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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
辺境都市サルーンとそれを取り巻く者達
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81話 24日目

ほぼ説明会です。


本当は1話でまとめたかったのですが、少し長くなったので2話に分けました(苦笑)

24日目


鬼王の解析が終わった。


彼の生前の名は鬼城院(きじょういん) (あつし)

暴○団鬼城(きじょう)組の若頭で、日本にいた時はほぼ負けなしである事が分かった。


そのせいか割と好き放題に生き、少しでも気に入らない事が起きればすぐ暴力を振るう。

それは部下達も同様で、ストレスの()け口になる例も少なくなかった。


また、良い女を見付けては手段を選ばず手に入れ、飽きたり孕んだら捨てると言う鬼畜っぷり。

そうして周りから恨み(ヘイト)を集め続けた結果、寝ている所を襲われた。

ベッドから起き上がって確認したところ、襲撃者は自分の部下とライバルの組員であると判明。

どうやら協力関係にあるらしく、全員から叫ばれながら鉄砲で撃たれ、体中穴だらけとなって死亡した。


そこから死滅の森表層でオーガに転生。

その際、自分より格下の相手を10人まで強制的に従わせる『隷属化』。

直接認識されるまで、探知の類いをほぼ無効化させる『隠匿(いんとく)』。

頭と心臓を除き、体のあらゆる場所を、それも魔素が続く限り即座に再生させる『高速再生』スキルを手に入れた。


淳は生まれ変わってすぐ。

生前の名字が鬼城院、それと今の種族である鬼の魔物(オーガ)から『鬼』の文字を取り、更に自らが王になるべく『鬼王』と名乗る様に。


鬼王は3つのスキルを駆使して成り上がり、5年が経った頃に集落を形成。

しかしタバコはおろか、酒も金もなかった為、すぐに飽きてしまう。

残る女━━━つまりメスと呼ばれる存在はそこそこいたものの、強面のオーガか不細工なトロールばかり。

とてもではないが盛り上がる気にはなれず、加えてちやほやされるばかりでつまらなく感じたのもある。


そこから準備をし、(後に暁が倒した)オーガキングに集落の事を任せ、当時悪鬼だった牙王と霊姫を連れて旅立ったのが今から10年程前。

牙王と霊姫は唯一の鬼人で、鬼王が手塩に掛けて育てた腹心でもある。

サルーン自体は前々から認知しており、集落から最も近いのも重なって、手始めに蹂躙(じゅうりん)する事を決める。


鬼王達はサルーンへ到着するや否や、門から始まり、街の何箇所かを破壊。

向かって来た者達は勿論。

道中見掛けた人々までもを殺害し、サルーン中をパニックに(おとしい)れた。


その向かって来た者の中に、次期サルーン領主であるタルコムも含まれる。

タルコムはガイウスの2歳離れた兄で、武よりも文の方に秀でている。

戦力と言うよりも現場の視察だったり、部下の兵に指示を出す役として姿を見せた。

しかし全く興味のない鬼王からはその他大勢の中の1人と認識され、兵共々斬り殺されている。


しばらく進み、鬼王達は酒場へと到着。

そこにいた(ナザーロフの前任で元冒険者でもある)酒場のマスターの顔面をテーブルに叩き付けて殺し、片っ端から酒を煽り始める。

そこへ前領主ことガイウスの父バートランドが現れ、多数の兵で(もっ)て彼らを囲った。


これに鬼王は全く動じず、不敵な笑みを浮かべるだけ。

これにバートランドは額に青筋を立て、鬼王達を討伐するよう兵達に命令を出す━━━よりも先に、鬼王が動いた。


兵達は鬼王1人により、20秒も経たない内に全滅。

理不尽なまでの力の前に為す術もなく、バートランドも瀕死の重傷を負った。


しかしその様な状況下でも彼は気丈に振る舞い、「例え自分がやられても、王国がお前を地の果てまで追い詰めて殺すだろう」と告げたのを最後に事切れた。

そんなバートランドを鬼王はつまらなそうに見やり、逆に返り討ちにしてやろうとの目標を立てる。


目的地を王都に定め、離れて様子を見ていた兵から王国の地図の在処(ありか)を聞き出し、彼と共に領主の屋敷へ。

そこで奪った地図(ついでに兵や屋敷にいた者達の命も)を頼りにサルーンを去り、都市や街を襲いながら北上。


3週間程でフーリガンに辿り着いた鬼王達は、強者が弱者を支配する風習を気に入り、領主をぶちのめして今のスタイルに変えた。

その領主は今でも五体満足でピンピンとしており、現在は一儲けをしに王国の東側の方へ向かっている為不在らしい。




午前6時半頃


「成程、凛殿の言いたい事は分かった。自動販売機なるものは面白そうではあるが…娼館か。」


椅子に座るガイウスが持っていた紙をテーブルに置き、腕組みしながら呟く。

彼の横に凛が立ち、その後ろにトーマス、ニーナ、ウタル、サムが控える形だ。


ただ、トーマスはニーナから「娼館?私何も聞いてないんだけど?」と睨まれて思いっきり顔を逸らし、ウタルとサムから苦笑いを向けられているが。


「ふむ。見た所、ガイウス殿はあまり娼館に乗り気ではない様子。」


「…恥ずかしながら。私は今まで娼館を利用した経験がないものでして。」


ガイウスは冒険者時代、強引だったり自由奔放と。

パーティーメンバーやそれ以外女性から、散々振り回された経歴を持つ。

それが影響して娼館へ通う気になれず、領主になってからはその余裕すらなかった。(ゴーガンもそうだが、そう言った経験が全くない訳ではない)


それを知らないランドルフは珍しいものでも見た様な顔を浮かべ、しかしすぐ豪快に笑う。


「何と!わっはっはっ、そうかそうか!ならばここは1つ、私が娼館の楽しみ方と言うものをだな!」


「あなた?」


乗り気なランドルフに、アシュリンの冷ややかな突っ込みが入る。


と言うのも、今から20年位前。

ランドルフはスクルド内にある娼館のオーナーに唆され、何度も通っていた時期があったからだ。


その数年後。

1人の娼婦が生まれたばかりの子供を認知して欲しいと屋敷へ訪れ、それに便乗した娼婦達が自分を愛人や妾にと押し掛けて来ると言う事件が。


ランドルフ夫妻はその対応に追われ、結構な額を彼女達へ支払う羽目に。

その一件により、ランドルフはアシュリンに対し、頭が上がらなくなったのだそう。


アシュリンはダメ亭主を支えるのは自分しかいないと考え、普段は敢えて口を挟まず、静かに控えている。

しかし今回みたく、ランドルフが余計な口出しをした時はストッパー役へと早変わり。

それに付随し、彼女の機嫌も悪くなる。


昔の話を蒸し返される事を恐れたランドルフは、わざとらしく咳払いを行い、無理矢理に話を戻した。


「うぉっほん!冗談はここまでとして…ガイウス殿。これからの事を考えれば、むしろ娼館は必須と言えるぞ。」


「ですが…。」


「皆まで言うな。ただ私見を言わせて貰えば、最近は男女問わず美形の者がサルーンで見掛ける様になった。そうは思わぬか?」


「はぁ、確かにそうですね。」


「ならば、民から声が上がるのも必然であるからして。むしろ私的に良く持った方だと思う位だ。まぁ幸い、ここには話の通じる者もいる様だしな。」


そう言って、ランドルフは1人の女性の方を向く。


その女性は女の艶を前面に出した見た目や格好。

黒に近い黒髪をアップに纏め、スタイルも良く、自信の高さが窺えた。


「…私?勿論やっても良いけど、条件があるわよ。」


女性はランドルフの問いに答えつつ、視線をランドルフから凛に移動。


「凛様に関する内容なら却下だぞ。」


しかし近くにいるカリナから指摘(突っ込み)が。

これに「うぐっ」と詰まり、彼女と豊満な胸を押し付け合う形で火花を散らす。


「まぁまぁ、2人共落ち着いて、ね?喧嘩は良くないわ。」


そこへ、2人を止める形で別の女性が割って入った。


こちらの女性はカリナ達以上に色気を醸し出し、かつおっとり系の美人。

紫陽花みたく淡い水色のウエーブヘアーで、彼女の優しげな雰囲気に(主に男性達が)(ほだ)される…のだが、2人には全く影響ないらしい。


半目で女性を睨み、視線を自分達以上に豊満な胸へと移す。

そしてその胸を左右から叩き、ぼよよんと弾む胸に2人して「ちっ」と舌打ち。

「何で?」と涙目で胸を押さえるおっとり女性を他所に、カリナは何事もなかったかの様にして着席。


もう一方の女性はと言うと、たった今泣かせたばかりの女性の隣に立ち、


「…この子と一緒なら話を引き受けてあげる。」


背中に後ろから手を添える形でそう告げる。


「話が分かる。流石帝都で1番(トップ)なだけはあるな。」


「元、だけどね。けどそんな昔の事は忘れたわ。」


「それでもだ。ここは魅力的な者達が多い。経験者である貴殿が纏めて貰えると助かると言うものだ。」


「そこなのよね…。私がいた所とあまりにレベルが違い過ぎておかしくなりそうだわ…。」


その後も話は続き、サルーンに関する予定が組上がっていった。




事の発端は、商店、喫茶店、公衆浴場、宿にあるレジ(または受付)横に『ご意見箱』を設置した事から。

昨日一昨日だけで多数の意見が寄せられ、その目的は多岐にわたる。


この世界の識字率は高く、ひらがな、カタカナ、小学生が使う位の漢字なら大抵の者が使用可能。

それ以上の難しい教育は王族貴族や商人だけが受けられるものの、普通に生活を送る分に関しては全く問題ない。


そんな人々から挙げられた意見の一部がこちら。


◯◯にいる女の子が可愛い!付き合いたいから紹介して欲しい!

美味しかった。(喫茶店の)メニューを制覇したいのでこれから通い詰めます。

マヨネーズヤバイ。あれはかなり中毒性のある食べ物だ。むしろ飲み物でも良い位。


新しくなった宿にいる子達の着る制服が可愛い!どこに行けば買えるの!?

あの量と美味しさでこの安さは有り得ない。

トイレヤバイ。気持ち良過ぎて危うく寝てしまうところだった。


コーヒーって言うのに付いて来る砂糖とミルク?(厳密にはコーヒーフレッシュ)をもう少し貰えるとありがたいです。

携帯食(カ◯リー◯イトもどき)は悪くないけど、口の中がパサパサするし味が薄い。もう少し濃いめで!後、種類も増やせるなら増やして欲しい!

スイーツヤバイ。下手するとあれだけで食事が終わる可能性が。もしスイーツだけの店なんて出来たりでもしたら…。


温泉最高ー!

コインランドリー助かるー。しかもしつこい汚れでも関係なく落としてくれるのが嬉しい。

カレーにどハマりした。もっと種類を!

ボディーソープで綺麗になったのは良いんだけど、体が痒くなった。もう少し肌に優しいのがあると助かるかも…。


『◯◯ヤバイ』の人は同一人物なのではないか?との疑問はさて置き。

この様な感じで、喜びの声が圧倒的に多かった。


また他にも、従業員を奴隷として買い取ってやるから良いように計らえだったり。

◯◯家の者だ、自分が他の家の者に上手く口利きしてやるから◯◯とか。

俺が街を守ってやる、だから手数料として利益の一部を寄越せ等の記載も。


凛は意見の書かれた紙を見てほっこりしたり流し(スルーし)つつ、数ある意見の中から街の発展へと繋がりそうなものをピックアップ。

要点としてまとめたのが、先程ガイウスが閲覧し、テーブルに置いた要望書となる。


その要望書には、列に並ばなくても買えたり簡略化出来る仕組み。

それと(午前8時~午後6時までの)営業時間外でも買える手段として自動販売機の設置。

宿泊施設や商店等の店舗の増設。

娼館の設立の希望。

以上を凛なりの答えだったり説明したものも書かれてある。


凛は鬼王と先代領主の件をガイウスへ伝え、彼に要望書を渡し、今に至る。

要望自体は他にも沢山あるが、ガイウスの許可が必要そうなものだけを纏め、提出する形となった。




それとランドルフが水を向けた女性はアイリと言い、少し前まで帝都ナンバーワン娼婦だった。

そのアイリとカリナを止めようとしたのが、変化スキルで人間の見た目へと変化したサキュバスのプレシアとなる。


2人は商都のオークションにて、それも同じ日に購入。

ただ、アイリは男性を相手にする仕事しか。

プレシアは戦闘しか今まで経験していないらしく、出来る事が極端に少なかった。


取り敢えず2人共コーラルの下(屋敷に携わる者)に配属され、様子見の段階で今回声が掛かった。


因みに、アイリは助けてくれた恩返しも兼ね、購入した日の夜に凛の部屋へ訪れた。

しかし彼の諸事情から無意味だと分かり、しかも扇情的な格好で部屋から出た所を美羽達が目撃。


そのせいで凛を慕う女性全員から恨まれる事になるのだが、アイリは全く諦めていない。

むしろ凛の有能ぶりにますます惚れ込む程で、嫉妬や恨みの視線を柳に風とばかりに受け流し、(美羽達から彼女の扱いを託された)カリナが先程突っ掛かったのはそれが理由だったり。


アイリからすれば面白くない事に変わりはないが、もし今は無関心のプレシアが凛に傾倒しでもしたら不味いと思い、身を引いたのかも知れない。




彼女達の他にも、オークションで落札だったり、奴隷商で高額取引された者は結構いる。

売り手側は出来るだけ高い値段で客に買って欲しいとの理由から、自然と見た目を良くするからだ。

それらの積み重ねで凛の元に美男美女が集まり、サルーンへと派遣。

民や利用者が彼ら彼女らを見て不満が上がるのは当然と言える。


しかしこれが屋敷になると更にパワーアップ。

雫と楓がロングスカートタイプの寝間着で、20代以上は2人みたいな格好の者が多いのは例外として。(紅葉達の様な和服も同様)


火燐は風呂上がり以降になるとタンクトップに短パンのみ。

美羽と翡翠はもこもこ生地のパーカーに、同じ素材で出来た短パンのセット。


魔物だった者を含め、20代以上でもプロポーションの良い者(ニーナや、藍火、篝等もこちら)は火燐達みたくラフな格好を真似したがる。

つまり、女性陣は夜になると肌の露出が多くなる傾向にある。


その為、トーマスやダニー達を始めとする(凛と魔物以外の)10代20代の男性が悶々とする日々を送らざるを得なくなり、いつ爆発するか分からない状態。

なので娼館が建ち次第、地元や外部の人達だけでなく彼らも利用する事が予想される。


因みに、娼館の件はトーマスが仲良くなった客から直接聞いており、凛に個別で相談した内容でもある。

また、1人だけで行くよりもウタルとサムの2人からも口添えがあった方がより確実だと判断。


「もう頑張る様な歳ではありませんので…。」


「その相手って、10代や20代の女の子が主なんだろ?なら娘みたいなものじゃないか。()から嫌われたくないし、俺は止めとくよ。」


これはトーマスからの声掛けに対する、ウタルとサムの談。

こうしてにべもなく断られたトーマスは、1人だけで凛の下へ向かう事に。


「ねぇ、さっきの何?」


苦労してプレゼンした甲斐あって、一応ながら娼館の件は受け入れられたのだが、その後すぐニーナから詰め寄られる羽目に。(しかも壁ドンで)


彼女はウタルとサムはこんな下らない相談はしないと踏み、トーマスが犯人だと断定。

トーマスはしどろもどろになりながら答え、最終的にニーナから連行されたのだった。

アイリはドラ◯エのマ◯ティナ、プレシアはグ◯ブルのナ◯メア姉さん風に思って頂ければ。

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