呪いが解けた翌朝
ルーカスと騎士たちは一度村に戻り、横道の絶景について説明した。村人たちは、魔物がいなくなった上に、新たな絶景が見つかったと聞いて大いに喜んだ。おそらく、数日後には観光地化していることだろう。
城についた一行は、ヘトヘトであった。馬もダンジョンへ向かう時ほど速くは走れず、王城に戻った頃には夜もとっぷりと暮れていた。
(ノア殿、いつ城に来てくれるだろうか?)
ルーカスは満足そうな顔でベッドに入ったのであった。
◇
(なんだかいい匂いがする……)
グ——……
「お腹空いた」
「ノア、おはよう!」
エレナがキッチンで朝ごはんを作っていた。フライパンには、卵焼きを作ろうとした残骸があり、チーズを乗せて焼かれた焦げ気味のパンがテーブルに並べられている。
昨日は何も食べずに寝てしまったノアは、匂いに釣られて起きてきた。
「エレナ、料理できたっけ?」
「元に戻してくれたお礼も兼ねて、頑張ってみたんだけど……ちょっと焦がしちゃって……」
エレナは元お嬢様で、料理などした事はないのだ。見た目はお世辞にも美味しそうとは言えない出来だが——
「人が作ってくれたご飯、久しぶり……いただきます」
ノアはとても嬉しそうに席に座ると、パクパクと食べ始めた。その様子を見て、エレナは心がポカポカするのであった。
◇
白虎とエレナは街へ買い物へ出かけることにした。朝から張り切って料理をしたのはいいが、うまく出来ずに、半分は失敗してしまったのだ。買い置きしていた食材が無くなりそうである。
ちなみに、失敗作は全て白虎がおいしく平らげた。魔獣は食べなくても生きていけるが、食べても問題はない。初めて人間の料理を食べた白虎は、それが失敗作であろうとなかろうと、えらく感動していた。
「ノア、買い物に行ってくるね!」
エレナはノアに声をかけるが、青く光る鉱石を調べ始めてしまったノアに、こちらの声は届いていないようであった。
「白虎、私、買い物するの初めてなの……! 頑張ろうね!」
「ガウ?」
「昔は、家の使用人が全部やってくれていたから」
エレナは少しだけ笑った。
かつては、自分にも当たり前のように家があり、使用人がいて、何不自由なく暮らしていた。
けれど、それはもう遠い昔のことだ。
「今思うと……ずいぶん、何も知らなかったんだなぁ」
エレナは街の方を見つめる。
とても頼りない二人連れは、仲良く街へと向かうのであった。
その頃、王城では——
「ノア殿は今日は来ないか……南のダンジョンの報告書を作らないといけないんだが……」
ルーカスがノアを心待ちにしていた。報告書を作らないといけない、のは本当ではあるが、要はノアに会いたいだけである。
(昨日のノア殿は凄かった。あの防御魔法を施す速さ、「出たら死ぬよ」の目つきもゾクゾクしたなぁ……。また一緒に冒険したいなぁ)
思い出してニヤニヤするルーカス。王子でなかったら、ちょっとヤバいファンである。
「殿下、本日は街への視察があります。準備ができましたら、参りますよ」
従者がしっかり予定を管理している。今日くらいダンジョンの疲れを取りたい所だが、予定を放り出してノアについて行ったのはルーカスである。文句は言えない。
「はぁ。わかったよ」
ルーカスはしぶしぶ視察の準備をする。街へと向かう顔つきは、王子らしい凜としたものであった。
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