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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第二章 大魔法使いと呪いの本

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大魔法使いは敬語が苦手

 ノアとルーカスは国王の前に跪く。サリア王国の国王は、ワーナー殿下と同様に、筋骨隆々の大柄な人だった。

 

「よくぞ参られた。そして、我が国の脅威を倒してくれたこと礼を言う。ゆっくりしていかれよ」

「はっ」


 ルーカスが返事を返す。

 国王との謁見を終え、退室しようとすると、ノアは国王の従者より声をかけられた。


「ノア殿、少しお話が……」

「では私も……」

「ルーカス殿下はご退室いただいて結構ですよ」


 笑顔でかわされ、渋々退室するルーカス。ノアは従者へ付いて、再び国王と対面する。


「ノア殿、呼び止めてすまない。我が国の者がお主に、たちの悪い客人を送ったと耳にした」


 ノアは思い当たった。

 (金魚になった刺客のことだろう)

 

「すまなかったな」

「……!」


(一国の国王が、謝罪を……!?)

 さすがのノアも驚きで固まっていると、サリア国王の従者が口を開く。


「このことはご内密に」

「我はもともと陰でコソコソとするのは嫌いなのだ。我のことを勝手に思って、家臣が暴走しがちでな……」

「そう……なのですね」


 ノアは、ようやくそれだけ答えた。やはり敬語は苦手である。

 

「うむ。呼び止めて悪かった! この城は自由に使ってくれて構わん。大魔法使いとしての活躍、我が国も注目しているぞ!」

「……はい」

「ノア様、こちらへ……」


 従者へ促され、ノアは部屋を後にした。


 ◇


 ルーカスはエレナと共にノアを待っていた。


「エレナ嬢はノア殿と、どこで知り合ったのだ?」

「幼馴染なんです。もともと私の家で働いていた、使用人の息子がノアで……よく小さい頃から一緒に遊んでました」

「ほぉ! そうだったのか」


 コンコン——


 ドアをノックする音。

 ルーカスの従者が扉を開けると、顔色の悪いノアが立っていた。


「ノア殿! 国王と何か話したのか? 大丈夫か?」

「ノア! 顔色が悪いわ……こっち来て座って!」


 二人に心配されながらソファへ腰掛ける。


「いや、刺客送ったこと……あ!」


 ノアは、はっとした。


「これ、言うなって言われたんだ……」


 頭を抱えるノア。

 危ない危ない……気を取り直して、口を開く。

 

「とりあえず、刺客を送ったのは大臣が勝手にやったそうで、国としての意思じゃないらしい」

「そうか! それは一安心だ!」


 ルーカスと従者が胸を撫で下ろす。国際問題になる事態は避けられたようだ。

 

「それと、城は自由に使っていいって許可もらったよ」

「それなら、大臣の部屋をサクッと探して、本だけ取り戻しちゃいましょう!」

「そんな簡単なことじゃないでしょ?」


 あまりにも簡単そうに言うエレナに、ノアがツッコむ。


「ほら、顔色悪い人は水でも飲んで? ノアでも緊張することあるんだねぇ」


 エレナから水を受け取り、ノアは一気に飲み干した。


「そりゃあ、他国の国王に呼び止められたら驚くよ」

「まぁ、それはそうだな」

「何か脅されるのかと思って、城中の探知に、エレナへの防御結界張、それから国全体の結界の位置を急いで調べたから、ちょっと疲れた……」

「……え!?」


 エレナは目を丸くした。

 そして、改めて自分の身体を見回す。よく見ると、まわりにうっすら靄があることに気が付いた。


「これが防御結界……?」

「うん」

「それは……全部、あの呼び止められた瞬間にやったのか!?」

「なんてかけ離れた魔法使いなんでしょう……」


 ルーカスも従者も、ノアをまじまじと見つめた。


「ほんとに、人騒がせな国王……」


 ポスッ……


 ノアの頭がエレナの肩にのった。


「え?」


 静かな寝息を立てている。


「寝ちゃった……」


 よほど焦ったのだろう。

 

「くぅ! なぜエレナ嬢の方に……私の肩も空いていると言うのに!」


 ルーカスはなぜか悔しそうである。

 

「殿下……一旦私たちは下がりましょう。ノア殿を寝かせてあげた方がよろしいかと」


 従者がルーカスを促す。


「まぁ……そうだな。私は大臣を探して本の在処を探ってみる。エレナ嬢はノア殿を頼む!」


 泣きそうな顔で、ルーカスは部屋を出て行った。


「スー……スー……」


 ノアは気持ちよさそうに寝息を立てている。エレナはそっとノアの頭を自分の膝へ移動させた。


「昨日と逆だね……」


 エレナは、ノアの寝顔を見つめながら微笑んだ。

読んでいただき、ありがとうございます。


★おもしろい!→5

★ふつう→3

★まぁまぁ→1


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