赤色と、走りと、柚希
「よーい……ドン!!」
その合図と共に攻撃を仕掛ける。
玲緒は、泥沼の地面を勢いよく蹴り一気に師匠に詰め、殴りかかる。
「死ねぇー」
師匠は俺の拳を左手一本で易々と受け止めると、視認できないほどの速度で、右手に持った杖を閃かせた。
ドガッ!
「ガハッ……!痛ってぇな、ちょっとは手加減しろよ」
「おいおいおい7年修行してそれかぁ先が思いやられるわ」
「うるせぇくそジジイ」
そこからは、殴っては打ち伏せられる泥沼の攻防が延々と続いた。
19時45分
60分間俺は本気で打ち合ってんのに師匠に攻撃が少ししかあたらねぇ、しかも当ててんのにほとんど攻撃が効かねぇやっぱ師匠は強ええな。
「おい、疲れてきてるな?休憩でもするか?」
師匠が煽り顔で訊いてきた。
「うるせぇ……」
俺はさらに1時間、意地だけで攻撃の手を休めなかった。
「やめじゃ」
突然、師匠が動きを止めて言った。
「あ、なんで止めんだよ」
「もう2時間も水分補給してない、そろそろ補給しろ。」
「うるせぇ、まだやるぞぉ……」
急速に視界が暗くなり、俺の身体は糸が切れたように泥の上へ倒れ込んだ。
「ほら言わんこっちゃない」
師匠は呆れながら俺を担ぎ上げ、近くに座らせた
「なぁ起きろおーい」
ペチペチと頬を叩かれる。
「……まぁ聞こえないか。なぁ、玲緒…………」
師匠が何かを呟いている。だが、薄れゆく意識の中では何ひとつ言葉としてわからない。
その時、夜空の向こうから、赤い羽を持った「何か」が来るのが見えた。
俺の記憶は、そこで途絶えている。
翌朝、午前7時。
「……ん……あ……」
目を覚ます自分の部屋のベットで寝ていた。
「あ……俺は倒れたのか。また負けか……やっぱ勝てねぇな」
「はぁぁぁー、考えてもしょうがない、よし起きるか」
玲緒は起き朝食を作りにキッチンへ向かう。
「ん、なんだこれ」
キッチンに向かう途中、玲緒は、テーブルの上に紙がおいてあることに気付いた。
「あ、師匠からか……えっと、何々?」
ごめーーん少し用事ができたから少しの間帰れませーーん、めんごめんご。あ、そうそう環ちゃんとはうまくやれよーーー」
「…………」
グシャグシャ
俺は、手紙を握り潰した。
「なんだこの手紙!!口調がすげぇむかつく、てか環とのことはお前が原因だろうが、あーー家帰ってきたらぜってぇ潰す!」
「マジで潰す!!」
怒りながら時計を確認する
「やば、学校間に合わねぇー。あのクソみたいな手紙読まされたから飯作れねぇじゃねーか。
あーーどうしよ卵がけご飯にするか!」
急いで冷蔵庫に向かう。
「えっと卵と、めんつゆ」
たまごを割めんつゆを一回しかけ食べる。
食べてる途中ふと思い出す。
「なんか昨日……赤い羽のやついなかったか
うーーーーん、まぁいっか
急いで食うぞー」
そんなこんなで家を出たのは8時である。
そしてホームルームは、8時15分
さらに家から学校まで20キロ
玲緒は間に合うのか!!
8時3分
「はぁ、はぁ、はぁ……、家から本気で走って5キロ、間に合うかこれ」
8時14分
本気で走り続け、あと500メートルで学校につく
「よっしゃ間に合った!あとちょっとで学校だーーよし、さらにスピードあげるぞーーーー」
「え!?」
そして気付いたら俺は空にいた。
「え?あ?え?あ?なんで俺、空にいるんだよーー!?おい!て言うか学校どんどん遠くなっていくじゃねぇえか、なんだよこれ」
「うるせぇガキじゃの……、もうちょっと静かにせんかい」
知らない声だった。
恐る恐る声の主の方を見てみると赤い羽、赤い顔、長い鼻のやつが俺を抱えながら飛んでいる。
もしかしこれ誘拐ってやつか。
「おい、やめろ離せよー!」
「おい、暴れるな、理由は後で話す、今は黙っていろ」
「やだね。誰が黙るか今すぐ離せ」
キンコーンカンコーーーン
「おい、しかも、学校始まっちゃったじゃねーか、あーーーあ、あとちょっとだったのに」
「本当にうるせぇやつだな、お前ホントに茨木にそっくりだな。」
「あ!誰だよそれ」
「お前あいつから何も聞いてないのか?」
「だから何のことだよ」
「はぁ、あいつは変わったなホントに」
まじで、何なんだこいつ
てゆうか見る見る内に学校がゴミのように小さく見える。
いや早ぇなこいつ
てかなんだこれ人がいっぱいいる気持ちわりーー、それに巨大な街頭モニターがある。
8時21分
画面の中のアナウンサーが、引きつった真面目な顔でニュースを読み上げ始める。
「速報です。8時14分頃、レベル5、レベル5の鬼が現れました。場所は京都府京都市です。被害予想地域は、は関西一帯、および中部地方に及びます。現在、現場には鬼討伐部隊「柊」が向かっているそうです。お近くの方は安全な場所まですぐに逃げてください。
そして今、中継が繋がっております。現場の藤田さん。
「はいこちらヘリコプターから安全に撮影しております、現場の藤田です。こちらですね今現場なんですが杖を持った白髪で頭に角が生えている鬼が見えます。そしてたった今、柊が到着し、鬼退治が始まっております。そして半径70mに最低接近防衛ラインとして、結界をはったとのことです。」
「おい、柊は写すんじゃねぇよ」
カメラが消える。
「藤田さん藤田さん
中継が切れたようです、と言うことでお近くの方は、安全な場所まですぐに逃げてください
繰り返します……」
おいおいおい待て待て、俺さっきまで京都にいたんだぞ、しかもあれ環の家じゃねぇか。そこで鬼が出たのか、もし俺が俺がホントに鬼で京都にいたら俺がやられてたかもしれないってことか、まぁこいつのお陰で助かったってことか。
「おい、鬼ってどう言うことだ鬼なんて本当にいるのか?」
「あぁ、いるわ」
「じゃああの鬼は、なんだ?」
「…………………」
「じゃああいつはお前が知ってる鬼か?」
「………………」
「なんで答えねぇ教えろ」
「………………」
なんでこいつさっきから無視なんだ、知り合いなのかこのテレビに写ってた鬼と?
ん、待てよ、赤い羽?こいつ昨日の夜、師匠と一緒にいたやつか。
師匠?まてまてまて、白髪で杖を持ってる。そんなわけない、嘘だよな、たまたまだよな、そんなやつたくさんいる……
「なぁ、もしかして……あれ、俺の師匠じゃねぇよな?」
「………………」
天狗の沈黙が、何よりも雄弁に答えを物語っていた。
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。頭の先から指先まで一気に血の気が引いていくのが分かった。冷や汗が背中を滑り落ち、ニュースのアナウンスの声が遠くの雑音のように聞こえなくなった。」
ウソだろ……? あのクソジジイが、ニュースで言ってる「レベル5の鬼」……? 討伐部隊に囲まれてる……!?
胸の奥が冷たく冷え切っていく感覚がした。
「……………………」
「おい、おい、何か答えろよ」
「違う……」
「ほんとか?ほんとなんだな」
「………………」
こいつ多分嘘ついてる。あれは師匠なんだ。
鬼討伐部隊ってあの師匠が言ってた強いやつらだよな。師匠ならなんとか……それか俺が…………
無理だ怖い怖い怖い怖いこわい、誰が師匠を助けろ、誰か師匠のところに………………
(いや違うだろうが)
玲緒の中に赤くなにかが燃える感覚があった。
俺はあの人がいなかったら死んでた、それに俺に稽古までつけてくれてた。俺を生かすために助けくれた。俺が助けに行く、ここで俺の命が終わろうともぜってぇだ。
「おい、赤色俺を下ろせ」
「無理だ」
「いいから下ろせ」
赤く鼻が長い男は抱えてた手を緩めた。
どーーーん、玲緒が空から着地した。
「よっしゃいくぞーーー」
(今何が起きた……?)
「てか、おい待てごらぁ」
いや、はやーーあいつもう見えなくなるとこまで走ってやがる。
いや、こわーーーあいつまだ小鬼だろ?足の早さなら5怪鬼ぐらいはあるな。
「はぁーーこっからどうするかなーーー」
8時24分
玲緒は居た場所から、京都の約450キロを全力で、一度も休憩せずに本気で走る。
「はぁはぁはぁ、あと少しあと少し死ぬなよ師匠ーーー」
8時25分
京都・結界前
「なぁなぁ、今日これ終わった後、飯行かね?」
「あーいいね行こ行こ!」
「あーーでもレベル5だろ。いつ終わるかわからないな」
「まぁでも今日の討伐には、あの最強の鬼、酒呑童子討伐、源頼光四天王、渡辺綱の血族者
渡辺柚希さんだぞ すぐ終わるだろ。」
「まぁだよな」
バリーーーン
「え、おい、何か結界壊れてねぇか」
「あ?そんなわけねぇだろ」
後ろを振り向く
「ってマジじゃねぇか。」
「おい連絡、連絡急げ」
「あぁ緊急緊急、何者かが結界内に侵入したもようそちらで確認をお願いします。」
8時24分
京都・結界内
「なぁじいさんもうやめよや、レベル5って聞いて俺が出たけど自分弱すぎやろ?これならうちの部下の練習相手になってもらったほうがよかったやろな。」
「ふははは、若造が一つ教えてやろう、強者が、時間を稼いでいる時それはお前の弱さを証明している」
「ふ、何が強者やねん、そんなボロボロで冗談言うならもっと、ましなこと言えや」
バリーーン何か割れた音が遠くから聞こえた。
「ん?何か結界なくなってへんか?」
耳に通信機のようなもので無線がはいる
「緊急緊急、何者かが侵入したもよう確認お願いします。」
「結界部隊はそんな柔い結界はって何しとんねん、まぁ、まだ腕が鈍ってんねんちょっとは楽しませてくれよ!」
8時26分
玲緒到着
玲緒は息を切らしながら言った。
「はぁ、はぁ、はぁ、おい師匠、大じょ…………」
そこで見たのは衝撃的な現場だった。
家のほとんどが崩れ原型がもう何もない状態、
師匠の姿は角が生えていて、半分赤く、右手にはこん棒、それに……
そして、師匠の目の前にいるのは、左手に血がついた刀を持ち、ポッケに右手をつっこむ身長180cmの黒髪センター分けの容姿が整ってる男がいた。
「お……おい、どうしたんだよそれ……なんだよ、その姿……」
崩れ去った家の瓦礫の中に立つ師匠の頭には、黒い角が生えていた。だが、そんな姿は今は、どうでもよかった。
「あーーこの姿か。黙っててごめんなー、わし、鬼だったんだーー、てへ」
師匠は鬼の姿になっても変わらない、あの優しい笑顔を浮かべた。その笑顔を見た瞬間、俺の視界が一気に涙で歪んだ。違う、俺が驚いてるのはそんなことじゃない。
「ち、ちげぇよ……鬼のことなんかどうでもいい! なんで……なんで……!」
師匠の右肩から先は消え去り、そこからダラダラと赤い血が地面に滴り落ちていた。胸が押しつぶされるような激痛が走り、俺はぐしゃぐしゃに顔を歪ませて叫んだ。
「なんで……」
「なんで……」
「なんで腕がねぇんだよーーーーーーー」
辺り一帯に玲緒の声が響き渡る。
最後までお読みいただきありがとうございます!
これからの玲緒に何が待っているのか、気になる状態で終わってしまってすみません。
そして3話には「え?」となることがあります。
お楽しみに。
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3話も、できるだけ早く出します。
次回もどうぞお楽しみに!




