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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画

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89話

立ち上がったルルは身長が130センチ程しかなく、小柄な凛よりも更に背が低かった。


「ドワーフ…!」


「うん?アンタ、ドワーフは初めてかい?…ほら、少しだけ耳が尖っているだろう?」


そう言って、ルルは右耳に当たる部分をかき上げながら僅かに顔を傾ける。

それまで豊かな髪に隠れていた耳が晒され、これに凛が反応。

先程の不機嫌さはどこへ言ったのかとばかり興奮した面持ちに。


「おお…!と言う事は、もしかしてルルさんは鍛冶が得意だったり?」


「…さっき、しがないドワーフだと言ったろう?あれは鍛冶の才能がこれっぽっちもないって意味も込められてるのさ。」


髪から手を離したルルが目を伏せ、自嘲してみせた。




ルルは兄と妹が1人ずつに、両親や祖父を加えた6人家族。

王都で最も有名な鍛冶師の祖父、鍛冶が性格的に合わないが理由で母は冒険者に。

父、兄、妹の3人は、祖父の下で鍛冶に関する仕事にそれぞれ就いている。


そしてルル本人。

全くと言って良い程に鍛冶の適性がなく、家族の中で最も低いであろう1回り以上離れた妹にすら劣る始末。

鍛冶にコンプレックスを抱きつつ、せめて何かしらで鍛冶に携わる仕事をしたい。

その一心で修理品を届けたり、注文を受ける等の外回りの手伝いを行っている。


余談として。

祖父に似て少し口が悪いところがあるものの、持ち前の明るさや可愛らしさから、ちょっとしたアイドルの様な扱いをされる彼女。

本人にその気はなく、(からか)われ持て(はや)されては怒るか突っ込むまでがデフォルトだったり。


閑話休題


「さて、ちとばかり時間を食っちまったが…まだ仕事中の身でね。急いでサルーンに向かわなきゃいけないんだ。色々と説明してやりたいのは山々だけど、あたいはそろそろお(いとま)させて貰うよ。」


「あ、ちょっと待って下さい。」


ルルは立ち上がり、凛の呼び掛けを無視。

辺りをキョロキョロし、早足でリビングから出る。


オブジェみたく壁に設置された(ポータル)の存在に少しだけ足を止め、発見した土間の部分に置かれた自分のブーツを履き、外へ。


「なん、だいここは…?あたいがいたのはサルーンの近くだったんじゃあ…。」


彼女が見たもの。

屋敷を囲む高い塀、それと門の先に見える畑や作業する農夫(ウタル達)だった。

これ程の規模や造りなら確実に知れ渡っているはず…と目を奪われ、そのまま呆然状態に。


「ここはサルーンから少し南東に進んだ場所にはなりますが、死滅の森の中です。僕達はここで森に挑みつつ、農作物を育てる生活を送ってます。」


後ろから凛に話し掛けられて一瞬ビクッとし、「死滅の、森…?」と神妙な面持ちで振り返る。


「はい。ただ、サルーンへ移動出来る手段があるにはあります。なので、あちらへ向かいたいと仰るなら━━━」


「行く!今すぐあたいをサルーンに連れて行ってくれ!」


「分かりました。」




凛は付いて来た美羽、そしてルルと共にポータルを抜け、サルーンの冒険者ギルドへと向かう。

最初、ルルはおっかなびっくりと言った感じで凛達の後ろを歩いたが、現在地がギルド内の宿直室だと分かるや即座に部屋を飛び出した。


少し顔を見合わせた2人は彼女を追い掛け、解体場の入口の扉が開いてる事に気付き、中へと入る。

そこでワッズと話をするルルを発見。

向こうもこちらが分かったらしく、指で差し示すを合図に2人がやって来た。


「聞いたぜ、凛。ルルを助けてくれたんだってな?」


「あ、はい。お二人は知り合いだったんですね。」


「厳密に言えば王都にいるこいつ(ルル)の爺さん繋がりで、だがな。『ダグウェル武具店』っつー名前で、鍛冶依頼から修理、素材の買取、武器防具の販売まで手広くやってる。俺らもそこで世話になっててな、毎年今頃になると道具の様子を見に…あー!そうだったーーー!!」


突然のワッズの叫びにルルが軽く飛び上がるも、驚いたのは彼女だけ。

凛達や他の職人達は不思議そうにするに留まる。


「忘れてたぜ…今回は凛に道具の修理を頼んだんだった。」


「あ、そうでしたね。丁度良いタイミングですし、この場でお渡ししますね。」


そう言って、展開した無限収納に手を突っ込む凛。

中から(昨晩修理と改修を終えた)解体用道具の内の1つを取り出し、ワッズへ差し出す。


その光景を前にしたルルが瞠目。

勢い良く歩き出たかと思えば、ワッズへ渡すはずの道具を横から引っ掴んだ。


「…やっぱり。思った通りミスリルで出来て…ん?他にも何か混じってる…?」


「あ、芯の部分にアダマンタイトが入ってます。他にも━━━。」


「あ、アダマンタイトだってーーー!?」


まさか、こんなド田舎でアダマンタイトなんて単語を耳にするとは思わなかった彼女。

これでもかと目を見開き、凄い剣幕で凛に詰め寄った。




それから道具について諸々の追及が始まるのだが…やがてがくっとルルが床に崩れ落ちた。

キャパシティーを完全にオーバーしたのに加え、何の為に死ぬ想いをしてまで辿り着いたのか…との精神疲労から来ていると思われる。


後者はまだしも、前者については覚えのあるワッズ達。

「分かる」と言いたげに頷いていると、凛が今度は彼らの方へ歩き、懐から小さなナイフを取り出す。


そのナイフは持ち手、刀身、鞘に至るまで。

全て死滅の森に生えた強靭な木を素材に圧縮、精製したものだ。

全体的にしなる程軟らかいにも関わらず、金級までの魔物なら特に何も施さなくても簡単に斬れる切れ味を持つ。


話しながら、凛は全長20センチ程の木製ナイフをぐにぐにと動かし、次にその場で生成した直径1メートル程の岩を真っ二つに斬ってみせた。

これにワッズ達やルルは唖然、美羽1人だけがおー!と感心した様子を浮かべる。(有名な岩を斬る技を目の当たりにした的な意味で)


その間に凛は追加で用意した木製ナイフをトレーに乗せ、正気を取り戻した彼らに「解体に役立てて欲しい」と進呈。

押し出される形でワッズが。

それも若干引きながらで受け取ったのだが…触っている内にテンションが上がったらしく、これから解体予定の魔物の元へと駆け出す。


「すげー!」「なんて斬れ味だ!」「これ本当に木で出来てんのか?」「解体が楽になる!」等と叫び、そのまま嬉々として解体作業に移る。


10分が経ち、騒ぎを聞き付けたガイウスとゴーガンが解体場に入室。

この頃になってようやく落ち着いて来たルルから事情聴取をするとの運びに。




彼女は2週間位前に王都を出発。

10日間は何事もなく旅を続ける事が出来た。


しかし3日前に盗賊に襲われ、大怪我を負う。

挙げ句先日買ったばかりの食料品は全部奪われ、持っていた荷物は適当に投げられ、或いは切り裂かれるか破られるかして地面にぶちまけられた。


ルルは止めるよう叫ぶも、苛立った盗賊の1人に腹部を蹴られ、飛ばされた先にあった木へ激突。

肺にある空気を無理矢理息を吐き出す羽目になり、彼女は気を失ってしまう。(この時、盗賊の1人がルルの髪を持ち上げ、乱暴を働こうとしたが別の者に怒られて放置と言う形になった。)


次に目を覚ました時、彼女の視界に映ったのはオークと額が燃えている熊だった。

しかも両名はすぐ目の前の位置におり、急ぎ飛び退いて距離を取るも…両太ももに痛みを感じ、その場に倒れ込む。

そこでようやく気絶する前のやり取り、及び部位欠損や体の何箇所に包帯が巻かれている事に気付いた。


オーク達は荷物の中にあった応急セットで手当てをしてくれたらしい。

恐る恐る、そして今更ながらコンタクトを取り始めた。

最後まで言葉は通じなかったものの相手に敵意がないと分かり、凛に発見されるまで運んで貰ったと説明。




《…との事です。》


「やはりな。」


ナビからの報告に、座りながら溜め息混じりで答えたのは火燐。

彼女の近くに楓とティンダロスの猟犬達が控え、周辺では盗賊と思われる者達が倒れ伏している。


この盗賊達は凛が楓へ依頼し、探させた相手だ。

また篝やルルに大怪我を負わせ、ウタル達やルルから食糧を奪った悪党共でもある。


凛達がいなくなった後、火燐は楓に凛と何を話していたのか質問。

楓は(仕事を終えた)柴犬タイプのティンダロスの猟犬を可愛がりつつ、ルルに重傷を負わせた盗賊達の追跡。

並びに、ウタル達がいた村や篝達を襲った盗賊との関連性を調べたのだと告げる。


調査の結果、村、篝達、ルルを襲った場所に残っていた臭いは全て同じ。

現在、彼らはサルーンから大分離れた北西の位置にて、昼食の真っ最中であると判明。


ルルを含め、一連の事件の犯人はこの盗賊だと結論付けた火燐はポータルで移動。

彼らに追及を行い、すぐに戦闘となったが…ものの1分もしない内に終了。


「何となく予想していたとは言え、胸クソわりぃ話だぜ。」


火燐は近くにいる盗賊へ歩み寄り、襟首を掴む形で持ち上げる。


()ぼうぶぶじで(もうゆるして)ぶばばい(ください)…。」


「あ?お前らはそう言った奴相手に手を止めたのか?違うだろうが!」


追跡中、無数の斬り傷があったり、性的暴行を受けたと見られる死体が複数発見された。

いずれも臭いが残っている事から、彼らが関与しているのはほぼ間違いなく、情状酌量の余地は皆無。


故に、いくら顔面がボコボコになろうが。

涙ながらに訴えようが火燐には全く響かず、反対に殴り飛ばされる始末。


「ちっ。このままここにいても時間の無駄だな。楓、障壁(バリア)後片付け(・・・・)を頼む。」


「分かりました…。」


直後、火燐達の近くに巨大な火の玉が落下。

生物は(おろ)か、草1本すらない更地だけが残された。




午後5時頃


美羽、ガイウス、ゴーガン、ルルの4人を連れ、ポータル越しに屋敷へ帰って来た凛。

ゲスト組が浮かれ気分なのに対し、残る2人が苦笑いとの構図だ。


事の始まりは今朝凛がガイウスに渡した茶色い瓶。

実はその中身はウィスキーだった。


凛、美羽、ルルが解体場に到着する少し前。

ガイウスは珍しいもの(ウィスキーの瓶)を自慢する目的でゴーガンを来訪、話をしている内に入っている液体がお酒であると気付き、その場で飲み干してしまう。


2人はあっという間に楽しみが終わってしまったと悲嘆(ひたん)に暮れる内、部屋にやって来たギルド職員から解体場がうるさいから注意して欲しいと頼まれる。

互いに目配せを行い、凛は今そこにいる可能性が高いとの判断から解体場へ急行。


ルルから事情を聞き終え、しばらくした頃。

やたら目力の入った表情のガイウスが(ウィスキー)のお代わりが欲しいと凛に告げ、軽く考える素振りを見せてから他の感想も聞きたいので屋敷へ招待する旨の返事が返る。


これに2人は諸手(もろて)を挙げ、大喜び。

横で話を聞いていたルルが自分も行きたいと希望、凛から許可を得て嬉しそうにする。(本当はワッズ達も付いて行きたそうにしていたが、流石にガイウスとゴーガンと一緒は勘弁らしく辞退となった。)


1行は先程解体したばかりのミノタウロス(魔銀級の強さで2足歩行する牛の魔物)の肉を使ったしゃぶしゃぶを、白ご飯とセットで堪能。

ある程度食べ進めた辺りで缶に入ったビールやプレミアムビール、先程のウィスキーを含めたお酒類が解禁。

ガイウスやゴーガンを筆頭に、男性陣が大いに盛り上がった。


しかし子供達の教育に良くないを理由に客間へ移動。

そこで酒類だけでなく、水や炭酸水、オレンジジュースと言った割り材や氷を。


女性や甘いものが好きな者用に、チューハイやカクテル、おつまみやデザートを準備。

これには夕食時にビールを1口だけ飲んで渋い顔だった雫も満足らしく、キメ顔でサムズアップされた。


途中、凛から『(たすく)』の名を貰い、稀に出現する善の心を持ったオーク━━━ヴァ()リア()ント()オークに進化したハイオーク。

同じく『(あかり)』の名を与えられ、爆炎熊に進化した火熊が顔を出し、凛は彼らをガイウス達に紹介。


それから丞達を持て成すとなり、彼らは一頻(ひとしき)り驚いた後、静かに飲む様になる。

少し離れた場所にて、凛が見習いバーテンダーの友人から教えて貰った経験を元に、美羽達へレクチャー。


また別な場所では、火燐がビール、ワイン、ウイスキーやブランデーを一気飲みしては歓声を浴び、ドヤ顔を披露。

これにガイウス、ゴーガン、ルル、それと何故かやる気になった藍火が彼女へ挑むも、藍火は5分経たずして潰れ、ガイウスとゴーガンも1時間程でダウン。


ルルだけが最後まで残り、共に少しペースを落としては語らう様に飲み進めていく。


最終的に彼女は複数の空瓶を両腕に抱える形で寝てしまったが、その顔は非常に満足したものだった。

酔い潰れた彼ら彼女らを凛達はソファーへ運び、毛布を掛ける等して自室へ戻り1日を終えるのだった。

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