第25話 うさぎゾンビは旅立ちを語る
そしてしばらくしてから、3人は自衛隊駐屯地へ戻る。
大鳥が言う。
「晩飯は何にする?」
「私はパンにしようかな」
「缶詰パンも真空パックパンもあるぞ」
「うーん、真空パックかなー」
「俺は鶏めし」
「よし、待ってろ」
やがてテーブルにレーションやパンスープ、スクランブルエッグが並ぶ。
「課長、なにこの卵。すごい」
「粉末卵ってのがあってな」
「へえ、そんなのがあるんだ。あ、青汁飲む?」
「飲む。バナナもくれないか」
「私は早く焼きたてのお店のパンを食べたいなぁ」
やがて賑やかな食事が終わり、各自自室に戻る。
自室で蔵五はリュックからウィルソンを取り出す。そして話しかける。
「なあ、お前とは長い付き合いになったな。お前がいなかったら正直さ、俺は心が持たなかった。出会えてよかったよウィルソン。エンディングが来たらお別れなのかな?寂しいよ。じゃあ、おやすみ」
その頃、モールにて。
うさぎゾンビがモール内に入る。夜のモール内はゾンビがウロウロとしていた。
やがて館内の見回りをしていた少年ゾンビと鉢合わせる。
「有紀くん、ただいまー」
「お姉ちゃん、おかえり。お金は持ってきた?」
「ごめん、忘れてた」
「早くしてよ。利子を付けるからね」
「はい、すいません」
2人でソファに座る。
「で、例のババアには会えた?」
「楠本さんは会えなかったけど、村田さんは会えたよ。そして、佐藤って名前をつけてもらった」
「ええ?僕たちの名字は強力でしょ」
「まあそうなんだけど。私はなんていうか、お姉ちゃんでもあり、お姉ちゃんじゃないというか」
「ウサギだし、男の人だし」
「そんな感じ」
2人で笑う。
「で、殺さなかった?」
「うん。目隠ししてたから。有紀くんのお陰だよ」
「良かった。あ、そうだ。お昼の間にいいアイデアが湧いてきてさ。これ」
少年ゾンビがメガネケースを取り出す。
「開けてみて」
「うん」
中にはサングラスとメガネストッパーが入っていた。
「監視カメラで人間を見ても殺意がわかなかったんだ。だから、サングラスをかけたら何とかなるかもしれないでしょ」
「すごいね。有紀くんは賢いね」
「えへへ。ちなみに一式で3万円。礼服が15万円だったから、合計18万円だね」
「…」
「税込みになります」
うさぎゾンビが向こうを向きながら言う。
「さ、さて。お姉ちゃんは旅に出ようと思います」
「旅?」
「そう。自分探しの旅」
「僕も連れて行ってよ」
「だめ」
「なんで?」
「有紀くんの頭を食べたくなるから」
「ふーん。まあ、それでもいいけど。ひとりぼっちよりもマシだもん」
「駄目。それじゃ、私が一人ぼっちになるじゃない。なら、お父さんとお母さんを呼び戻す方法も探してくるよ。これでどう?」
「分かった。待ってる」
うさぎゾンビが立ち上がる。
「じゃあ、明日の朝にでも出発するよ」
「車とかバイクとか、鍵が付きっぱなしの乗り物があるんじゃないかな。つかったら?」
「お金取るの?」
「お客さんの忘れ物なら売り物じゃないし、無料でいいよ」
「分かった。じゃあ、ちょっと散歩してくるね」
「いってらっしゃい」
ウサギゾンビは外に出る。
ぼんやりと宙を見る。空には満月が浮かんでいる。




