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双天の共鳴者  作者: 月山
第二章-2「瞋恚の炎」
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同調する想い

 奔る。駆ける。

 雨雲に覆われた街を、ただひたすらに西へ。

 家屋を足場に跳躍を繰り返し、出来るだけ最速で目的地へと向かう。


「くそっ、今にもバリケード破られちまいそうだな……っ!」


 敏也はエリーネの左腕を首に回すように担ぎ、また、彼女の右腰を自らの右手で支えるようにしながら力の限り屋根を蹴り、肉体強化を使えない彼女を伴いながら移動を続けている。そして、先ほどの発言は過剰なまでの苦々しさを含んでいた。


 その視線を追えば、そこはこの街の西側にあるバリケード。

 しかし、その向こう側には魔獣・タイプβの姿が垣間かいま見える。軍が必死に応戦し、どうにか接近を拒んでいるようだが、タイプβの再生能力の前には気休め程度でしかない。壁が破られるのは時間の問題だ。


 それを聴いた、敏也とエリーネの前方を移動しているマサルは応える。


「ああ、急がなくては。街中で会敵することになるとこちらが不利だ。なにせ、数は向こうが多いのだからな」


《……どれだけ数が多くても斃す。それが私たちの役目》


「気負いすぎんなよ? 紫苑。対魔装甲でもあのデカいやつの前では紙みたいなもんなんだからな。昼になる前に運び込まれた大破した魔動機、お前も見ただろ?」


 インカムを通して届いた紫苑が何気なく零した言葉に敏也は息を吐き、自分たちの上方を警戒しながら飛行する彼女の機体を見上げながらそう言った。


 格納庫に搬入された、コックピット付近を刺し貫かれた魔動機。あれをやったのが昨日現れたタイプβだという。また、今回現れたタイプβは以前の個体よりも強力であることまで勘定に入れなければならない。

 となると、今回出現した個体がどれほどの攻撃能力を備えているかわからない。

 なれば、警戒し過ぎ、ということはないだろう。可能な限り敵の戦力は高く見積もって臨むべきだ。


 敏也からの言葉に紫苑はどうやら、わかりきったことを言うな、とでも思ったらしく、その声に不機嫌さを滲ませた。


《……言われなくてもわかってる。そして、その言葉はあなたにこそ贈られるべきもの》


「どういうことだよ?」


《……この前の三珠市での一件、あなたは意識が朦朧としていたにも拘わらず、大河とエリーネを庇うように前に出た。忘れたとは言わせない》


「あ、あれはな、仕方なかったというか……」


《……総じて無知無謀、愚か、愚図。反省するべき》


「……悪かったよ」


 辟易としながら敏也は謝罪の念を示す。その佇まいから、大して申し訳なく思っていないことが伺える。


 仕方ないだろ、と敏也は思ってしまっていた。

 まさか、今になってそのことを穿り返されるとは思っていなかった。まして、紫苑に批判されたのは緊急事態における行動である。そのことをとやかく言われたとて、「はいそうですか」と真っ向から受け止めることなど出来るはずがない。

 アレは、あの時あの場所では、きっと最善の行動だったのだから。


「私も……大神くんがあの時のような行動に奔るのは嫌です」


「エリーネ?」


 ふと、抱えきれなくなった物を落としてしまったようにエリーネが、過ぎ去る風によって掠れた声で呟いていた。

 敏也は思わぬ乱入者に面喰らい、ほとんどすぐ傍にある彼女の顔を見据えた。


 寂しそうに細められたエリーネの視線は、遥か先へと向いている。ただ、その空色の瞳が何かに揺れていることだけは敏也にも理解できた。


「無茶は……しないでくださいね。私が居なくなることをあなたが嫌がるように、私もあなたが居なくなるのは嫌なんです」


「……へ? え……えっと、あの、さ……それってつまりどういう……?」


「――あっ。ふ、深い意味なんてありません! 勘違いしないでください! あ、あなたが居なくなると実験に支障が出るというだけですからっ。……それだけなんですから!」


 エリーネの言った内容に心を乱された敏也は、その表情を戸惑い一色に染めながら彼女にその真意を問うていた。

 が、肝心のエリーネは自分が口にした言葉と誤解されかけている事態に今更気付いたのか、その顔を熟れた林檎のようにし、彼とは反対の方向へと顔を逸らしている。


 敏也はちらりと視線を周囲に送り、状況を確認する。

 前を行くマサルと奈々はこちらを向いては来ない。空中を行く大河と紫苑も特には言ってこない。つまり、今の遣り取りを聴かれてはいない、と見ていいのだろうか。


(あっぶねー。またからかわれるところだった)


 ほっと胸を撫で下ろした後、自らが支えながら共に往く彼女――相変わらずこちらから顔を逸らしているエリーネを見やり、敏也は笑みを零していた。


 敏也とエリーネは気付いていないが、他の四人が彼らの遣り取りを小さく笑みを浮かべながらインカムを通して拝聴していたことは想像に難くないことである。



 バリケード近くの道路、その脇にある家屋の屋根まで到着した敏也たち。だが、彼らの目に映る戦況は芳しくなかった。

 ――タイプβの巨体が、八メートルを優に越すバリケードに圧し掛かっているのだ。装甲が軋み、紙のように撓り、今にも倒れ込んできそうに見える。


 軍や治安維持部隊の魔動機、魔術師、歩兵たちが必死に攻撃を加えているが、どれも決定打とはなっていない。タイプβは鬱陶しそうに顔を顰めるばかりで、その動きが衰える兆候は全くと言っていいほど感じられなかった。


「近くで見ると尚更でけーな。みんな、どうする?」


「そうですね……」


 そんな状況を観察していた敏也が問うと、彼に支えられているエリーネが考え込むように口元に手を当て、


「……まずはここから遠距離攻撃で様子を見るのが得策かと。私たちはタイプβに関しては映像以上の情報を持ちえていませんし、迂闊に近付いて予想外の攻撃で壊滅――となるのだけは避けるべきだと考えます」


「俺もエリーネ嬢に同意だ。近接戦闘に入るのは、いよいよどうしようもなくなってからでも遅くはないだろう」


 マサルも賛同し、奈々や大河、紫苑も特には異論はないらしく、反論してこない。

 大河と紫苑は自機たちを敏也たちの上空で待機させ、戦況を見守っている。

 と、その時、


「なんだ?」


 突如、遥か先で戦っていた部隊が慌てたように隊列を乱し始めたのが見えた。よくよく見れば、魔術師たちや歩兵たちはなにやら耳に掛けたインカムを押さえながら取り乱し、空中にいる魔動機たちは急激にスラスターを噴かせ、高度を上げ始めた。


 ――ついにバリケードが破られたのか、と勘繰る。


 だが、目を凝らしてみてもまだバリケードは健在だ。タイプβの重さによってしなってはいるものの、未だに倒れ込む事態には陥ってはいない。

 では、なぜ――


 答は、数秒後に訪れた。


《……ッ! 大河!!》


《わかってる!!》


「おい、どうし――うわっ!?」


 突然驚愕したかのような気配を零し、機体を翻させた大河と紫苑。

 それを訝しんだ敏也たちが見上げると、二人が操る魔動機が手持ち火器を後ろ腰部に装着。それから間髪入れずに降下、四人を抱えるようにしてその場を飛び退いた。紫苑は敏也とエリーネを、大河はマサルと奈々をそれぞれ抱えている。


 いきなり機械の腕にかかえられた四人は何事かわからず困惑していたが――そんな彼らの耳に地響き、さらに、狂喜を孕んだ獣の叫びが聴こえてきた。

 そして、


「なっ!? ……嘘だろ?」


「……こりゃやばいねぇ。冗談抜きで」


 ――二体目のタイプβが、バリケードに凭れかかっていたもう一体の身体を踏み台とすることで、バリケードの内側へと飛び込んできたのだ。

 それはもう、こいつは走り幅跳びの選手かと見紛うほどに綺麗な放物線を描きながら滑空し、先ほどまで敏也たちが居た家屋付近を根こそぎ吹き飛ばしながらそれは着地した。


 家屋の破片、家具、家電、自動車、あらゆるものを空へと吹き飛ばし、粉塵を周囲に舞わせ、念願が叶ったかのように喜びの咆哮を上げているその獣。

 明らかに、これまでの個体とは次元が違う身体能力だ。しかも、東側のバリケードに現れた三体とも、未だに西側のバリケードに凭れている個体とも違う。その体躯は一回りほど大きく、また、その俊敏性はこれまでの比ではない。


 ――上位種。それも、タイプβの中でも選りすぐりの個体だろう。


 その獣はバリケード前で立ち尽くす軍を見渡すと、その口元を吊り上げたかのような気配を零した。そして、背を向ける。


「っ、不味い! あいつ、こっちを無視してシェルターに向かう気だ!」


「ああ、間違いない! ――追うぞ!」


《……了解》


《うん!》


 家屋を跳ね飛ばしながら駆け出したタイプβを見ながら敏也とマサルは口々に叫ぶ。すると、彼らを抱えている紫苑と大河が賛同し、すぐさま機体にスラスターを噴かせ、その背に追い縋る。

 ――が、


「うっ、く……!」


「っ! 待ってくれ、紫苑! 俺たちを降ろしてくれ!」


《……? 急にな――エリーネ?》


 懇願するように声を張り上げた敏也に紫苑が問おうとすると、モニター上には苦しそうに顔を顰めているエリーネが映っていた。それを見た紫苑は緩やかにスピードを落とし始め、ついには機体を停止させる。

 突然止まった紫苑に気付いた大河が、スピードを少しも緩めずに通信を飛ばしてくる。


《どうしたの、紫苑っ?》


《……問題ない。先に行っていて》


《……わかった》


 さすがは相棒と言うのか、多くの言葉を交わさずとも何か事情があることを察してくれ、大河はマサルと奈々を抱えたまま先へと飛び去っていく。

 空中で滞空している紫苑機、その内部にいる紫苑は自機の腕に抱えさせている敏也たちへと通信を送る。


《……エリーネ、大丈夫?》


「っ、大丈夫……です」


「大丈夫じゃねえだろ。お前は肉体強化がないから……」


 常人程度の肉体硬度しか持たないエリーネは、猛加速した魔動機のスピードによって身体に僅かながらダメージを負っている。もっと早く気付くべきだった。が、誰もが先ほどの荒唐無稽な出来事に面喰っていたため、エリーネ自身でさえも忘れていたのだろう。

 敏也は唇を噛み締め、紫苑機の頭部を見る。


「紫苑! 俺たちを降ろしてお前は先に行け! 俺はエリーネを連れて地上から行く!」


《……わかった。それがきっと最善》


 紫苑は短い思考で納得し、蚊ほどの逡巡もなく機体高度を下げ始めた。そして、一軒の家屋の上に二人をそっと降ろす。

 仲間たちから気を遣われているエリーネは敏也に支えられながら申し訳なさそうにし、


「ごめんなさい。私のせいでまた余計な時間を……」


「んなことねえよ。俺たちがお前の身体のことを失念してたのが悪いんだ。ごめんな、痛かったろ?」


「いえ、もう治まってきましたし、心配は無用です」


「そっか」


 そのエリーネの小さな強がりに、敏也は微かに笑む。平然と軽口を叩けるのなら、身体に深刻なダメージを負ったというわけではないということだから。

 そんな二人をほっと一息吐きながら見ていた紫苑は表情を引き締め、


《……じゃあ私は先に行く。合流はなるべく急いで》


「ああ、それまでアレの相手、頼むぞ」


「お気を付けて、成瀬さん」


《……うん、そっちも》


 そう言い残すと紫苑は操縦桿を操作し、機体を上昇させる。そして、敏也たちから十分に離れたのを見ると全身のスラスターを全開で噴射し、シェルター方面へと飛び去っていった。


 その後に続くように、恐らくは西側のバリケード班から来たと思われる魔動機数機が飛んでいく。どうやら、軍もあちらを魔動機部隊に追わせることにしたようだ。


 魔動機の推進剤の燐光が舞う中、残された二人は目を合わせると、


「急ごう」


「はい」


 頷き合い、その場を後にした。



「大河! ヤツの頭上に魔動機を近付けろ! 俺が叩き潰す!」


《わかった!》


 マサルが声を張り上げ、大河がコックピット内で頷く。

 すると、それまでタイプβの背後を追うように飛行を続けていた大河機が加速を開始。スラスターが焼き切れるのではないかと思うほどに光を放ち、巨大な獣の足を追い越し、腰を追い越し、背中を追い越し、ついには首付近まで追い付く。

 そして、


「行くぞ! ――八咫神! 援護だ!」


「あいよ! 土属性以外は苦手なんだけどねぇ……っ!」


 その言葉を皮切りにマサルが大河機の腕を蹴り、斜め下方向へと跳躍。地球の重力と、強化された脚力、さらにはそれまで大河機によって発生していたスピードを相乗し、まるで弾丸の如き速さで跳び出す。

 と、その瞬間に奈々は魔力を練り上げ、タイプβに右手を向けていた。


「術式展開!」


 直後、碧色の魔方陣が展開され、そこからカマイタチのように鋭利な風が四つ生み出される。それらは獣の四肢それぞれに狙いを定めたように飛来する。


 一方、高速で落下しているマサルは、


「強化全開。――潰れろ!!」


 獣の後頭部に激突する瞬間、振り上げた両拳を組む。次いで、肉体を最大強化。ただでさえ魔術的な素養の高いマサルの身体能力が底上げされる。――そして、最大筋力に物を言わせた鉄槌の如き豪胆な一撃をそこに喰らわせた。

 同時に、奈々の放ったカマイタチが獣の四肢を薙ぐ。それぞれ膝・肘の裏辺りを浅いながら切り裂かれ、血を撒き散らしながら肉片が飛ぶ。


「――――ッ!」


 その連携攻撃を喰らったタイプβはバランスを保てなくなり、叫び声を上げながらつんのめった。それまでに獣自身が高めていた速度もあってか、派手に転がりつつ周囲にある建築物を巻き込み、辺り一帯を弾け飛ばしていく。

 至近距離で攻撃を終えたマサルはそれに巻き込まれそうになるも――


《まったく、ヒヤヒヤするね、君たち魔術師の強引な戦い方は》


「すまない、助かった」


 マサルが獣の肢体の乱回転に巻き込まれる寸前、そうなることを見越した上で急接近していた大河機がマサルを拾い上げ、即座に離脱していた。

 現在は停止したタイプβから少し離れた地点で滞空中。しかし、監視の目は休めていない。


 アレは、この程度で死ぬような生物ではないのだから。


 ズン、と右腕を着く。次いで、上半身が持ち上がる。ゆっくりと首が上を向く。ギラついた歯と二本の鋭利な牙、そして口から絶えず漏れ出る唾液。苛立ちを吐き出すように地を打ち付けた長き尾。赤く発光する目。

 その全てが、自らに屈辱を与えた三つの存在を見据えていた。


「――――ッ!!」


 獣は怒りと憎しみをふんだんに滲ませた咆哮を上げた。その圧倒的な声量は、まるで大気に揺れが生じたかのように周囲を軋ませる。

 長い、長い咆哮だ。


 その間に、紫苑と味方魔動機部隊が到着したようだ。マサルたちが来た方角から紫色の魔動機『レガリア type-S』と、編隊を組んだ魔動機たちが飛来した。

 紫苑は自機を大河機の近くに着けると、


《……状況は?》


《足を止めることには成功したよ。……注意も……というか、僕たちアレにすっごく恨まれちゃってるみたい》


 大河がそう言ってモニターへと目を向けた瞬間、味方魔動機部隊がライフル、レーザー砲をタイプβに向け、一斉射を開始した。

 それでも尚、獣は咆哮を止めない。まるで蚊に刺された程度だとでも言いたげに、雨のように降り注ぐ暴力を無視し続けている。ただ、その禍々しい眼はこちらを向き続け、確実に殺意を伝えてきていた。


「うっへぇ、貧乏くじぃ……。マジめんどい……」


「こちらの攻撃がほとんど意味を成さない相手に狙いを定められた、か。シェルターへ向かうことは阻止できたが、確かにこれはこれで面倒だ」


 奈々のぼやきにマサルも同意するように諦観めいた言葉を漏らす。

 そんな時、


「無事か!? みんな!」


「お待たせしました!」


 どうやら敏也とエリーネも到着したようだ。大河機が佇む場所の下方にある家屋の上に、敏也に肩を支えられたエリーネの姿が見える。

 その姿をセンサーで捉えた大河が通信を飛ばす。


《うん、無事だよ。……でも、アレが僕たちを狙ってくるかもしれないけど》


「アレって……すっげー睨んできてるな。こえーわ。……なあ、エリーネ。俺たちも仲間だと思われる前に逃げちゃわない?」


 などと、敏也は傍にいるエリーネに提案したのだが、エリーネは即座に首を振って却下を示した。


「無駄ですよ。タイプβはさっきから私たちのことを見ています」


「マジで!? なんでさ! 恨まれるようなこと、俺とエリーネはやってないぞ!」


「さあ……。なんにせよ、時すでに遅し、ということです」


 煌々と瞬く両眼に睨み据えられた敏也はその身を竦み上がらせていた。エリーネも普段通りの応対をしているが、どうにも身体が強張っていることが密着している敏也には感じ取れた。

 だからこそ、敏也は言う。


「ったく、仕方ないなぁ。――全力で行こう、エリーネ」


「ええ、大神くん。初めから、全開です」


 二人の意思の強さを滲ませた精悍な表情から紡がれた決意。

 直後、二人の身体から燐光が舞い始める。それはさながら雪。夏場にも拘わらず降り始めた雪は、どこか寂寥感を伴いながらこの世に顕現している。

 そして――


「「同調開始!」」


 二人の身体を核とするように歯車が出現。――燃える大火を思わせる赤と、神聖さを感じさせる銀の歯車が、互いを優しく撫で付けるように触れ合う。


〈共鳴率六十七パーセント。術式『ギア』――起動〉


 起動が成った途端、二人の放つ魔力が、目には見えないにも拘わらず、まるで濁流となったかのように膨れ上がる。

 周囲に存在する魔動機たちに内蔵されている、魔力を捉えるセンサーは狂ったように鳴り響き、搭乗者たちを困惑させる。さらに、それまで咆哮を続けていたタイプβはピタリと動きを止めていた。


 刹那、雪のように舞っていた粒子状の魔力たちが四散する。後に残ったのは寄り添い合う敏也とエリーネ。だが、今の彼らが放っている魔力は、一般の魔術師とは一線を画すレベルだ。

 猛る魔力は超越者の証。躾の成っていない獣など物ともしない。


「そうだ。俺たちならアレを倒せる!」


「たとえ再生するとしても、絶えず焼き尽くせば!」


 敏也の持つ炎刀の破壊力ならば、恐らくではあるがそれも可能。再生する端から燃やし尽くし、炎を生み出し続ければ、どれだけ生命力に長けた存在でも殺し尽くせる。

 そのように力強く発言した敏也とエリーネの表情は、言い知れぬ自信に充ち溢れ、必ずそうすることができると確信していた。


 その様子を見ていた仲間たちは、各々が違った表情を見せている。


「……前よりも魔力が大きい。これが、四神が躍起になって推し進めている計画、その成果か」


 マサルはそう一人ごちる。


「はてさて、どうなることやら。できれば無理はしないでほしいんだけどねぇ」


 奈々は不敵な笑みを浮かべながら呟く。


《……父さん、あなたはいったい何を生み出そうとしているの》


 大河は困惑しながら堅く操縦桿を握り込む。

 そして、


《……? type-Sが怖がってる……?》


 紫苑はそのような感触を覚えていた。自機が何かに怯え、震えているような――無論、機械が自発的に震えることなど有り得ないということは紫苑とてわかっている。が、それでも『震えている』と、彼女はそう感じたのだ。

 紫苑はモニターに映っている敏也とエリーネの姿を鋭く見据えると、


《……あなたたちは、本当に人間?》


 そう、淡々と呟いていた。


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