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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画

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78話

ポータルを経て、サルーンの冒険者ギルド宿直室に到着した凛。

そこから解体場に向かい、少し進んだところにいたワッズの元へ。

他の職人が残された道具で解体の仕事をする(かたわ)ら、当人は同僚と思われる男性と会話中の様だった。


程なくして凛の存在に気付き、話を終える彼。

男性と別れ、既に移動を始めた凛と合流を果たす。


「おはようございます。」


「ああ、おはようさん。お前さんが来たってこたぁ、修理とやらは無事に終わったんだな。」


「はい。修理の際に強度も上げておきましたので、黒鉄級の魔物でも問題なく使えると思います。」


そう言って、凛は無限収納から大きな肉包丁っぽい形をした解体道具を取り出す。


その道具は見た目、重み共に同じ。

変わったのは柄頭部分に丸い魔石が付いた位だが、実際はまち針みたいに細長く伸ばした魔石の周りを少なめのアダマンタイト、多めのミスリルで構成された合金で覆った『魔導具』に進化。

なので手にした時にほんの少しだけ魔力を吸われる感覚はあるものの、魔石の補助効果で斬れ味が以前よりも格段に増している。


凛は変更点等を述べながら道具を差し出し、ワッズは「ご、合金…?しかもミスリルにアダマンタイトたぁ(とは)贅沢な…」と口にしつつ受け取る。

重さが変わらない点に疑問符を浮かべた後に軽く辺りを見回し、近くにあったオークで試し斬り。


ほとんど抵抗らしい抵抗は感じず、骨ごと切断。

試した部位は右足部分で、太い大腿骨だろうが関係ない…と主張せんばかりの結果を叩き出した。

(地球で言うところの)まるで紙をカッターで切断したみたいにしてスゥッと斬れ、そのあまりの鋭さにワッズ本人。

並びに覗き込んだ職人達が(こぞ)って目を()く。


それから、他の道具もワッズ達に渡し、試したり回しては驚かれるを繰り返す事5分。

ワッズ以外の職人達は子供みたいにして(はしゃ)ぐか、満面の笑顔。

いずれにせよとても楽しそうな様子で、しかもスピーディーに魔物達を解体していく。


「こりゃあ、下手すりゃ午前中に今日の予定が全て終わるかも知れねぇな。手持ちの道具が少ない分、仕事が遅れる可能性があると思ったから今まで打ち合わせてたってのに、全くの無駄になっちまったぜ…。」


ワッズの目から見て、彼らの解体に掛かる時間は以前の(およ)そ3分の1にまで減少。

非常に喜ばしい事であると同時、道具1つでこうもかわるのかとやるせない表情へならざるを得なかったとも。


凛から残りの道具の回収について声を掛けられるまでの約30秒間、彼はずっと遠い目をしていた。




ワッズを立ち直らせた凛はダイアウルフを5体とキマイラ2体を追加として置き、解体場を後にする。


去り際にワッズからゴーガンに呼ばれていた旨を伝えられ、ギルドマスター部屋に到着。

扉をノックし、中へと入る。


「やあ、よく来たね。それじゃ早速だけど、フォレストドラゴンを始めとした魔物、アダマンタートル、ミスリルの話から始めようか。これが凛君の取り分で、売却額の半分に当たる白金貨40枚と白金板6枚ね。詳細はこの紙に記載された通りだよ。」


「ありがとうございます。」


あ、白金貨の半分以上はサルーンの商業ギルドで、白金板がなかったから間に合わせなんだって。

なんて言いながら、ゴーガンは机の上に乗った白金貨と白金板が入った袋。

それと1枚の羊皮紙を手で指し示す。


凛は白金板と白金貨が入った袋を持ち上げ、「おぉ…これが100億円…」等と。

実際の重み以上の重量感を体験しつつ、無限収納へ。


「…にしても多くないですか?正直、もっとずっと低いとばかり思ってました。」


「分からなくはないけど、それだけ希少価値が高いとの表れでもあるのさ。僕としてはもっと高くても良いと思った位だ。神金級の魔物なんて、ここ数十年…いや、百年以上は出回ってないだろうから余計にね。」


「えぇ…?」


なんて言いながら、羊皮紙を手に取る凛。


上から、フォレストドラゴンの鱗や骨や牙、臓器に血液…と順番に読み進め、やがて下から2番目の箇所。

『オークキングの睾丸』と書かれている部分に目が留まり、(用途を知らないが故に)不思議に思ったを理由に尋ね、ゴーガンを困らせた。


(くだん)のオークキングの睾丸は精力剤の1つ。

目薬(15ml)前後の小瓶サイズがたまに出回る位で、数は少ない。

1滴が1回分で、約100回使用が可能。

一晩中衰えないとかで貴族に人気があり、現在ではオークキングのものが最高級品とされる。




話題は、お金に関するものから魔物解体用道具へ。


1晩預かった後に改修品をワッズへ渡し、追加で数体の魔物を置いた旨を伝達。

ゴーガンは微笑み、これからも魔物を持ち込むならポータルをそのままにして良い事。

可能ならガイウスに渡したものと同じ映像水晶を譲って欲しいと告げ、了承した凛が無限収納から映像水晶を取り出し(た風に見せ掛け、即興で作成)、机の上に置いた。


「あ。そう言えば、先程商国の方から手紙を頂いたんですよ…こちらなんですけど。」


そのついでとばかりに案内状を隣に置き、ゴーガンはそれを左手で拾い上げる。


「これは…案内状だね。差し支えなければ今すぐここで開けても良いかい?」


「あ、はい大丈夫ですよ。元々意見を仰ぐつもりでしたし。」


「分かった、それじゃ失礼して…。」


そう言って、ゴーガンは案内状の封を開け、中に入った手紙を読む。

手紙には長々とした内容が書かれていたが、要約すると3日後にヴォレスでオークションが開かれるので是非参加して欲しいとの事。

他にも、妖精族の姉妹を目玉とした愛玩奴隷や、元魔銀級冒険者等の戦闘奴隷。

珍しい魔道具や武具、素材、魔物等、沢山の商品を出品するので、可能であればそちらからも出品出来るものがあれば…とも記載されていた。


「…成程ね。オークキングは年に数体しか出回らないし、フォレストドラゴンに至っては言わずもがなだ。サルーンの商業ギルドに主要な部分を取られはしたが、流石は商国。転んでもただでは起きない、か。」


難しい表情のゴーガンが案内状を机の上に置く。

不思議そうにする凛へ説明、並行してこれからについても5分程話を行った。


因みに、文章に書かれた地名ことヴォレス。

商国商都エクバハに次ぐ大都市で、(商都と交代との形式で)1週間置きにオークションを開催。

サルーンから南西500キロ程進んだ地点に(くだん)の都市はあり、今から向かえばギリギリ間に合うのでは…との判断から案内状を渡したのではと思われる。




「それでは、今日はこの辺で失礼しますね。」


「うん、色々とありがとう。これからも宜しく頼むよ。」


「こちらこそ。」


凛は会釈し、部屋を出た。

口にこそしなかったものの、引っ越し作業がまだ途中だからだ。

すぐに戻ると伝えた以上、約束を(たが)える訳にはいかないとの思いもそこに含まれる。


彼が去ったを合図にゴーガンは下ろした左手で頬杖をつき、物憂(ものう)げな面持ちに。

凛から貰ったばかりの映像水晶を右手で撫でつつ、溜め息を零す。


「商業ギルドの人達、フォレストドラゴンの素材を王都で売るって張り切ってるけど…大丈夫なんだろうか。ガストン領(アダム家)の人達がグレッグ盗賊団に遅れを取ったのは当然知っているだろうに。」


グレッグ盗賊団と言うのは、ジェシカ達が在籍していた盗賊団の事だ。

火燐に真っ二つにされた挙げ句燃やされてしまったものの、頭であるグレッグは魔銀級の腕前を持っていた。


それと、凛の無限収納の中は時間が止まっている為に入れたままの状態を保持出来るが、普通だと時間が経つに連れて鮮度が落ちていく。

鱗や骨ならまだしも、他の部位。

特に内臓の類いは鮮度が命。

神輝金級なので劣化は遅いかもだが、なるべく早い内に捌くに越した事はない。

なので明日か、遅くとも明後日にはサルーンを出たいところではある。


「最短ルートで王都へ向かうならあそこ(・・・)を通る必要がある。どう考えても上手くいかないと思うんだよねぇ…はぁ、素材の中でも特に(内臓等の)重要な部分を押さえているし、場合によっては僕が向かわないとかなぁ…。」


更に付け加えれば、最短ルートで進んだ場合。

馬車だとサルーンから王都まで通常2週間は掛かる計算。


道中の護衛は?

グレッグ盗賊団レベルの敵を、それも複数想定しなければならないのに当てはあるのか。

資金は?

可能な限り掻き集めたそれをほぼ買い取りに費やし、残りは微々たる位では…と。

ネガティブな考えばかりが彼の頭を(よぎ)る。




「ただいまー。」


「! マスターお帰りなさー…いっ!」


凛は宿直室のポータルで屋敷の玄関に戻るや、リビングにいた美羽が玄関へダッシュ。

勢いそのままに胸へと飛び込み、驚きの様相でキャッチ。


「うわっ!美羽、一体どうし━━━」


「マスター!外に出る時は絶対に1人で行動しないで!」


目を見開いての質問を(さえぎ)られた挙げ句、何故か注意までされてしまう。


美羽は先程の件で屋敷を散策する気が失せ、雫や楓と共に凛が帰るのをリビングでずっと待っていた。

しかも雫や楓、散策を終えて合流した火燐や翡翠から声を掛けられるも、心ここにあらずと言った感じで応答がなかったり程だとか。


「…と言われてもなぁ。すぐに済む位の簡単な用事だったし、その為にわざわざ誰かを呼ぶのは悪いよ…。」


「とにかくダメ!マスターは家にいる時以外、ボク達の内の誰かと一緒にいて欲しいの!!分かった!?」


「えぇ…?」


「それとも、ボク達が一緒じゃ嫌…?」


心配そうな眼差しでうぅ…と涙を溜めながら見上げる美羽に、凛はタジタジ。


後から来た火燐にニヤニヤとした笑みを向けられ、雫には「美羽を泣かせた」と誂われる始末。

翡翠と楓からはクスクス笑われ、「昨日、変な人(アダム)が現れたでしょ?また来たら…って美羽ちゃんは気が気じゃないんだよ。単純に一緒にいたいだけかもだけど」と諭され、凛は何とも言えない表情に。(その間、美羽は凛の腹部へ顔をスリスリ)


両手を挙げ、困った笑顔で美羽に謝る凛。

これからは出来るだけ一緒にいると述べ、その言葉に美羽はパッとご機嫌に。

彼を抱き締める腕に力が入る。


おかげで凛は更に慌て出すのだが、そんな彼を申し訳ないと思いつつ、火燐達は美羽が元気になって良かったと安堵。

自ずと温かい視線になり、尚も騒ぎ続ける2人をしばらく見守っていた。




どうにか美羽を宥めた凛は、皆を連れて外に出る。


「アルファ。」


「はっ。」


そして凛が呟いたと同時、少し斜め上方向の空間に切れ目が。

テストを終え、無限収納内で待機中だったアルファが姿を見せる。


「これから僕達はしばらく作業に専念すると思う。その間、アルファは魔物の相手をお願い。」


「畏まりました。」


アルファは頭を下げた後、門の外でうろうろするフォレストウルフ達の元へ飛翔。


「それじゃ、僕達は(作物の)種を()く作業に入ろうか。」


凛が告げ、美羽達はそれぞれの言葉で返事。

或いは頷く形で応えた。


1行は北西エリアへ向かった後、凛は「始めに玉ねぎから植えよう」と無限収納から玉ねぎの種を取り出し、それらを美羽達へ。

彼女らは初めて見る種に興味津々。

揃って掌の上に乗せ、不思議そうに種を転がす等する。


種の観察は30秒を過ぎても続けられ、見兼ねた凛が軽い苦笑いで今取り出したのは玉ねぎの種だと伝え、その場に植えてみせた。

続けて玉ねぎ、それに人参やじゃがいも、サツマイモと言った根菜類の種や種芋を美羽達に渡し、全員で手分けして植える。


北西エリアを終え、次に移動した北東エリアでは大豆、キャベツ、レタス、とうもろこし、苺、メロンを、


その次の南東エリアでは林檎、桃、オレンジ、レモン、葡萄。

それにカカオを加えた、狭いながらも果樹園を、


最後の南西エリアでは、小麦や米と言った主食や、様々な料理に使えるスパイスやハーブの植え付け作業を行う。


時に転び、時に泥に(まみ)れ、時に笑う等。

そこそこの時間を費やし、やがて終えるのだった。

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