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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第四話 だから 必要だった
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(8)




 何もかもを思い出した今、これから向かう先で何が起こるのかも分かっていた。

それに恐怖と悲しみに溺れながら、見えない壁を殴り続け、奴隷の姿をした外側の自分に逃げろと訴える。

地盤が悪い道を進むせいで、立位を上手く保てない。

このままでは大事故が起きてしまうと、焦りに涙が溢れ出す。




 それを分かっていない外側のシェナは、どこか外が見える隙間がないかを探している。

この落ち着きのなさに、誰かが舌打ちした。

それに振り向いた時、慣れた視界に広がったのは大勢の人だった。

蹲る者もいれば、横たわって寝息を立てる者もいる。

その隣で寝そべっている者は、果たして息をしているのだろうか。

どれも大人だと思っていた矢先、押し込まれた隙間から小さな2つの光が見えた。

見ると、目を涙で濡らした幼い子どもだ。

怯え、激しく咳き込むと嗚咽(おえつ)まで漏らす。

それを煩わしく思う者が、その子を床に押さえつけて黙らせた。




 その時、姿勢を前に崩した大人の背後から光が漏れた。

シェナは、微かに見える外の景色に吸い寄せられると、傍の大人を押しやり、隙間を覗いた。




 そこからは、この中よりも遥かにマシな空気が薄っすらと入り込んできた。

嘔気を催すこの場は、既に誰かの吐瀉物(としゃぶつ)があるからだろう。

ここから出ようと、必死に情報を集めようとした。




 その途端、鞭の音が響くと馬が速度を上げる。

それに姿勢が崩れた時、新たな音が加わった。

板を打ちつけるこれは、雨だ。

嵐がそこまで迫っており、馬は山の側道を駆ける。




 内側のシェナは目を見張る。

目的地に辿り着いてしまえば、死ぬのを待つだけの場所だ。

嘗て自分がそう聞かされた時を思い出すと、とんでもないと激しく頭を振って立ち上がる。

何が何でも御者を止めるよう、外側の自分に叫んだ。

だがその声も、力強い雷鳴に掻き消されてしまう。




 雷に驚いた馬が暴れ、荷車は激しく揺さぶられると大きく傾いた。

その方向に何十人もの奴隷が(なだ)れ込むと、その重みは、荷車を押し倒しにかかる。




 これに御者が騒いでいると、再び雷が轟いた。

皆の悲鳴が掻き消されると共に、荷車は側道の崖に落ちた。




 荷車の中で掻き回される人々は声を上げ、互いの身体が(もつ)れ、押し潰し合う。

それに巻き込まれながら、シェナは宙に跳ね上げられていた。

転がる荷車は山肌に叩きつけられ、いよいよ砕けると、外の景色が広がる。

人々がそこから瞬く間に飛び出すのを見たシェナは、その流れに巻き込まれる恐怖に息が止まった矢先、海に投げ込まれた。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです! まさか奴隷の子の内にシェナちゃんが宿っていたなんて想像が付きませんでした!!( ; ロ)゜ ゜ 異臭の中に詰め込まれるシーンや子供を黙らせるために床板に押し付けるシーンは怖気が走ります!…
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