第三部隊長と長官
バタン!
「隊長!投函物が溜まっているであります!」
「俺はもうお前がノックするという希望を持つのを諦めたよ」
「次からは気をつけるであります!投函物はどうするでありますか!」
「どうせ広告とか新聞とか敵国の果し状だけだろ?
まとめて保管庫にぶち込んどけ」
「わかりましたであります!」
バタン
「さてさて、コーヒーコーヒー」
‥‥‥俺はこのときの判断をかなり後悔することになる。
◇
「隊長!お客であります!」
朝食後のコーヒーを嗜んでいた俺にアホ本官は言った。
「事前に訪問の旨を伝えないような奴は追い返せって言ったよな?」
主に訪問販売とか敵国のマヌケとか敵国のマヌケとか敵国のマヌケとかである。
そんな奴に構っている暇はコーヒータイム中の俺には持ち合わせていない物である。
「ちなみに誰なんだ?」
「戦術総司令長官であります!」
「何やってるんだ速く貴賓室にお通しするんだ」
あの御方に会うならコーヒーなんて淹れるんじゃなかったな‥‥‥
俺は少々残ったコーヒーに若干の未練を残しつつ、貴賓室に向かった。
◇
「———本日はこんな危険な所にわざわざご足労いただき、ありがとうございます」
俺は不慣れな敬語を使って長官を迎える。 誰も俺に向かって敬語を使わないからだ。 第三部隊の責任者は何をしてるんだ?そいつの顔が見てみたい。
アホ本官?アイツはアホのエセ敬語だから除外する。
「いや、いいんだよ第三部隊長君 君たち第三部隊が勝利したことに比べたら些細なことだよ
ああそこの君、何かつまめるものを持ってきてくれたまえ」
「ついでにコーヒーも頼む」
「わかりましたであります...!」
こいつもこの御方のオーラに押されてるな。
なんと言ったってこの御方は我が国の軍事を取りまとめる戦術総司令長官その人だからだ。
こいつからしたら上司の上司だからな。
「今回の勝利は素晴らしいものだったよ お陰で君の上司であるこの私も閣下から直接勲章を授けてもらったよ」
そう言って長官は胸についた真新しい勲章を俺に見せる。
「こちら、菓子になりますであります‥‥‥」
少し震えた手で本官がお盆に乗った菓子とコーヒーを持ってくる。
「ありがとう、では一つ頂こう」
そうやって長官は菓子を食べてコーヒーを啜る。
「私は今とても気分がいい だからここの責任者である第三部隊長、君にボーナスを支給しようと思う 100万だ」
———え?マジ!?ヒャツホウ!100万だ!何買おうかな〜
やっぱりあの時見た広告のコーヒー豆買おうかな。
ちょっと高かったけどボーナスもあるなら買えるな~
俺はニヤつく顔を抑えながら長官にお礼を言う。
「あいわかった。これからも精進してくれたまえ‥‥‥よ」
バターン!
‥‥‥え?え?長官が倒れた!?
「長官!大丈夫ですか!?」
くそっ、なんでこんなタイミングで‥‥‥ん?
この包み紙は何処かで‥‥‥あっ!!!!
「おいアホ本官!お前工作兵の菓子持ってきやがったな!」
「申し訳ないであります!反省してるであります!」
「きゅっ‥‥‥救護班ー!!」
何アホ信用して確認もせず人に物食わせてんだ!俺のアホー!
◇
「———危なかった。ほんとギリギリ。弱麻痺毒じゃなかったら命に関わってた」
救護班長は危機感のある声でそう言う。
ふ一っ、危ねえ危ねえ。 このアホのせいで長官をあの世に送る所だったぜ。
「じゃあ、もう大丈夫だってことだな。安心安心だ」
「でも治療するために非常用特別治療器材使った。これ使い捨て。とても高い。110万。
部下の失態は上司の責任。だから第三部隊長、お前が払え」
なんで俺が払わないといけないんだよ、と言おうとした瞬間、班長は俺の秘蔵熟成ブレンドコーヒー瓶を持っていた。
「‥‥‥あの班長さん?そのコーヒー俺の———」
「可愛い可愛い私の本官ちゃんにこんな高い請求できるわけない。早くしないと私の手からこの瓶が滑り落ちる」
そうだ、こいつは。第三部隊救護班長は。
———アホコンなんだった。
こいつはアホ本官の為ならあのブレンドコーヒーの瓶も容赦なく割るだろう。
「———っすう‥‥‥まあ確かに俺の監不行届だな 俺が払おう 本官も反省文一枚ぐらいは書いてこい」
俺はカッコつけるしかなかった。
アホ本官からの俺を慕う眼差しを受けながら、投函物は絶対にチェックすると。
俺は、心に刻んだ。大きな代償と一緒に。
隊長が得たものボーナス:マイナス10万
長官からの用:プラマイマイナス
本官からの忠誠心:限界突破
本官の敬愛が籠もった怪文書的反省文(20数枚)




