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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第一章 大魔法使いと金魚

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洗濯はありがたい

 御者の怪我がだいぶ良くなり、山小屋に慣れた頃——


「ふぁあ……読み終わった……」


 ノアが大きく伸びをした。服屋の主人からもらった魔導書を解読しつつ、ようやく最後のページまで読み切ったらしい。


「エレナ?」


 ノアが声をかけた瞬間——「ガーウ!」と白虎がノアの服の裾を甘噛みし、ぐいっと引っ張ってきた。


「ん? 白虎どうした?」


 白虎の視線を追うと、エレナがリビングでスヤスヤとうたた寝をしていた。白虎は静かにしろとノアに注意を伝えていたようだ。ノアは苦笑しながら、エレナの肩にそっと毛布を掛けた。


 ガチャリ。

 ドアが開き、空になったカゴを持った御者の男が入ってきた。

 

「ふぅ。洗濯終わりましたぁ……!」


 ノアも御者もお互いに驚いて、相手を凝視する。

 どうやら御者の男は、ノアが魔導書に没頭している間、山小屋の家事を自主的に手伝うようになっていたらしい。


「……あの、洗濯してくれたの?」

「はい! 命を助けてくれたお礼を少しでもしたくて……エレナさんに、家事の手伝いをお願いしたんです!」

「あ、ありがとう……」


 ノアは自分の洗濯物を干してくれていたことに、感謝もあるが、少し恥ずかしさもあった……。

(あれ、ってことはエレナの洗濯物も……!?)


「御者さん。今日、街に送って行くから!」

「え! いいんですか? 何から何まで……ありがとうございます!」


 御者は感激して深々と頭を下げた。しかし、なんだかモヤモヤした気持ちになるノアであった。


 ◇


 ひとっ飛びで街へと向かうノアたち。

 ノアは飛行魔法を応用し、馬車と御者。おまけにエレナも空へ浮かせた。

 ちなみに、馬車に繋がれていた馬は、熊が来た時に逃げ出してしまい、それっきり戻ってこない。

 今日は街へ降りた後、王城へも向かう。なお、白虎はお留守番である。


「お二人には大変お世話になりました! このご恩は生涯決して忘れません……!」


 御者は助けられたカメのようなセリフを残して、手を振り別れた。

 

「御者さん、もう少し療養してもよかったんじゃない?」


 空旅の途中、エレナが不思議そうにノアに質問する。

 

「いや、家事手伝えるくらい動けるんだから、充分でしょ?」

「……そう?」


 エレナがノアの顔をじっと見る。ノアはエレナを見ようとしない。


「あの御者さ……洗濯物干してたじゃん? あれ、全部お願いしてたの?」

「え? うん、まぁ……」

「僕のパンツとかも?」

「ノアのは全部お願いしてたよ。私はさすがに自分で干してたけど……」

「……そっか。はぁぁ……良かったぁ」


 ノアは安心し、盛大に息をはいた。


「……なんで良かったのよ?」

「……なんでだろ? よく分かんないけど、安心した」


 そうこうしている間に、王城に到着した。

 ルーカス王子はノアが来たとわかった途端、職務そっちのけで飛んできた。


「ノア殿! そなたが城へ自分から来られるなんて……私は感無量だ!」

「ルーカス、僕のところにサリア王国の刺客が来たんだよ」

「し、刺客!?」


 ルーカスと従者、護衛たちは目を丸くする。


「自国に返しといたから、大丈夫だよ」

「それはいつのことですか!?」

「んと……」

「一週間前です」


 代わりにエレナが答える。


「その間一体なにを!? もしかして怪我などされたのですか!?」


 ルーカスが顔を青くして心配そうに声を上げる。


「……ううん。魔導書読んでたら報告忘れてて。今日になっただけ」

「……ノア殿らしいですが、報告は迅速にお願いします」


 従者が頭を下げつつ、しっかり主張する。


「念のため、禁書の管理状況も確認しておきましょう」

「禁書? それ、僕も見れる?」

「いえ、禁書は厳重に管理されておりますので……」

 

 ノアはエレナの腕を掴み連れて行く。

 その様子を羨ましそうに見ながら、ちゃっかりついて行くルーカスであった。

読んでいただき、ありがとうございます。

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