大魔法使い、国へ戻る
サリア王国を後にする一同。
その頃、デグス大臣は、結界が破られた戸棚をしょんぼりと見つめていた。
「大臣、元気出して!? 無くなった物はどうしようもないわよ。今は私を元に戻す為に頑張って!」
金魚に励まされながら、大臣は青く光る鉱石を取り出した。
大臣はラン——金魚の呪いを解くために、まずは鉱石を削る。しかし……
「硬くて、刃がボロボロになってしまう……」
とても硬いこの鉱石は、普通のナイフでは削れないのだ。ノアが魔法で簡単に粉にしていたが、あれはノアだからできた芸当である。
大臣は早急に、一人でやり遂げるのは無理だと判断し、国家直属の魔法使いたちにも応援を頼んだ。
「もう、リウム王国は懲り懲りだ……あの大魔法使いめ……」
文句を言いながら、次は魔法陣の修得に必死になるのであった。
◇
そんなことを知ってか知らずか、ノアは馬車で読書中である。サリア国王から、お土産に珍しい本を大量に貰ったのだ。
ノアはホクホク顔で、すっかりご満悦である。
エレナは帰りは馬車で酔わないよう、窓の外を眺めていた。
馬車が走り始めてしばらくすると、太ももに何かが乗ってきた。
「ちょっと寝かせて……ふぁぁ」
「え! ノ、ノア!?」
「スー……スー……」
当たり前のようにエレナの膝に頭を乗せ、ノアは眠りについた。
突然のことに、エレナの顔がみるみる赤くなる。
「もぅっ!」
頬を膨らませながら、エレナは暑くなった顔を手で仰ぐ。そして、再び窓の外を眺めるのだった。
◇
やっと山小屋に着いた二人。
「ただいま」
「白虎、ただいまーー」
「ガウウゥッ!!」
「うわっ……!」
——バタンッ!
白虎に覆い被され、ノアが倒れる。
「ふふ。白虎、ノアに会えて嬉しいみたい」
「ガウ〜!」
「そんな舐めるなよ」
まさに、人懐っこい巨大な猫である。
白虎を宥めながら、やっと我が家の山小屋へと帰宅するのであった。
「で、この本どうするの?」
エレナが、金魚になる呪いの禁書を指さして尋ねる。もう、間違っても金魚にならないよう、禁書には近付かないようにしているのだ。
白虎も魔獣の本能か、そばに寄ろうとしない。
「禁書はこの世から失くした方がいいと思うけど……下手すると呪いが世界に広まっちゃうからね」
しばし考え込む二人と一匹。
「やっぱり封印する?」
エレナが提案する。
「うーん……何年後かに封印が解かれたりしなきゃいいんだけど……」
ノアが腕を組んで下を向く。そして、何やらボソっと呟く。
「呪いを抜き取れないかな……」
「そんなことできるの?」
「瓶の中の水を抜き取るみたいなイメージでしょ? やってみる」
目を瞑り、両手を本の表紙へ向ける。
フワッと光がノアと本を包み込む——
すると、本が勝手に捲れ始めた。
「だ、大丈夫!? 金魚にならないわよね!?」
「ガ、ガーウ……」
エレナと白虎は寄り添い合い、ノアを見守る。
ノアが両手をゆっくり上に上げると、本の中から禍々しい紫色の煙が立ちのぼった。
「あれが……呪い?」
「ガウガウッ!! グルルル……!!」
「白虎!?」
白虎が紫色の煙に向かって吠え出した。そして、白虎の体が白く光輝きはじめた——。
「これは……守護の力?」
禍々しい紫色の煙が掻き消える。
「……消えた」
白虎の光はだんだん薄くなり、いつもの白虎に戻っていった。
「ガウ!」
「なんか元気そう……?」
エレナが白虎を撫でる。
(いつもよりツヤツヤなような……?)
「白虎はもともと守護を司る魔獣なんだ。この山小屋を守ったって事かな?」
ノアが頭を傾げる。
「白虎についても調べてみよう。ただの大きな猫じゃなさそうだ」
「そりゃあ伝説の魔獣だからね……」
エレナが苦笑する。
「白虎、守ってくれてありがとう」
「ガウっ!」
ノアの一言に、白虎は誇らしそうに吠えたのであった。
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