エレナ初めてのおつかい
街へ着いたエレナと白虎。
「まずは……卵が無くなっちゃったから、卵のお店を探そう!」
「ガウ!」
意気揚々と歩き出す二人。街は活気があって賑やかだ。エレナと白虎は、初めて見るお店に目を輝かせている。
街の人は白虎を見て目を丸くしている。しかし、エレナの横をしっかり付いていく姿、キョロキョロして楽しそうな白虎に「あれは白い虎なのか? それとも大きな猫なのか?」判断がつかないのか、不思議そうに通り過ぎて行く。
無事、卵を買った二人。ノアがおまけを貰ったパン屋へと向かう途中——。
「そこのお嬢さん! こんなアクセサリーどうだい? 似合いそうじゃないか」
呼び込みに足を止めた。
露店のお兄さんは、鉱石や宝石らしきアクセサリーを手に持ち、太陽の光でキラキラと反射させている。年頃の娘たちが立ち止まって、商品をうっとりと見つめている。
(これは……)
何やら難しい顔をして商品をガン見するエレナ。白虎は休憩とばかりにそばに座り、あくびをして毛繕いをしている。
「あの大きな猫さん、かわいい!」「触ったら怒られるかな……」「わぁ! あくびしたよ」小さい子どもたちは、そんな白虎に釘付けである。
「お兄さん、このアクセサリーはどこで手に入れたのですか?」
エレナは眉間にしわを寄せたまま訊ねる。
「えっと、知り合いから買ったんだよ。どうしてだい?」
「私、このアクセサリーと同じデザインを知っているんですけど……」
チラッと露店のお兄さんを見るが、ポカンとしている。
(なるほど。露店の人は何も知らないのね)
「私、アクセサリーに興味があるんです。そのお知り合いの住所とかって、教えていただけませんか?」
「それは……でもなぁ」
渋るお兄さんに、エレナはもう一声。
「コレ、いただきたいわ」
「お、毎度あり! 住所ね、ちょっと待ってな!」
手元にあった赤い鉱石のネックレスを購入する。
露店のお兄さんから住所が書かれた紙をもらい、エレナはその場を後にした。
パン屋の行列に並んでいると、何やら人だかりが近づいてきた。
「なんだろう?」
「ガウガ!」
白虎が急に走り出した。
「あ! 白虎!?」
白虎に驚いて、人々が道を譲る。現れたのは馬に乗ったルーカス王子と騎士団であった。ルーカス王子を一目見ようと、人だかりができているのだ。
「おお!? 白虎じゃないか! ってことは……」
ルーカスはキョロキョロと辺りを見回している。誰かを探しているようだ。
(あれはルーカス殿下!!)
「申し訳ありません。家のペットが……」
エレナは足早に近づき跪く。
「そなたのペット? しかしこれは白虎であろう?」
ルーカスが不思議そうに首を傾げる。
「はい。同居人がダンジョンから拾ってきまして……」
「同居人? それはノア殿か……?」
「はい」
ルーカスは雷に打たれたような顔をして固まっている。騎士団たちはワイワイと話し出した。
「ノア様に同居人がいたとは!」
「彼女ですか?」
「いやぁ、隅におけないですねー」
「お嬢さん、お名前は?」
隊長が皆を宥めて、問いかける。エレナは白虎を撫でながら答えた。
「エレナです」
「……えれな、エレナ!?」
急にルーカスが話した、と思いきや、また固まっている。騎士団たちも、白虎も、固まっているルーカスを不思議そうに見ている。
「……もしや、君は、あの金魚だった……?」
「ええ、そうです。やっと呪いを解いてもらえたのです!」
「ノア殿が大事にしていた、あの! 通りで、いや……というか金魚が人に!?」
ルーカスがブツブツ独り言を呟いて混乱している。人もたくさん集まってきてしまい、騎士団たちは警備を始めた。
「みなさん、下がってください」「殿下は視察に来られただけで、もう帰りますので……」
そんな中、一人呟くルーカスを放っておいてもいいのだろうかと、エレナが考えていると、一際強い風が吹いた。
「いた。エレナ、白虎、勝手に出かけないでよ。探したじゃん」
「ノア!」
「ガウー!」
そこにはローブを着た少年が、いつの間にか立っていた。
「ノア殿!!」
歓喜の声をあげ、ルーカスが馬から素早く降りると、ノアの元へ走る。と、突風でルーカスが道に投げ出された。
「で、殿下!」
「またか……」
従者がやれやれ顔で心配している。
「ルーカス、僕に抱きつくのはやめて」
ノアが本当に嫌そうにルーカスを見た。
「すまぬ、咄嗟の衝動を抑えられなかった……」
ルーカスは何だか怖い言い訳をしている。しかし、ノアを見て我に返ったようだ。
「私、出かけるって何回もノアに言ったけど、鉱石に夢中で聞こえてないみたいだったから……」
「ガウガウ」
「言ったの? 全然知らない。とりあえずパン屋行こう」
さっさと歩き出すノア。パン屋は先程まですごい行列だったのだが、ルーカスが来たことで行列がなくなっていた。
店に入ると焼きたてのパンのいい香りがする。エレナは思い切り空気を吸い込んだ。
「幸せ……」
「どれにしようかなぁ……」
各々好きなパンを選んでいく。トレイはもちろん山盛りである。
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