は祭の夜。


ゆらりゆらり、灯が揺れる。


ここは夢か現か、

そこは極楽浄土か、

黄泉の入口か。


あな恐ろしや、

恐ろしや。

」」



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