大魔法使いの街探索
ルーカス一行は、街での視察を終え城へ帰って行った。ノアともっと一緒にいたいと、最後まで粘っていたルーカスだったが……
「私との城での生活は断ったのに、まさかの山小屋で他人と同居しているなんて……信じられない!」
王子とは思えぬ発言をしながら、騎士団の力によって無事に連れて行かれたのであった。
◇
「エレナさ、服買わないとじゃない?」
「あ、そう言えば……」
エレナは没落した貴族の元お嬢様である。売られた先から命からがら逃げ出してきた彼女は、身につけていたもの以外、何も持っていなかった。
ノアはそんなエレナに何も聞かず、あっさりと家に招き入れたのだ。そして、すぐに金魚になったのである。
「いらっしゃいませぇ〜」
「わぁ、かわいい〜!」
服屋に入ったエレナは、ズラリと並ぶ洋服に囲まれて嬉しそうだ。ノアは手持ち無沙汰に店内をウロウロしていた。白虎は外で待機中である。
「ノア、この服とこっちの服……どっちがいいと思う?」
「両方」
「え! でもでも……」
「大丈夫だよ。エレナはどっちも似合うから」
エレナの難しい質問に完璧な回答をするノア。エレナの扱いには慣れているのである。
「ん?」
ノアは何かに気づき、店の奥へ視線を向けた。そこには古びた一つの木箱が置かれている。
(魔法の気配がする)
「あの木箱には何が入っているんですか?」
「え? あぁ。あれは祖父が持っていた古い本ですよ」
「本?」
「ええ。もうボロボロなので処分しようと思っていたんですが、忘れてました」
ノアの目がキラリと輝く。
「ちょっと見てもいいですか!?」
「ああ、はい。どうぞ……」
ノアが急に生き生きとし始めたので、店員も驚いている。本は何冊かあり、その中の一冊から魔法の気配を感じ、手に取った。
「これは……」
「気に入ったなら差し上げますよ?」
「ありがとうございます!」
ノアは貰った本をキラキラした瞳で見つめている。(魔導書だぁ! しかも古代の! ボロボロだけど、魔法でちょこっと修正して……またエレナが勝手に開かないようにしなくちゃ……)
こうして、二人は大満足のホクホク顔で店を出たのであった。
◇
山小屋に帰った一同。
「ノア、このアクセサリーなんだけど……」
「うん?」
「これ、私の家にあったアクセサリーだと思うの」
エレナが赤い鉱石のネックレスを見せる。それは確かに露店に並ぶにはあまりに精巧な作りで、あしらわれた鉱石も価値の高い物であるとわかる。
「この石、ガーネットよ。宝石の一種なの。どこかを巡り巡って露店に並んだんだと思うんだけど……何だか気になって、アクセサリーを売った人の住所も貰っといたわ」
「すごい行動力だね……」
ノアは目を見張る。エレナは今にもその場所へ飛び出して行きそうな勢いだ。ノアはやれやれとため息をついた。
「エレナ、一人で行くのは駄目だよ?」
「……でも気になるし」
「いやいやいや、エレナ逃げて来たんでしょ? もし見つかっちゃったらどうするの?」
「……それは、そうだけど」
「僕も一緒について行くよ。エレナも顔が見えないようにローブ被って!」
「……! ありがとう、ノア!」
「うわっ!?」
満面の笑みでノアにぎゅっと抱きつくエレナ。ノアは驚いた顔をしたが、ルーカスの時のように自動防御魔法で吹き飛ばすことはなかった。
その傍らで、白虎が伏せたままチラッと二人を見たのだった。
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