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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第二章 大魔法使いと呪いの本

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王子としての仕事

 城内を歩く、黒いローブの男。

 念入りに周囲を見回し、人がいないことを確認してから部屋へ滑り込み、後ろ手でドアを閉める。


「ふぅ」


 安堵や息を吐いた、そのときだった。

 

「ちょっと大臣! デグス大臣!」

「しぃーーっ!」


 慌てて人差し指を口元にあてる。

 声の主は、部屋の隅に置かれた大きな水槽だった。


「ラン! 静かにしろ! 今、例の魔法使いが来てるんだ。見つかったら大変だ!」

「そ、そうなの!?」


 水槽の中の金魚が話し出す。

 この金魚——ランは、ノアがサリア王国へ送り返した刺客である。

 

「しかも、国王も第二王子も、奴の肩を持っている」

「……もう謝ってさ、この身体元に戻してもらうのってダメかしら?」


 ランは、大きな水槽で左右に泳いでいる。見た所、快適な環境のようだ。


「そんな都合のいい話……」


 コンコン——


 ノックの音が響き渡る。


「……誰だ?」


 ぼそりと呟く大臣。ローブを着てはいるものの、デグス自身は魔法が得意なわけではない。


「デグス大臣、ワーナー殿下がお呼びです」


 外から従者の声がする。


「今行く! ……ラン、静かにしているのだぞ!」

「わかってるわよ」


 大臣はそそくさと部屋から出て行った。


 ◇


 ワーナー殿下は中庭で大臣を待っていた。大臣が現れると、いつもの懐っこい笑顔で笑う。


「やあやぁデグス大臣! 実はお願いがあってな!」

「はい。なんでしょう?」


 嫌な予感がする。

 

「はじめまして、リウム国第一王子のルーカスです。お目にかかれて嬉しいです。大臣!」


 ワーナーの後ろから現れた一人の青年。それは、まさかの隣国の王子である。


「な、な、な! ゴホンッ。ルーカス殿下、こちらこそお目にかかれて光栄です」


 頑張って表情筋を保ち、笑顔を取り繕う。

(なぜ、ルーカス殿下がここに? 私にお願い?)


 優雅なティータイムでありながら、大臣は全く食欲が湧かなかった。

 紅茶をすこしだけ飲むと、ルーカス殿下が口を開いた。


「実は……私の友人がサリア王国で探し物をしていましてね。それを大臣にも探してほしいんです」

「はぁ。それは一体……?」


 なんの話か、さっぱり見えてこない。


「古い本なんですが……もし見つけていただけたら、リウム国にしかない珍しい鉱石を差し上げます」

「鉱石……?」


 ルーカスは王子らしい顔で微笑む。

 爽やかな笑顔は、何を考えているのか探らせない凄みがあった。


「大臣、最近飼い始めた珍しい魚がいましたよね? 世話をするのも、そろそろ大変ではないですか?」


 ワーナー殿下のその言葉で、大臣は、はっとした。


「さぁ、よかったらこのお菓子もどうぞ! リウム国の名産の果物が入っております」

「あ、ありがとうございます……しかし、すみません急に予定を思い出しまして! 失礼致します!」

「そうですか残念ですが、お忙しいのでは仕方ない」


 ルーカス殿下は、さほど残念に思っていない様子である。


「探し物の件、宜しく頼んだぞ!」

「はいっ!」


 最後にワーナー殿下に釘を刺され、大臣は足早に城へと戻った。

読んでいただき、ありがとうございます。


★おもしろい!→5

★ふつう→3

★まぁまぁ→1


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