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魔力無制限の大魔法使いは、静かに読書したいだけ  作者: 紙絵。
第一章 大魔法使いと金魚

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呪いが解けた翌朝

 ルーカスと騎士たちは一度村に戻り、横道の絶景について説明した。村人たちは、魔物がいなくなった上に、新たな絶景が見つかったと聞いて大いに喜んだ。おそらく、数日後には観光地化していることだろう。


 城についた一行は、ヘトヘトであった。馬もダンジョンへ向かう時ほど速くは走れず、王城に戻った頃には夜もとっぷりと暮れていた。


(ノア殿、いつ城に来てくれるだろうか?)


 ルーカスは満足そうな顔でベッドに入ったのであった。

 

 ◇


(なんだかいい匂いがする……)

 グ——……


「お腹空いた」

「ノア、おはよう!」


 エレナがキッチンで朝ごはんを作っていた。フライパンには、卵焼きを作ろうとした残骸があり、チーズを乗せて焼かれた焦げ気味のパンがテーブルに並べられている。

 昨日は何も食べずに寝てしまったノアは、匂いに釣られて起きてきた。

 

「エレナ、料理できたっけ?」

「元に戻してくれたお礼も兼ねて、頑張ってみたんだけど……ちょっと焦がしちゃって……」


 エレナは元お嬢様で、料理などした事はないのだ。見た目はお世辞にも美味しそうとは言えない出来だが——


「人が作ってくれたご飯、久しぶり……いただきます」


 ノアはとても嬉しそうに席に座ると、パクパクと食べ始めた。その様子を見て、エレナは心がポカポカするのであった。


 ◇


 白虎とエレナは街へ買い物へ出かけることにした。朝から張り切って料理をしたのはいいが、うまく出来ずに、半分は失敗してしまったのだ。買い置きしていた食材が無くなりそうである。

 

 ちなみに、失敗作は全て白虎がおいしく平らげた。魔獣は食べなくても生きていけるが、食べても問題はない。初めて人間の料理を食べた白虎は、それが失敗作であろうとなかろうと、えらく感動していた。


「ノア、買い物に行ってくるね!」


 エレナはノアに声をかけるが、青く光る鉱石を調べ始めてしまったノアに、こちらの声は届いていないようであった。


「白虎、私、買い物するの初めてなの……! 頑張ろうね!」

「ガウ?」

「昔は、家の使用人が全部やってくれていたから」

 

 エレナは少しだけ笑った。

 かつては、自分にも当たり前のように家があり、使用人がいて、何不自由なく暮らしていた。

 けれど、それはもう遠い昔のことだ。

 

「今思うと……ずいぶん、何も知らなかったんだなぁ」

 

 エレナは街の方を見つめる。

 とても頼りない二人連れは、仲良く街へと向かうのであった。

 

 その頃、王城では——


「ノア殿は今日は来ないか……南のダンジョンの報告書を作らないといけないんだが……」


 ルーカスがノアを心待ちにしていた。報告書を作らないといけない、のは本当ではあるが、要はノアに会いたいだけである。

 

(昨日のノア殿は凄かった。あの防御魔法を施す速さ、「出たら死ぬよ」の目つきもゾクゾクしたなぁ……。また一緒に冒険したいなぁ)


 思い出してニヤニヤするルーカス。王子でなかったら、ちょっとヤバいファンである。


「殿下、本日は街への視察があります。準備ができましたら、参りますよ」


 従者がしっかり予定を管理している。今日くらいダンジョンの疲れを取りたい所だが、予定を放り出してノアについて行ったのはルーカスである。文句は言えない。


「はぁ。わかったよ」


 ルーカスはしぶしぶ視察の準備をする。街へと向かう顔つきは、王子らしい凜としたものであった。

読んでいただき、ありがとうございます。


★おもしろい!→5

★ふつう→3

★まぁまぁ→1


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