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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第二章 大魔法使いと呪いの本

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大魔法使いの正装姿

「ノア殿! 戻ったぞー!」


 意気揚々と、ノアの元へと戻るルーカス。手には分厚い魔導書らしき物を持っている。


「ルーカス、おかえり」

「殿下、お疲れ様でした」

「おお、ノア殿起きたか。ワーナーにも少し協力してもらって、大臣から例の本受け取ってきたぞ!」


 ルーカスは魔導書をノアへ手渡す。タイトルは「呪いの書に関する記述」とある。明らかに偽物を渡されているが、この本は別の意味で興味深い……


「ありがとう、ルーカス。鉱石渡した?」

「ああ。渡しておいたぞ!」


 本物の呪いの書はすでにノアの持ち物の中だ。どうやら、それをルーカスに言うつもりはないらしい。

 しかし、これで大臣が呪いの書がないとわかったとしても、偽物を渡したなんて言えるわけがないだろうし、鉱石を貰っている手前泣き寝入りするしかないだろう。

 

「助かったよ、ルーカス」


 言いつつ、ノアは受け取った本をそっと開く。

 中には魔法陣に、呪いについての記載などがびっしりと書かれていた。

 そして、ノアはそのまま本に没頭してしまった。

 せっかく本を持ってきたのに、あっという間に本に夢中になってしまったノアを、少し寂しそうに見つめるのであった。


 ◇


 婚約披露パーティーは、滞りなく終わった。

 ノアは本を抱えて出席した……というか、エレナに引きずられて会場へ入場した。


「本当に行かなきゃだめぇ?」

「当たり前でしょ! 国賓として招かれてるのよ!」


 エレナが頬を膨らます。

 

「でも、この本まだ途中……」

「その本、置いていってね!? 見つかったらややこしいでしょ?」

「うーーん……あ!」


 ノアがニヤッと笑う。

 

 本を左手に持ち、右手を本に向かって広げる。フワッと風が吹き、本が美しく煌めいた。

 その本は、見た目がガラッと変わっていた。いかにも魔導書だった茶色の表紙は、深い青色に変わり、中身も魔術の記載ではなく、外国語で書かれたかのようだった。


「これなら持って行っても大丈夫だね!」


 瞳をキラキラさせて自分を見るノアに、エレナは大きくため息をついた。

 

「……もう。しょうがないんだから。でも、ちゃんと着替えて行くのよ?」

「着替え……? そんなの持ってないよ」

「ルーカス殿下が用意してくれたわ! はい、それまで本は没収。こっち来て!」

「ああぁ!」


 ◇


 エレナは淡い紫色のドレス姿に着替えた。長い金色の髪は、一つに結えられている。その姿は凛としていて、元貴族の令嬢なだけある。


「エレナ嬢、とてもよく似合っているわ」

「ルーカス殿下!」


 ルーカスが着替えを済ませ、従者と共に現れた。

 

「ノア殿が着替えを渋っていてな……先に会場へ参ろう」

「わかりました」

 

(ノアは、確かに嫌がりそうだ……)

 エレナは苦笑した。


 会場は、キラキラした衣装に身を包んだ人々で賑わっていた。


「ではエレナ嬢、あとでな!」

「はい。殿下」


 ルーカスがいなくなり、エレナは知り合いもなく落ち着かない……しかし、そんな事は一切顔には出さずに微笑みを顔に貼り付けていた。


「こんばんはレディー」

「リウム王国からですか! お名前お聞きしても?」

「私はバーム王国の者で……」

「お一人ですか?」

 

 エレナの美貌に寄ってくる人々。

(どうしよう……)

 流石のエレナも戸惑いはじめた——


「ごめん。エレナは僕のパートナーだから」

「……!」


 そこにはスーツ姿の青年が立っていた。


「……ノア?」


 それは正装したノアだった。

 いつものローブ姿ではなく、仕立てられたスーツを着こなし、姿勢もとても良い。

 冷たい瞳でエレナの取り巻きを見る姿に、人混みは散っていった。眉間にシワを寄せ、機嫌の悪そうな表情は確かに迫力がある。

 普段のノアを知っているエレナでさえ、一瞬別人に見えた。


「ノア……背高くなった?」

「靴の底がいつもより高いし、姿勢も良くしろってメイドに言われてさ。こんな窮屈な服、すごいヤダ」


 外見はカッコ良くなっているのに、中身はまるで変わっていないギャップに、エレナはぷっと吹き出した。


「何笑ってるのさ? あ、本返して」

「ふふ。どうぞ」


 ノアは本を受け取ると、表情が少し和らいだ。

 その時、ワーナー殿下の妹が婚約者と共に現れた。会場中から、拍手が巻き起こる。


 ◇

 

 二人で会場からバルコニーへ出た。

 そこには外用ソファが置かれており、涼しい風が吹いていた。


「エレナ寒くない?」

「うん。少し寒いかも……。ノア外にいていいよ。私会場に戻ってるから」


 ノアは本を読むのだろう。

 長時間ドレスで夜風は寒い。邪魔しないように会場へ戻ろうとすると、不意に手を掴まれた。


「エレナ! 今日はすごい綺麗なんだから、一人でいたらダメだよ!」

「……へ!?」


 エレナの顔がみるみる赤くなっていく。

 それに全く気付かないノア。


「ちょっと待ってて」

 

 ノアがエレナに手をかざす。

 すると、エレナは、ホワっと体の外に膜が張ったかのような感覚になった。


「寒くない……」

「炎の魔法を薄くしてエレナを覆った。これで一緒に読書できるね!」

「一緒に?」


 ノアは外にあったソファに座り、隣に手を置く。


「ほら、おいで?」

「……うん」


 ノアがいつも通り本を読み始める。

 隣に座ったエレナは、体温が上がって、むしろ夜風に当たりたいと思うのであった。

読んでいただき、ありがとうございます。


★おもしろい!→5

★ふつう→3

★まぁまぁ→1


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