大魔法使い、城へ到着する
サリア王国の王城へ到着した一同。城塞のように重厚な城だ。
「ようこそ我がサリア王国へ。砂漠の旅、お疲れでしょう。こちらで少しお休みください」
出迎えてくれたのは、第二王子、ワーナー殿下とその側近たちだった。筋骨隆々なその姿に、エレナは思わず一歩後ずさる。
「久しぶりだな、ワーナー殿」
「元気だったか? ルーカス殿!」
王子二人は同年代ということもあり、知り合いらしい。ルーカスは人の良い笑みを浮かべて、ノアのそばに立つ。
「ワーナー殿、こちらが我が国最強の魔法使い、ノア殿だ」
そしてどうだ! と言わんばかりに胸を張る。自分のことのように誇らしげな顔である。
「おお! あなたが! 噂はかねがね伺っております」
「はぁ……どうも……」
ノアは曖昧に返事する。
ワーナーは少し迷い、しかし気を決したように口を開いた。
「国賓であるあなたに、こんな事を頼むのも憚られるのですが……ぜひ、このサリア王国の魔獣も、退治してもらえませんか!?」
「え!?」
ノアは目を見張った。そんな話聞いていない。
「魔獣?」
エレナも思わず口にする。
「ワーナー殿、魔獣とは……?」
ルーカスは少し嬉しそうだった。おそらく、ノアが魔獣を倒す活躍を見たいのだろう。
「もともと砂漠にいた魔獣なんだが、近頃なぜか城壁近くにいるのを目撃されるようになったんだ……」
「砂漠の魔獣か」
ルーカスが難しい顔で頷く。
一方、ノアはワーナーの後ろにある本棚を見ていた。
(あれは知ってる。その隣も知ってる……あれはサリア王国の歴史書? 後で借りてもいいかな)
「しかも、厄介なことに幻術を使う。騎士団も魔法使いたちも、惑わされてしまって攻撃が当たらないんだ」
ワーナー殿下は項垂れている。本当に困っているようだ。
しかし、当の本人であるノアは全く聞いていない。
エレナはそんなノアを横目で睨んでいる。
「お願いだ、ノア殿! 妹の婚約披露パーティーの前に、厄介ごとは片付けてしまいたいのです! もちろん報酬はお渡しします」
婚約披露パーティーは二日後。ワーナー殿下はその前に魔獣を倒したいのだ。
「……報酬」
ノアが呟く。
「……あ!」
何かを思いついたように、ニヤッと笑った。
「じゃあ、王家が管理している図書館。そこの本、全部見せてほしい」
「もちろん!!」
ワーナーは即答した。
それだけ、魔獣の件で困っていたのが伺える。
「その魔獣は夜現れます。明日にでも——」
「じゃあ今夜行こう」
ノアの切り替えの速さに、ワーナーは目を丸くする。
「今夜ですか! お疲れでは……?」
「大丈夫。早く図書館行きたいし」
「それは、こちらとしては有り難い! ぜひ、お願いします!」
ワーナー殿下は、ノアの手を力強く握ったのであった。
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