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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画
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79話

凛は鬼王達の亡骸を無限収納へ入れ、ナビに解析を依頼。

そして目を丸くしながら今の光景を見ていたノアから事情を尋ねる事にした。


ノアは生まれも育ちも獣国ではあるものの、物心ついた頃からこの見た目(アルビノ体質)に対する嫌がらせを受けていた。

ノアが7歳の時、同年代の子供達から石をぶつけられ、頭から血が出たのを機にひっそりと街を出る。

しかし新しい場所に向かおうが、人が変わっただけで迫害は止まず、しばらくしたら引っ越すと言う状況が続いた。


今から5年前。

ノア親子は新天地を求め、死滅の森手前に広がる草原を歩いていた。

そこをフーリガンの構成員に見付かってしまい、父はその場で斬殺。

母はノアと共に連れて行かれるも1ヶ月後に死亡し、ノアは若干9歳にして天涯孤独の身となった。


そのノアが今日まで生きれた理由…その内の1つは世界でも稀な召喚師だったからだ。

しかも先程の8体が限界ではく、相手さえ見付ければまだ契約出来る様な優れた使い手でもある。


どの種族を使役出来るかはその者次第ではあるが、いずれにしろ通常だと1~3体が限度。

更に言えば、目的とする相手に何度も説得を行ったり、力づくでようやく契約するといった場合が多い。


ところが、ノアは生まれつき『眷属化(ファミリア)』のスキルを持っていた。

アルビノ体質が関係しているかは分からないが、眷属化は見える範囲に限り、眷属になってくれそうな相手が直感で分かると言うものだ。

しかも普通の召喚師と契約した魔物が死んだら1週間は喚べなくなるのに対し、眷属化スキルでの契約だと3日で済むのも大きい。


ノアは幼少期に近くの廃墟でスケルトン5体(内2体はダークネスナイト)と契約を結び、友達の様に接した。

ただ、相手はノアを自分達の王様だとでも思ったらしく、扱いもそれ相応となり、ノアは半分困っていたが…。

後に契約する者達もスケルトン達と同じだった。


数年後、フーリガンの構成員と遭遇。

ノアは家族を守る為、スケルトンナイトやマジシャン等に進化したスケルトン達、それと新たに仲間となったコボルトを喚び出してみせた。

スケルトンナイト達はすぐに一蹴されたが、それが子供ながら立派な召喚師としての価値を見出だされる要因となり、母親共々フーリガンに連れて来られる切っ掛けにも。


ノアはフーリガンに到着してすぐ、鬼王から『隷属化』スキルを施され、自由を奪われた。

隷属化は鬼王がオーガに生まれた時から所持していた3つのスキルの内の1つで、命令を強制的に従わせると言うもの。

対象者に限り、転移による呼び出しも可能となる。


程なくして母親が亡くなり、ノアは悲しむ間もなく死滅の森へ連行。

そこで後にギルタブリルやモリガンとなる、ブラウンスコーピオンやディバウアークロウと出会い、契約を結んだ。


以降、年に1、2回位の頻度で死滅の森へ連れて行かれるも、中々契約が結べそうな相手には出会えなかった。

それに鬼王が苛立ち、最近は領主(ジジイ)との喧嘩が絶えず、用事で出掛けていた時に旭達が来たとの事。




また、今の話の間に回復したベルナルドからも話を聞く事が出来た。


ベルナルドはゴーガンやガイウスと何回も依頼(クエスト)をこなした仲であり、15年前にフーリガンの冒険者ギルドマスターとなった。

街は当時も荒れてはいたものの、今よりは全然まし。

少なくとも、恐怖で人々を支配するなんて事は一切なかった。


ところが10年前、ふらりと鬼王達がやって来た事で街は一変する。


鬼王達は入口に並ぶ列を堂々と無視し、止めようとする門番を斬殺。

それからも自分達の所に向かって来る者達を斬り捨て、街はすぐにパニックとなった。


ベルナルドも応戦したが為す術もなく倒され、しかし「使えそう」だからとの理由で今日まで生かされたらしい。


「フーリガンは街に入ったが最後、そこから一切戻る事が出来ないとは聞いていた。ただ、1人だけ…王都にいる黒鉄級冒険者を除いてだけど。それがまさかこんな結果だったとはね。」


そう言って、ゴーガンが話を締めくくった。




それから、凛がノアとクロエにこれからどうしたいかを尋ね、2人は付いて行きたいと返される。

続けて、2人は自分達みたく街から出たいと思う人は沢山いるはずとの意見から、凛、ゴーガン、ベルナルド、そして(映像水晶越しに)ガイウスの4人で話し合いを行った。


結果、避難場所も兼ね、凛が一旦保護。

後日、身の振り方を考えて貰う形で人々を救出するで話が纏まった。


一行は行動を開始し、火燐、雫、翡翠、楓が東西南北にある街の出入口を。

凛、美羽、紅葉が中心部付近3箇所でポータルを展開。

いずれも、屋敷の敷地内を出口とした。


丞にも協力を仰ぎ、人々へ案内や誘導をしつつ、構成員達を無力化させながらポータルを展開する事2時間。

大多数の者達はいまいち信用出来ないとの理由から聞き入れて貰えなかったが、それでも3000人程がポータルを越え、凛の領地にやって来た。


「…さてと。こうして屋敷に帰って来た訳だけど、クロエをどうしようか。」


フーリガンから帰宅してすぐ。

後ろから紅葉に抱かれているクロエに向け、凛がそう言った。

フーリガンにいた者達はそのほとんどが汚れ、(美羽達含む)屋敷の者達が風呂の準備や説明等で忙しそうにしている。

人数が人数なので本館と別館に分かれ、事前にクリ()ーン()である程度綺麗にはしてはいるが。


「え?このまま紅葉様と一緒じゃダメなの?」


「勿論ダメじゃないよ。でもそうなると、クロエはただ守られるだけの存在になる。クロエはそれで良いの?」


「…!良く、ない。私、何も出来ないまま死ぬのはもう嫌。それに、何も出来ずにただ見るだけってのはもっと嫌。私も、紅葉様や暁様の横に立ちたい!ううん、立たなきゃいけないの!」


クロエは本来、甦るとしてもゾンビ(生ける屍)になるはずだった。

だが、紅葉が素体として利用したのはベヒーモス。

その影響により、グール(食屍鬼)やリッチを経てデミリッチとなった。


「クロエ…。」


「その気持ちをこれからも大事にしてね。」


「うん!」


「それでなんだけど。クロエ。」


「ん?」


「新しい体になった今、前の時みたく上手に動ける自信はある?」


「…ない…。」


何度も言うが、クロエの素体に使用したのはベヒーモス。

強力過ぎるが故に、少し力加減を誤っただけで簡単に相手を潰したりぼろぼろにしたり潰してしまう。

食べ物で例えた場合、生卵や()れ過ぎたトマトみたいな感覚で。


先程、クロエは奴隷商の檻から出ようとして力加減を誤り、人が出入りする部分を破壊してしまった。

その事を思い出しての苦い顔なのだろう。


凛はそこが心配になり、意識を誘導しつつクロエ自身が望む方向に話を進めていく。


「新しい体はとっても強くてね。暁と同じ位と思って大丈夫だよ。」


「そうなの、凄い!」


「うん、凄いよね。でもクロエは魔法使いになって貰おうと思うんだ。」


「魔法?」


「うん。クロエには水・風・土・光・闇・無…つまり、炎以外の全部に適性があるみたいなんだ。」


先程、クロエは凛や紅葉と手を繋ぐ形でフーリガンから屋敷に来た。

その際、凛は左手越しにクロエには6属性の適性があるのだと分かり、内心驚いていた。


彼女は既に水・光・無属性を所持。

そこに紅葉の風、土、闇が加わり、協力してくれた霊達によって全体的に底上げされた状態だ。

逆に、それだけの条件が揃いながら炎だけがないのは奇跡とも言える。




なので


「ねぇねぇ火燐。今どんな気持ち?私達の所には来て、自分だけスルーされるとかどんな気持ち?ねぇねぇ教えて火燐。」


雫がめちゃくちゃ火燐を(あお)っていた。

表情こそいつものじと目に澄まし顔。

しかし、運動がそこまで得意でないにも関わらず、実にキレの良い動きまで披露してみせる程に。


「クソうぜぇ…!雫お前、何気にウタル達ん時の事を根に持ってやがったな?」


火燐は自身の周りをちょこまかと動く雫に対し、顔の前で右拳を震わせる形で怒りを堪える。


「ちょっと何を言ってるのか分からないです。」


しかし雫はそんな彼女を他所に、しれっとそんな事を言い、顔の前で左手を振ってみせた。




現在、火燐と雫がいるのは的がある方の訓練部屋。

あれから30分位が経った頃、浴室から戻った美羽達に凛が加護を与えて欲しいと頼み、彼女達はこれを了承。

移動後、()翡翠()()、(白神から加護を貰った)()の順番でクロエに加護を与えた。


その様子を美羽と火燐が見ていた訳なのだが、それに気付いた雫がちょっかいをかけ、今に至る。


実際、ウタル達やサム達の魔法適性を調べた時、雫は完膚なきまでに火燐に敗れたのが悔しく、いつかリベンジを果たしたいと思っていた。


雫はいかにも自分は蒸し返したりしてませんよと言う雰囲気を(かも)し出しているつもりの様だが、本人や(当時の状況を知らない)紅葉とクロエを除いた全員からバレバレだった。


「嘘だろ!お前それ、絶対(ぜって)ぇー嘘だよな!!」


「火燐ちゃん、おおおお落ち着いてー!」


そう言って、火燐は雫を指差した後に雫へ掴み掛からんとし、それを翡翠が羽交(はが)い締めにする形で止める。


「心外な。嘘は言っていない。」


「それが嘘だっつってんだよ!顔にリベンジが果たせて嬉しいですって書いてあんぞ!」


火燐の言葉に、雫は「そんな馬鹿な」と呟きながら手鏡を取り出しながら確認。

顔の左、右、おでこ、そして正面を見て軽く笑い、最後は頷いて火燐の方を見る。


「…火燐。貴方疲れてるのよ。」


「うるっせぇよ。つかむしろ疲れてるのはお前の方だろ?主に頭が。」


「…心配してあげたと言うのにこの仕打ち。」


「は?そもそも、お前が煽りさえしなけりゃ━━━」


「解せぬ。」


「はぁぁぁ!?喧嘩か?オレに喧嘩売ってんだな?上等だコラ、やってやろうじゃねぇかぁぁぁぁああああ!!」


「もぉーーー!!2人共落ち着いてってばーーーーー!!」


口をへにょ、とさせる雫のぼやきに火燐は限界を迎え、更に暴れようとする。

翡翠はそんな2人を止めるのに必死で、そこに美羽と楓が加わるも一向に収まる気配はなかった。




その頃、凛、紅葉、クロエの3人は、火燐達から少し離れた場所で話をしていた。


お題はクロエの半生について。

彼女曰く、一応生まれも育ちもフーリガンらしい。

父はフーリガン内にある教会で司祭の役職に就き、母は食事処で働いていたとの事。


生まれつき体が弱く、物心ついた時からよく薬を飲んでいたそうだ。


しかしいくら薬を飲んでも一向に体は良くならず、やがて働き過ぎた影響で母が倒れ、その母を心配した父も病に(かか)ってしまった。

生活の維持が困難となり、このままでは一家全員がとの理由から、やむなく奴隷商へ売られた。


クロエは主にベッドの上で生活を送って来たから分からないが、光と水の適性は自分が元々持っていたか、父か母から受け継いだ形になるのではないかで纏まった。


「私、家の外にも出れない位体が弱くてね。そんな私が薬なしで生きていける訳がない。すぐに倒れてそのまま死んじゃったんだ…。」


クロエや両親は知らなかったのだが、実は渡された薬は本当の意味で薬ではなかった。

痛み止めや添加物を主体としており、治療を期待出来るものは一切入っていなかったからだ。


当然ながら良くなる訳がなく、ただただ痛み止め成分で誤魔化しているのみ。

それでいて2人で働いているのにギリギリの生活しか送れない程に高く、ある意味破綻するのも時間の問題だったと言える。


「そうだったんだ…。ごめんね嫌な事を聞いて。」


「ううん、良いの。今は丈夫な体も手に入ったし、これからは楽しくなりそうだってワクワクしてるんだ!お父さんお母さんも探しに行かなきゃだし!…そう言えば凛様、雫様達は何をしているの?」


「あー…あれは放っておいて良いかも。それより、(午後3時を過ぎたから)おやつにしよっか。屋敷で甘い物を用意するよ。」


「わーい♪私、消化に良い物と薬しか口にしていなかったから楽しみー!」


「ふふふ、では参りましょうか。」


「うん♪」


凛と紅葉は今の火燐達はクロエに悪い影響を与えると判断。

2人は嬉しそうにするクロエを連れ、そそくさと訓練部屋を後にするのだった。


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