第四十五話 少年
一通り二回戦が終わり、三回戦が始まった。準決勝でもある。
こっち側の控え室は俺だけになっていた。皆負けていったのだ。
控え室は戦場への出入り口でもある。硬大は控え室から準決勝を見ていた。
「うわ、すごいな……」
戦場では壮絶な戦いが繰り広げられていた。
一方は凄まじいほどの速さでひたすら攻め、一方はそれを避けていた。まるでさっきの俺だ。
しかし、俺のときとは何かが違う。それはすぐに分かった。
「……マジかよ」
その人は硬大と同い年くらいの少年。硬大には避けられるかどうか分からないほどの速い攻撃を、その少年は余裕どころかつまらないといった表情で避けていた。
……もしかしてあいつが梓を攫った奴か? 可能性は高いな。
少年はしばらく攻撃を避けた後、相手の拳を掴んだ。そしてそのまま片手で60メートル程前方に投げ飛ばした。さっきまで騒がしかった観客席が静寂に包まれる。
少年は一歩も動かない。しばらくして、投げ飛ばされた相手は立ち上がって叫んだ。
「舐めるなガキィイイイイいいいいいい!!!」
刹那、60メートル程離れていたはずの少年が相手の目の前に立っていた。
「……ぐ…………ぐぼっ!?」
それだけではない。少年の腕が相手の腹を貫通していた……。
見えなかった。何が起こったのか分からない。部隊長でもここまで強い奴はいないはず。部隊長の俺が見えなかったのだ。
相手は倒れ、ぴくりとも動かなくなった。腹には大きな穴が空いてあり、そこから大量の血が流れ出ていた。おそらくもう死んでいるだろう。
死体は回収され、少年は戦場を出て行く。俺はあんなやつに勝てるのだろうか。……いや、違う。勝つんだ。勝たなければならない。必ず勝って梓を取り返す!!
準決勝の二回目は俺とダン。この戦いではできるだけダメージを受けずに勝つ。あの少年に勝つために最低限それだけはやっておく必要がある。記憶がなくてよく分からないが、一応隊長だ。戦い方を覚えていなくても体が覚えているはず…………うん。
俺は控え室を出て戦場へ出る。ほぼ同時に向こうからダンが出てきた。一歩一歩歩くたびに血臭が鼻をつく。再び観客席は喧騒としているが、そこから唯果の声は聞こえてこない。おそらくさっきの戦いが原因だろう。
お互い目の前に来たところで足を止めた。
「なかなかやるな硬大。只者ではないことは、戦いを見ていたから分かる。だがオレには勝てない。フラグじゃないぞ? いくらお前でも三部隊長のオレには勝てねえ」
名前で呼んでくれるのは嬉しいんだが、舐められてる気がする。
「あんた隊長だったのか。実は俺も隊長なんだよ。記憶ないけど」
「マジかよ。しかも記憶ないって……。まあいい、隊長同士なら少しは楽しめるかもな。じゃあそろそろ始めようか!!」
刹那、ダンの拳が飛んできた。




