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「あの…口にするのが怖いものがあるのでしょうか…?」



チャレンジャーな天音が紅闇に質問をした。

その勇気を讃え拍手がしたくなったが、感情が表に出ないようにぐっと堪え紅闇の返答を待つ



「ん-そうだね。共食いになりかねないこともあり得ないとは言えないから、もし外で店に入るときは注意が必要かな?


千歳に"翔太朗が食べられないものや食べたらショックを受けるものは避けたい"と伝えておけばいい。

あの子は前回の祭事が行われていた辺りで君の前の人格と中津国で生活をしていて人の暮らしに慣れているから、人が食べたくないと思うものに私より詳しい。


だからそう伝えれば、君たちが食べられるものがある店を選ぶだろう。


ああ、天音ではなく翔太が伝えた方が今の時点ではいいかな。

まだあの子の中で整理がついていないから。

天音にはかわいそうだけどその辺は子どものわがままだと思って流してくれるとありがたいよ」



何とも言えない回答に天音も僕も言葉を失う。

共食い、つまり"人"が食料として出回っているということで…


自分たちは人を元在る場所に戻しに来たのに既に食料になっているという事実にショックを受けるべきか、人を食料にしていることにショックを受けるべきなのか。


何にどう気持ちを持つのが正しいのかこの数時間でより分からなくなった気もするが、そこに気持ちを持っていけるだけの余裕も今の時点でない気がする。


とりあえず今先に必要なのは自己紹介ではないかと、既に名などは把握している紅闇に対して自己紹介をしようと向き直り口を開く



「今更になり申し訳ありません。

坂井翔太と申します。

本日の夜明けぐらいに千歳さんと出会い、そのまま鳥と狼の主神様にお会いし現状理解が追い付いていない状態であります。


前回の件に関しては鳥の主神様よりこれから夢で見るとご説明頂きましたが、今からお話しする内容に支障があった場合、申し訳ありませんが補足を頂くことは可能でしょうか?」



そんな僕の声掛けに天音もここに来て抜けていた気が引き締まったのか、慌てて紅闇に自己紹介をする。



「申し訳ございません。遅くなりました。

伊藤天音と申します。


蛇神様の神子を喰らってしまった者の生まれ変わりで中に神子様も一緒におります。

そのままお話しいただければ神子様にも通じておりますので、私が通訳する形になってしまいますが彼とも意志の疎通が可能です。」



「2人とも自己紹介をありがとう。

先ほども軽く話したけど、私のことは紅闇と呼ぶといい。


千歳は兄と呼ぶが、狐の国では実際の血縁以外にも自分と近い位の者で先に産まれた者を兄姉と呼び、主神を母、父と敬う風習がある。


位が離れている場合は位か名前に様付けかな。それなりに親しいものは名で、それ以外は位で呼ぶからそれで距離感を見るといい。」



そう説明しながら紅闇は続ける。



「さて、まずは現状共有をしようか。


鳥の主神からの説明だと最低限の説明をしたけど、翔太は前知識がないから現状把握ができておらず、その上で千歳が暴れたからかなり搔い摘んだ状態だと聞いているけど間違いはないかな?


ああ、いいよ。その顔は間違いなさそうだね。



じゃあどうしようかな。まずはここの説明と君たちがここに呼ばれた理由からにしようか。」



そう言い茶に軽く口を付け、紅闇が話を続けていく。



「まずここに関してだけど、中津国で人の取り込みが行われた際に時間もなく選別なども出来ずに中津国から送られそうになっていた人と祭事に出払っていた各国の者と、あとはここら辺一帯は幽津国と空津国の国境付近で元々空白地帯になってるはずだったんだけど雑に管理を行っていたみたいでね?


勝手に両方の国の者たちが町を作って市とかを立ててたみたいなんだ。

それでその者たちも一気に取り込んでしまって、全部混ざった感じで今の状態になってるんだよね。



事件に関係した物の怪や混ざり者と呼ばれる君たちの国だと神と呼ばれる者と様々な種族が混じった者たちも取り込まれていても、関係ない幽津国と空津国の者も取り込まれてるから、人かそれ以外で簡単に分別して摘出できなくなっちゃってね。


それで翔太たちが罰として個別対応で人を元の世界に戻すために呼ばれたわけ。


ここまでは大丈夫かな? うん。よかった理解が早くて。」



そう翔太たちの表情を確認しながら紅闇は次々と現状を話していく。



「君たちの感覚だと昨日の夜の出来事なんだろうけど、既にこちらは事件の日から数か月過ぎているんだ。


それで人もこちらに来たことで思ったより早く、人と少し違うものになり始めている者も多くてね。


人でないモノになってしまうと、問題を起こす可能性が高いからもう中津国には戻せない。だから急がないといけないんだ。



そういう感じだから、明日からはまず彼らを返す方法を習ってもらうことになるんだけど、天音は詩詠いの性質の神子の力をそのまま使えると聞いているけど、間違いないかな?」



その言葉に慌てて頷く天音に対して鷹揚に頷き、視線を翔太に移す。



「翔太はその辺もまだだよね。まずは性質の調査を明日受けてもらうことになるからそのつもりでいて。ああ、身構えなくていいよ。人にわかりやすく言うと適性が強いものがどれか道具を使って確認するだけだから。


慌ただしい予定になって悪いけれど、もう既に消費されている者も出ているし急がなくてはいけなくてね。


あとは、気を付けないといけないこととしては、ほぼ前回贄として消費されている者だから皆2030年まで生き延びなければ生き延びられないんだけれど、狩られないで守られているわけではないんだ。」



少し視線を逸らして、ため息をつくと紅闇は続ける



「困ったことにね。もう既に狩られてしまった人もそれなりにいて、人も警戒していて逃げ惑っていて安全地帯である街や保護隊から逃げ隠れしてしまっているんだよね。」


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