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中庭に池か噴水でもあるのか水の音が聞こえる。

中庭を望む優美な応接セットに腰掛けて話しているのに、内容が物騒すぎてコンクリートに座っているかのように身体が固くなっている気がする。



「確認したいことがあります。」


「どうぞ」



そう声をかけた天音に紅闇が軽く返す。



「こちらに来る前に主神様方から紅闇さまは詩詠い(うたうたい)が主であるが他の能力も操れるというお話を伺いました。


もし可能であれば、私も明日他の能力を使えるか調べて頂くことは可能でしょうか?

少しでも能力が高い方が何かと…対応できることが増えるかと思うので…」



「ああ、構わないよ。

そうだね。他にも使えるものがあればある方が良いだろう。


ただ天音、君の場合は詩詠い(うたうたい)で既にかなり操れているようだと聞いている。

明日確認させてもらうが、他に才があっても場合によっては調整などに時間を取るようであれば詩に集中して能力を上げた方が効果的な可能性もある。


なので、そこは臨機応変に考えて貰ってもいいかな?


あと、さま付けは恥ずかしいから紅闇でいいよ。あ、呼びづらければさん付けがいいかな?」


「あ、はい。わかりました。紅闇さん、ありがとうございます。」



そんな天音に「素直でいいね」と紅闇が頷いている。

翔太はそのやり取りに気になったことができたので忘れないうちに聞いておこうと声をかける。



「あの、質問です。その詩詠い(うたうたい)どういった能力なのでしょうか…?

他にある能力についても伺うことはできますか?」



「ああ、そうか。そこの説明はされていないんだね。

今回関わる者は祀吏燈徒(まつりひと)という括りの職業の者たちがほとんどでね。

大体、詩詠い(うたうたい)奏燈徒(かなでひと)舞燈徒(まいひと)物綴り(ものつづり)彩燈徒(あやひと)と5つのどれか職業が多いかな?


稀に違う者もいるけれどね。


人に分かりやすい言葉に変えると詩詠い(うたうたい)は歌手で、奏燈徒(かなでひと)は演奏者、舞燈徒(まいひと)は踊り子で物綴り(ものつづり)は作家で彩燈徒(あやひと)は画家だと思うといい。



例えば、詩詠い(うたうたい)は詩を歌うことで声に力を乗せ扇を媒体に能力を使う能力だね。

簡単なものだと、盾や攻撃に使うものが多く、他にも幻を見せたり心を操るものまでさまざまな能力がある。

力が強いものだと扇は儀式など大掛かりの時にだけ使い、それ以外は声だけで力を使う者も居る。


奏燈徒(かなでひと)は楽器、舞燈徒(まいひと)は舞そのもの、物綴り(ものつづり)は物語や言の葉に、彩燈徒(あやひと)は絵に命を吹き込んだりする


そういう能力者が集まって芸事を行って一つの舞台のように人を使って物事を起こし、その優劣を競うのが祭事だから、大体いまこちらに来ているのはそういった能力の者が多くて、それらをまとめて祀吏燈徒(まつりひと)と呼ぶ。


ああ、あと空津国には祀吏燈徒(まつりひと)祀吏緋屠(まつりひと)と呼ばれる隊があって後者はほぼ戦闘集団だから。

あれらは狩りをする為に存在すると言っても過言ではないからね。

特に黒の羽と紅系の衣装を身に着けた者たちには気を付けてね。」



他に何かなかったかと紅闇はまた口に指を当て考え込んでいたが、翔太たちに視線をやり苦笑いをしてこう続けた。



「あとは…明日にしようか。

実際に見てもらった方が分かりやすいだろうし。


2人とも色々あって疲れただろ?

今日はこのまま部屋に戻って休んでもいいよ。

それで明日の朝、駐屯場へ行こう。」



紅闇の申し出はありがたいが、まだ昼になるかならないかという時間で、この時間に解散した場合、明日まで悶々と考え込んでしまいそうだとそわそわしていれば紅闇がおかしそうに笑い声をあげて提案してくる。



「落ち着かず休めなさそうだね。

良かったら街をもう一度案内しようか。


さっきはいきなりで周りもよく見れなかっただろうし。

ただ、妖や物の怪に混じり者は見た目が色々なんだよね。


だから、人には驚くような見目の者もいるが驚いても大声をあげたり逃げたりせず、そっと目を他の方に向けるようにして事を荒立てないようにして欲しいかな。


できるかい?」



そう聞いてくる紅闇に天音と顔を見合わせてから向き直り返事をする。



「じゃあ行こうか。

 ああ、2人とも部屋に狐の国の服があるから少し薄手のものに着替えてくるといいよ。


その方が街で浮かないだろうし、ここは円座と違ってこれからまだ気温が上がる。

その服では暑くて汗だくになってしまうからね」



そんな言葉にクローゼットにあったか?と驚く翔太ににんまりという音が付きそうな笑顔を見せ「いま話している間に用意して貰ったんだ。驚いた?」と当たり前に言う紅闇に2階は人専用じゃなかったのかとは思いながらも素直に礼をいい部屋に着替えに行こうと天音と2階へと上がっていく



「なんだか疲れましたね。なんでだろう…」



そう呟く天音に激しく同意しながら「慣れるしかないね」としか答えられないことに年長者として悲しくも思うが、あれはもう慣れるしかないモノだろうと…


ここで色々言い合うより着替えて街を見て、これからのことを考える方が建設的だと自分を言い聞かせ「狐の国の服って和服なのかね?」と話を変えてみる。



「あー和服っぽいですよねー。でも紅闇さんて着流しっぽいけど純和服っていう感じの服じゃなかったですよね。どんな服があるんだろー?」


「どんなだろうね。


じゃあ、着替えたらここで待ち合わせでいい?それとも着替え終わったら個々で下に行く?」


「待ち合わせて一緒に行きましょう。まだ紅闇さんと2人になるのは緊張するので、一緒に行きましょう」



では着替えたらここでと言ってお互い部屋に入っていく。



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