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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画

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91話

目的地に到達。

このポータルは先日カリナが昨日下見に来訪時、設置したものだ。


改めて小屋全体に隠蔽処置を施し、歩き出す1行。

ヴォレス入口へと向かい、列の最後尾に並んですぐ、美羽から声を掛けられる。


「それにしてもマスター。よくドレスなんて用意出来たねー?」


そう言って彼女は自身の体を見やり、最後はその場でくるっと1回転してみせた。


今日の彼女はツインテールではなくアップにした髪型。

白いドレスを身に纏い、イヤリングやブレスレットを身に着ける等。

いつもの可愛らしさとは異なり、大人っぽい雰囲気を醸し出している。


「私の分まですみません…。」


カリナは案内と護衛を買って出はしたものの、まさか自分までドレスを着る羽目になるとは思っていなかった様だ。

先程から顔を赤くし、いつも以上におとなしく、しおらしい。


それがかえって健気に見え、可憐だと捉えられたらしくどこの令嬢だとの声があちこちから聞こえて来る程だった。




「商国の方から案内状を貰ってから、今日の為に色々と準備したんだよ。さっき掛けた『換装(コンバージョン)』もその1つだね。」


換装は既存の自動換装(オートコンバージョン)スキルに手を加えて創った魔法の事で、服装だけでなく髪型やアクセサリーを変更したり、新たに加える効果を持つ。

これにより美羽達は初めてのドレス姿を体験する運びとなり、屋敷を出る前から少しテンションが高めだったりする。


…カリナとは別にもう1人を除いて。


「………。」


「…んだよ。」


膝下までの青いドレスに身を包み、両耳にイヤリングを装着した雫が後ろにいる火燐へと視線をやる。

今の火燐はいつもの無造作(ボサボサ)な髪型ではなくストレート、しかも真っ赤なロングドレス姿と来た。


これはこれで似合ってはいるのだが、普段とのギャップが凄まじく出発前にほぼ全員から目を見開かれた。

2度見3度見は当たり前、雫に散々(からか)われたとも。


「ぷふっ。何度見てもやっぱり変。」


「はっ。ドレス姿になっても色気が何もねぇガキがほざいてやがる。」


「…!」


あの時の再現とばかりに雫が火燐を笑うも、出発前と違い、今度は火燐から煽られる形に。

これにカチンと来た雫は火燐の両頬を引っ張り、火燐も負けじと引っ張った為にキャットファイトへ発展。


翡翠と楓が慌てて2人を止めに入り、凛と美羽は相変わらず仲良いなぁとほっこりする。


「…良かった。こちらにおいででしたか。」


そこへ、後ろから暁が声を掛けて来た。

彼の後ろに旭も来ており、どちらもいつもの和服ではなく正装仕様に。


「あれ、暁に旭?どうしてここへ?」


「紅葉様から、凛様達だけでは心配との事で向かうよう仰せつかりました。」


「僕達だけではって…紅葉は心配性だなぁ。」


暁の返答に凛は再びほっこりとした様だが、紅葉達は異なる。

凛がいくらフォーマルな装いをしようが外見上は少女でしかなく、カリナや美羽達も女性。


周囲へ牽制する意味も込め、男手が必要との判断から暁達が派遣されたのが真相だったりする。


「はは、そうですね。」


だがわざわざ伝える必要性はない、と流すだけに留める暁。

些事(さじ)は受け持つので主はどうか心安らかに、堂々として貰えればこちらは満足…との願いから来ている。


そんな彼だが、早速追い掛けた甲斐はあったらしい。

凛達に声を掛けようと、周囲で様子を窺(静かになるの)っていた(を待っていた)10人以上の者が先手を打たれたと舌打ち。


「それにしても暁。いつもの服装も勿論だけど、その格好も良く似合ってるね。」


「あ、ありがとうございます…。」


彼らを横目で睨んだ暁だが、半ば不意打ち気味に凛から褒められ、照れ臭くなったのだろう。

赤面しながらそっぽを向き、ニヤニヤと笑う旭が視界に映り何となくイラッとしたので彼の横腹へ1撃(パンチ)


「理不尽!」と叫びながらその場で(うずくま)る旭を、暁は華麗に放置。

笑顔で凛と話をし始め、そこに美羽も参加。

等としている内に(キャットファイトに飽きた)火燐達や復活した旭も混ざっていき、凛達は益々周りから注目を集めるまでに。




10分後


周りから品定めや好奇の視線を浴びつつ、3割程列が進んだ。

そしてやはりと言うか、彼らの極上の見た目から口説かれたり、強引に連れて行こうとする輩がいたが、全て断るか地に伏すとの結末で終わる。


俄に騒がしくなった所為か、前方から兵士と思われる3人組がやって来た。


「騒ぎがあると聞いたのですが…あれは貴方達が?」


先頭に立つ女性兵士が談笑中の1団に問い掛け、続けて少し先の位置で倒れている男性達に視線を向ける。


「あ、はい。勧誘をしつこく行い、最後は襲い掛かって来たのでこち()らの()2人()で対処させて頂きました。」


応えたのは凛。

パッと見男装の麗人…風の少女、しかもとんでもない美貌の持ち主故、一瞬我を忘れそうになる。


「んんっ、成程。すみませんが何か身分を証明出来るものをお持ちではないでしょうか?」


「身分証になるかは分かりませんが…。」


それでも、職務を全うする姿勢は素晴らしいの1言。

尤も、相手の懐(と見せ掛けて無限収納)から取り出された、ロール状の羊皮紙と封筒を読むまでの短い間にはなってしまったが。


「拝見します。」


開かれた羊皮紙には、ジラルド伯爵が凛の後ろ楯になる旨の記載と捺印(なついん)がされていた。

つまり凛の身に何かあれば帝国貴族が黙っていない、不祥事が起きたら責任を持つと言う意味に繋がる。


これを読んだ女性が「…え?」と固まり、もう片方の(商国の者から渡された)封筒を読んで納得顔に。


「…失礼致しました。貴方様が凛様でお間違いないでしょうか?」


「はい。」


「もしも貴方様がいらっしゃったら、オークション会場まで案内をと伺っております。宜しければ、私共と一緒に向かっては頂けないでしょうか。」


「? 分かりました。」


いまいち意図が汲めず、首を傾げる凛に女性はクスリと笑う。


失礼と居住まいを正し、後ろの男性達を使いに走らせて凛達をヴォレス内へ案内。

すぐのところに用意された馬車へ乗り込み、10分程揺られてオークションが開かれる建物に1行は辿り着いた。


中へ入り、そのまま受付を済ませてオークション会場に向かえるかと思いきや、別室へ。

そこで待っていた支配人の男性を含めた3人と話をする事に。


小太りで頭の薄い男性こと支配人のダン=ダダン、後ろにいる2人の内の1人は副支配人のマルコ=ボロン。

その隣に立ち、唯一の女性で秘書のアップルとそれぞれ名乗られた。


ダンは凛達の容姿を一頻り褒めちぎった後、美羽達の中の誰かをオークションに出してみないかと1言。


凛達は揃って「3人共変わった名前」等と思っていたが、彼の提案に一変。

凛、美羽、楓を除く全員が不快感を露にし、凛がやんわりと断った事で意外にもあっさり引いた。

代わりに何か目玉となるものを出品出来ないかとお願いされ、凛は最初からこれが狙いかと思いつつ話を進めていった。




午前9時半前


打ち合わせを終え、(ダンの後ろにいた)副支配人の男性ことマルコに連れられる形で凛達はオークション会場へ。

中に入ってからも尚案内は続けられ、足を動かすのと並行して聞こえる「500!」「1000!」「1200!」との声。

不思議そうにしながらも凛達は最前列へ向かい、促されるまま着席するやオークションについての説明が行われた。


マルコ曰く、オークション内では単位が異なり、金貨を1、金板は10、白金貨が100、白金板が1000として扱われるとの事。


「8番、ミスリルの槍が1500で落札されました!」


ステージに立つ進行役の男性が叫ぶを合図に、客達から歓声が上がる。


視線を進行役から最後に声が聞こえた方に凛が移すと、男性が係員と思われる者から札らしきものを渡されるのを確認。

今回の場合、白金板1枚と白金貨5枚(日本円で15億相当)での落札となるそうだ。


因みに、凛の視界を通してナビが解析した結果。

見てくれは良いものの、ミスリルの他に銀等が混ざった粗悪品と言うのが分かった。


(確かに、純ミスリル製だとは言ってないもんな。)


凛はそう考え、納得。


「9番、帝国が誇る名工ドルア氏が造った剣で━━━」


それから、武器や防具等の装備品、(きら)びやかなアクセサリーや魔道具。

魔物の素材等が出品、落札されていく。

しかし先程の槍と同様、凛達が普段使用するものの方が質は圧倒的に上。

参考になるのは意匠位、わざわざ落とす必要はないと凛は判断した。


それから30分程経過。

進行役が別な男性に変わったと同時、がたいの良い男性が鎖で引っ張る形で1人の少女が姿を見せた。


その少女は肩下までの薄い紫色の髪、同じ色の兎の耳を生やしている事から兎の獣人であるのが窺える。

スタイル(藍火よりも少し)の良さが(胸が大きいのが)分かるドレスを着用。

両手を前にやる形で手枷が、首には隷属の首輪がそれぞれ()められ、目に涙を溜めながらなのが横顔で分かり、正面へ向き直しても尚俯いたまま。


「━━━ここからは奴隷となります。21番、兎人族の女性。17歳。犯罪歴はありません。金貨1枚からスタート!」


「50!」


「60!」


「100!」


「120」


「150!」


「300!」


凛が名乗りを上げ、場は静寂に包まれた。


「350!」


「400!」


「1000!」


一拍置いた後に2人の男性が名乗りを上げるも、またもや凛の一声で静かに。

それが決め手となり、凛が兎人族の少女を落札。


以降も没落した貴族令嬢や見目の良い女性冒険者、屈強な男性冒険者と言った感じで20人程が出品され、次々に落札していった。




「ここからは、いずれも今回が初出品となる商品ばかりでございます!」


進行役の男性が手で指し示すがサインとなり、ステージの左側から係員の女性4人が出現。

それぞれ、豪華だったり高級感のあるリバーシ、チェス、将棋、トランプを手にしている。


これらは打ち合わせ時に凛が用意し、全てリルアースには存在しないものばかり。

美羽達含め、客全員が疑問符を浮かべた顔でステージを見やる。


「こちらは、左からリバーシ、チェス、将棋、トランプと申しまして、リバーシ、チェス、将棋は2人、トランプは2人から4人で対戦する事を想定された遊戯…つまりお遊びをする為の玩具となります。

しかもこれらは全て、死滅の森。あの死滅の森に生える木を加工しております。なので、頑丈さは折り紙付きにございます。」


「嘘を付くな!死滅の森の木は誰も切り落とせない事で有名ではないか!!」


客からの野次に、進行役の男性はその言葉を待ってましたとばかりに満面の笑みとなる。


「そう仰られると思い、この様な催しを用意致しました。」


進行役が告げるや、鍛え抜かれた体の男性が大斧を持った状態で登場。

将棋盤担当の女性が床に置き、身を引いたのを男性が確認。

両手で持ち直した大斧を高く掲げ、勢い良く振り下ろす。


会場内に響き渡る、カーーーー…ンと耳をつんざく音に人々はかなり嫌がるも、肝心の将棋盤は全くの無傷。

むしろ、痺れたのが原因でか男性の両手から大斧が離れ、床に落ちた大斧を拾った進行役が結構な刃毀(はこぼ)れ具合を。

続けて、先程の女性が傷1つない将棋盤を観客に見せ付けた。


「…この様に、いかに頑丈かがお分かり頂けたかと思います!遊戯の際は勿論。いざと言う時に備え、近くに置かれるのも有りかも知れませんね!」


わざとらしく大斧を掲げる進行役の説明に、先程まであまり乗り気でなかった客達も俄然興味が湧いたらしい。

会場全体がざわざわとし始める。


「先程も申しましたが、これらは今回が初出品!初出品となります!使い方が分かる説明書をお付けし、各5点ずつの計20点ご用意致しました。それでは、金貨1枚からのスタートです!」


「10!」


「20!」


「100!」


「500!」


「1000!」


「2000!」


『死滅の森に生えた木』を利用しての商品は初。

見慣れない玩具との付加価値が重なったおかげか高値で、他の19点(トランプは小さい為にやや控えめだったが)も良い感じに落札された。


圧縮や加工は全て無限収納内で行われ、材料である木も伐採したものを利用している為に実質タダ。

ボロ儲けどころの騒ぎではなく、この時点で奴隷達の購入に使った額を差し引いても大幅な黒字。


(うーーーん。少しでも相殺出来ればと思って出したけど、まさかここまで盛り上がるとは…。)


美羽達も軽く盛り上がる中、凛1人だけ複雑な心境を抱いた。




「さて、最後に今回の目玉として2品ご用意致しましたが…ご覧の通り、この場に商品がございません。とある理由から、こちらまで運ぶ事が出来なかったからです。」


進行役の意味深発言により、会場内が疑念や沈黙で満たされる。


「ですので、恐れ入りますが建物の外まで足をお運び頂きたく存じます。」


進行役が申し訳なさそうに伝え、客達は一斉に文句や暴言を吐き始める。


「静粛に、皆様静粛に願います。先程も申しました通り、この場へ持ち込まなかったのは理由がございます。ですが、ご覧になれば必ずやご納得…いえご満足頂けると、我々も自信を持ってオススメ出来る逸品となっております。」


しかし補足。

厳密にはご満足頂けるの部分で喧騒はピタリと止み、逸品の件で半信半疑ながらも1人。

又1人と歩き出し、最後に残った凛達も移動を開始。


その頃、凛達がいる建物の前では。

白い布に覆われた、巨大な置物の様なものが2つ鎮座。

置物は10メートルの縦長タイプと12メートルの横長タイプ、場所は入口の左側に縦長、右側は横長との構図だ。


ややあって、オークション会場にいた者達が外に出、最後に凛達がやって来る。

置物付近で待機していたダンが係員に指示を出し、勢い良く布が取り払われた。


中から姿を現すは、ファ()イアドラゴン()アー()スドラゴン()

2体は今にでも襲い掛かりそうな剣幕で(そび)え立ち、そのあまりの迫力に見物人達から上がる絶叫の嵐。

終いには漏らしたり気絶する者まで現れ、一気に地獄絵図と化した。


「ご安心を!皆様ご安心下さい!こちらのドラゴンはどちらも剥製!は・く・せ・い・でございます!!」


進行役は剥製の部分を強調。

手袋越しにアースドラゴンの顎を触ってみせ、再び悲鳴が。

しかしいくら待っても動く気配はなく、疑念や不思議がる声がチラホラ。


「この通り、剥製で出来ておりますので襲い掛かられる心配はありません。こちら落札されたお客様に限り、ご自宅まで配送するサービス付き!屋敷のエントランス、敷地内、庭等。飾るだけで箔が付き、注目される事間違いなしの逸品でございます!」


見物人達は先程までの怖さはどこへやら。

家のどこに飾れば目立つかと妄想したり、子供におねだりされる親もいたりと。


買った後の事ばかりを考えている風に見え、(たくま)しいとすら思える。


「それでは宜しいでしょうか?まずはファイアドラゴンから!開始値は100です!どうぞ!」


「500!」


「1000!」


「2000!」


「3000!」


「5000!」


「6300!」


「6500!」


「8000!」


8000と言う数字に周辺がざわめき、名乗りを上げた男性はしたり顔。


「おおっと!?8000!今回初の8000が出ました!!他に名乗りを上げる方はいらっしゃいませんかぁ!?」


進行役が辺りを見回すも、額が額なだけに誰も手を挙げようとする者はいない。

そうこうする内に時間が過ぎ、ほぼ決まりかと思われた矢先。


「9000!」


オークション会場にはいなかった、いかにも成金的な風貌の男性が参加。

これに8000で入札した男性が憤慨するも、認められずにオークションは続行。


結局、ファイアドラゴンは16000、アースドラゴンは12500で落札。

現地だけでなく周辺一帯が大いに沸いた。


剥製はそのままアピールも兼ねて飾られる事となり、騒ぎを聞き付けた野次馬達で展示場はごった返すのだった。

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