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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第二章 大魔法使いと呪いの本

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大魔法使い、サリア王国へ

 ノアはサリア王国へ向かう馬車のなかにいた。相変わらず本を読んでるノアの膝の上には、エレナが横になっている。


 それもこれも——。

 

「私も本読んで行く!」

「へぇ。でも、馬車の中で読むのはやめといた方がいいと思うよ?」

 

 ノアはエレナに忠告する。

 

「大丈夫よ! 移動中って暇だし! ノアもどうせ読むんでしょ?」


 そして案の定、エレナは馬車に酔い、ノアに介抱されることになった。

 馬車がゆっくりと停まる。


「ノア殿! 休憩だ!」


 馬車の中に顔を出したのは、ルーカス王子だった。そして、ルーカスは口を開けたまま固まった。


「ひ、膝枕……!」

 

 エレナの瞼が薄く開く。ルーカスの声で起きたようだ。

 

「エレナ起きた?」


 ノアは本から視線を動かす。

 

「うん……」

「体調どう?」

「もう大丈夫そう」


 ノアはふっと微笑むと、また本へ視線を戻す。

 

「なんでノアは平気なの?」

「んー……なんでだろうね? 僕、酔ったことないんだよ」


 エレナは起き上がり、ルーカスに気がついた。


「あ、殿下……休憩ですか?」


 我に返るルーカス。


「あ、ああ。この村でランチがてら休憩だ」

「ほら、ノア行くよ」

「えぇ……うーん」


 エレナは本を離そうとしないノアを引っ張って、馬車から降りる。

 そこには見たことのない景色が広がっていた。

 一面砂漠。


 リウム王国とサリア王国は、馬車で一日ほどの距離にある。ただし、その間には広大な砂漠が広がっている。そのため、国同士の距離そのものは近くても、一般の人間が気軽に行き来できる場所ではない。

 

「この砂漠を越えるとサリア王国だ」


 ルーカスが砂漠の向こうを指差す。エレナが遠くを眺めた。


「サリア王国って、どんな国なんですか?」

「そうだな……国王の力が強いな」


 ルーカスが考えながら話す。


「リウム王国よりも身分に厳しいって、どこかで読んだよ」

「へぇ……」


 ノアが本から顔を上げずに話す。


「サリア王国には、王家が管理している図書館があるらしいですよ」


 従者がノアに伝えた。


「図書館! それは楽しみだ!」


 ノアは本から顔を上げ、従者を見て瞳を輝かせる。その変わりように、エレナは苦笑を浮かべた。

 ルーカスは従者をじとっ……と見る。


「その情報、私が言いたかったのに……」

「うわっ……すみません、殿下! ほら、お昼に行きましょう!」


 従者は慌てて、一同を村の食堂へと案内するのであった。


 ◇


 やがて、砂漠の向こうに城壁が見えてきた。

 エレナが馬車の窓に顔を近づけて、感心している。


「あれがサリア王国かぁ……!」


 馬車は城壁の中へと入って行く。騎士たちが並び、敬礼しながら出迎える様子に、エレナは少し萎縮した。


「すごい歓迎ね……さすが国賓……」


 ノアはそんな様子を気にもせず、本を読んでる。

 馬車の外では、楽団が音楽を演奏し、街の人々も旗を振っている。王女の婚約発表という一大イベントを、大いに盛り上げているようだ。


「ノアもさすがね……この状況で本を読めるなんて……」


 そのとき、ノアがパタンと本を閉じた。


「はぁあ、読み終わった。あれ、着いた?」

「着いてるわよ。窓の外見てみて!」

「すごい人だ……」


 ノアは人に注目されるのが苦手である。熱狂する群衆の視線に晒されるのは、馬車の中にいても居心地が悪いらしい。ノアは自分の側のカーテンをさっと閉めた。


「エレナ、そっちのカーテンも閉めて」

「えぇ!? せっかくだから街見ようよ?」

「……はぁ」

「ほら、図書館もあるんでしょ?」

「そうだった!」


 ノアは窓の外を眺めた。しかし、人が多すぎて建物がほとんど見えない。


「早く帰りたいなぁ……」

「ノア、早すぎない?」


 馬車はパレードの中を走る。サリア城では、国王と大臣がそれを眺めていた。

読んでいただき、ありがとうございます。


★おもしろい!→5

★ふつう→3

★まぁまぁ→1


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