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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第一章 大魔法使いと金魚

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毛皮と鍋

 悲鳴は森の方から聞こえた。ノアはサッと立ち上がると、素早くドアまで飛んだ。


「え! なに!?」

「エレナはここにいて」


 ノアは言い捨てると悲鳴が聞こえた方へ飛ぶ。途中で馬車が横倒しになっているのが見えた。ノアは地上へ降りた。


「キャーーッ!」


 再び悲鳴が聞こえ、視線を向けると、そこには大きな熊が立っていた。叫んだ女性は、今にも熊に襲われそうだ。ノアは軽く手を振るい、熊を風の衝撃で吹き飛ばす。


「グゥオ!?」

 

 熊は森の奥へ走って逃げて行く。ノアがそれを見送っていると、女性が涙目で駆け寄ってきた。


「大魔法使い様! あ、ありがとうございます!」

「……怪我はない?」

「はいっ! でも、少し目眩が……」


 女はノアにもたれかかるように倒れた。ノアは女性を地面に寝かせ、馬車の中を確認する。御者の男が馬車の陰に倒れていた。気を失っているが、大きな怪我はなさそうであった。

(これ、放置したらダメかな……)

 薄情なことを考えるノア。そこへ聞き慣れた声が聞こえた。

 

「ノア! ちょっと、その人たちどうしたの!?」

「エレナ、来ちゃダメって言ったのに」

「だって、気になるし……大丈夫、白虎もいるから!」

「ガーウッ!」


 行動力のあるお嬢様は、白虎に乗ってやって来た。


「まだ追い払った熊が、その辺にいるかもしれないんだから、出歩かないで」


 その熊のいる森に、意識のない人を放置しようと考える危ない魔法使いである。

 

「熊が出たの?」

「うん。大きかった。次会ったら、毛皮欲しいから仕留めようかな……」

「熊の毛皮かぁ。私、熊鍋もけっこう好き……じゃなくて、この人たち運ばないと!」

「ええ? やっぱり看病しなきゃダメ?」

「だって、放っておけないでしょ?」


 エレナはさも当たり前のように、女性と御者を山小屋へ迎え入れる準備を始めた。ノアはため息をつきつつ、二人を浮かせ、山小屋へ運ぶのだった。


 ◇

 

 女性はエレナのベッドに、御者はノアのベッドに寝かせる。ノアは大魔法使いだが、怪我を治すことは専門外である。

 夜も更けてきたが、二人はまだ起きない。


「僕は白虎と寝るから、エレナはソファ使って……」

「わかった」


「ガウ……」

「おやすみ白虎」

 

 白虎のフワフワに包まれ、ノアは秒で気持ちよさそうな寝息を立て始めた。

 一方、エレナはソファに横になったものの、色々と考えてしまって目が冴えていた。


(ノアの『結婚』発言についても詳しく聞きたいし……あの貴族のことも調べたい……はぁ、今夜はとても寝られる気がしないわ)

 

 立ち上がり、水を飲もうとキッチンへ向かうと、人影が揺れた。


「大人しくしてもらえるかしら、お嬢さん?」

「……え?」


 首筋にヒヤリと冷たい金属の感触。

(ナイフ!?)

 それは熊に襲われ、エレナのベッドで寝ているはずの女だった。

読んでいただき、ありがとうございます。

面白ければ星5、つまらなければ星1

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